表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

149/579

第149話 乙女心と秋の空

「ちょっとお待ちになって下さいましクレハ!

何であたくしの目の前でケイガ兄様と急にイチャイチャし始めましたのっ!?

そもそも兄様は、あたくしと話していましたのよ!

其処を突然真横から!

兄様を横取りする様な真似は辞めてくださいまし!」


「イロハ、私は横取りだ何て無粋な真似をした覚えはありませんよ?

そもそも…ケイガ兄様のご厚意を無下に振ったのは貴女ではありませんか?

私はイロハの動向を確認したうえで兄様に話しかけたのですよ」


「あ、あたくしは兄様を振ってなど居ませんわ!

あれはちょっとした照れ隠しなのですわ!

あたくしが兄様の厚意を本気で断ることなどありえませんし、

本気で兄様相手に怒る等もっと有り得ませんの!

これはそう、

あたくしの複雑な乙女心が為せる、

秋の空の如き形相なのですわ!」


「そんな身も蓋もない我儘で兄様を振り回して…

あまりご迷惑をお掛けしてはいけませんよイロハ。

ケイガ兄様は私たち、姫騎士団(プリンセスナイツ)

ユウカ様、姫様たちと沢山の妹を抱える兄様です。

少なくとも姫騎士団(プリンセスナイツ)団員は、

なるべく兄様に気配りをして余りご負担を掛けない様にしなくては」


「わ、わかっておりますわよ…」


「ふふ、イロハ。

わかればよろしいです。

それではケイガ兄様…。

名残惜しいのですが私がいつまでも兄様の腕の中を独占する訳には行きません。

そろそろ下ろして頂けますか?」


「ああ、わかったよクレハ」


 俺は腰をかがめると彼女を地面に下ろした。


「ですがその前にもうちょっとだけ」


 クレハはそう言うと

 再度、俺の頬に自分の頬を擦り寄わせた。

 うあっ…またしても!?

 彼女の柔らかい頬の感触が俺の頬に伝わって…

 気持ち良ッ…。


「兄様はこうされると気持ちが良い様ですね。

ですが私如き無骨な女にこうも簡単に心揺らされる様ではいけませんよ?

これはちゃんと克服すべき案件かと思います。

ですから後日”ふたりっきり”で訓練いたしましょう兄様」


「えっ!?」


 俺はクレハからどきりとする言葉を聞いて思わず彼女の顔を見た。

 クレハは妖艶な女性の表情(かお)で微笑んで俺の側から離れていった。


 またしても俺は彼女に度肝を抜かれてしまい呆然と佇んでしまった。

 俺はついさっき迄、クレハは武人肌の女騎士さんで

 こういう色気染みた事とは無縁の女性とばかり思っていたのだ。

 だから彼女の意外な一面に俺はやられっぱなしなのである。


 …だが兄としていつまでも呆けている訳にはいかない。

 俺は気を取り直すと、イロハに自身の身体を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ