第143話 組手
「はぁはぁ…やはりシダレは足速いなあ…
いつ抜かれるかと思ってひやひやしたぞ」
俺とシダレは王城の城壁沿いを周回してランニングした。
最後の一周はスパートをかけて走り抜けた。
「ふぅ…ふぅ…ケイガ兄様、足速すぎ!
シダレがついていくのがやっとだもん!」
「そんなこと言ってもシダレは全力を出してなかったろ?
シダレが本気で走ったらどうなるか分からないよなあ…」
「これは競争じゃないんだから、
あくまでランニングだよ兄様!
…あっ、シダレ今日の朝食の当番だから先に帰るね!
それじゃまたあとでね兄様」
シダレはそう言うとあっと言う間に俺の前から駆けて行った。
やっぱり足速いよなあ。
一人残された俺はそのまま中庭へと向かう。
そこには姫騎士団の専用の稽古場がある。
そこには三人の姫騎士団の団員が俺を待っていた。
「おはようございますケイガ兄様、お待ちしておりました」
「おはよう兄様。ふふっ、あまり女を待たせるなんていけませんわよ」
「…兄様…おはようございます…」
「クレハ、イロハ、ツツジ。
みんなおはよう、
朝から俺の鍛錬に付き合ってくれてありがとうな」
「いいえ、私たちは日々鍛錬を積むことが任務です。
ですからお気になさらずに」
「むしろ兄様と稽古できるなんて…あたくし感激ですわ!」
「…兄様…昨日はモミジ、イチョウ、シダレと組手したと聞きました…。
三人とも兄様すごいって言ってました…。
ツツジも兄様の腕前…楽しみです…」
「ははは、それは三人の謙遜だよ。
俺は恥ずかしながら元の世界では身体がなまらせていたんだ。
このままでは魔族との戦いに勝つことは出来ないだろう。
だから俺は身体を一から鍛えなおす為に、みんなに鍛錬相手をお願いした。
実戦訓練は組手の稽古が一番だからな。
みんな、俺の願いを受けてくれてありがとう。
それじゃあ…よろしくお願いするぞ!」
「こちらこそよろしくお願いいたします兄様」
クレハは前に黒川達と戦った時の剣とは違う武器、槍を持っている。
いやあれは斧槍と言うべきか?
「いきますわよ兄様!」
イロハは細身剣を構える。
「…兄様…行きます…」
ツツジは前に見た時と同じ武器の剣だが、背中に隠して後ろ手に構えた。
刃が見えず剣の軌跡が予想出来ない。
なるほどこれが”暗器騎士”の構えか。
俺は精神を集中させる。
そして三人の姫騎士団員に対して戦闘の構えをとった。




