第142話 鍛え直し
「ふあぁ~よく寝たなぁ…よし朝の鍛錬を始めるか!」
俺は鳴鐘 慧河、25歳。
今から三日前、妹の優羽花と共に
この『魔力満ちる世界』に異世界召喚されて、
セカイを救うために大魔王率いる魔族と戦うことになった。
しかし俺は半年間引籠っていた為に相当身体がなまっている。
これから先の戦いに生き残る為には、
一から身体を鍛え直さないといけないのである。
俺はベッドから降りると寝巻を脱いで、
ポーラ姫に頼んで用意してもらった衣服に袖を通す。
これはこの異世界エゾン・レイギスの戦闘服である。
姫騎士団の魔鋼製鎧の様に全身を覆う鎧では無いが、
身体の重要な個所は鎧で覆われている。
その鎧部分は姫騎士団のものと同じく、
軽くてゴムの様な伸縮性を持ちながら
岩のような一撃を防ぐ堅牢さを併せ持つという、
魔法で作られた不思議な金属で出来ている。
そして戦闘服の布の部分は普通の軽い布素材に見えるが
シノブさん曰く、並の金属の鎧よりも頑丈とのことである。
異世界の技術凄い!
と言わざるを得ない。
俺は着替えを終えて顔を洗い
朝の鍛錬の準備を整えると、
自室としてあてがわれているファイズ殿下の部屋を出た。
「おはよう!
ケイガ兄様!」
出入り口の扉を開けた先の廊下には、
姫騎士団の団員のひとりであるシダレが俺を待っていてくれた。
「おはようシダレ。
それじゃあ行こうか」
「うん!
今日も良いお天気、良いランニング日和だよ!」
俺とシダレは朝の走り込みに駆け出した。
エクスラント聖王国の王城、ホウリシア城。
城壁内部の敷地はとても広大である。
俺とシダレはその城壁の内側沿いを駆け抜けていく。
「シダレ、付き合ってくれてありがとうな。
でも毎朝だと負担になったりしてないか?」
「そんなことないよ!
シダレは前から朝のランニングしていたし、
ケイガ兄様と一緒に走れてとても嬉しいよ!
それに一緒にランニングしようねって前に約束してたしね!」
「ああ、そうだったなあ」
俺が身体の鍛えなおす鍛錬のひとつとして、
走り込みの場を提供して貰えないかとポーラ姫に願い出た際に、
シダレが俺の走り込みに付き合ってくれると言ってくれたのだ。
走り込みというものはひとりでも出来る鍛錬方法ではあるが、
共に走ってくれる相方が居たほうが断然走りがいがあるので有難い限りである。
シダレは前に俺の見立てた通り、かなり足腰の強い子で
実際に姫騎士団一の脚力とのことである。
今のなまった俺に取っては良い競争相手だ。




