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第126話 王宮の天井

「はっ!?」


 俺は目を見開いた。

 視界の前に豪華なシャンデリアが飛び込んで来た。


 此処は…たしか…王宮の…一室…。

 俺にあてがわれた部屋の…天井?

 そうか…俺は…目を覚ましたのか。


 俺は手のひらを自分の目の前に広げた。

 そして握りしめる。

 それを何度か繰り返す。

 俺の意思の通りに手が動く。

 夢の世界ではこうはいかない。

 つまり此処は…現実の世界である。


「現実世界よ! 俺は帰って来た!」


 無事に元の世界に戻って来れた俺は、思わず歓喜の声を上げた。

 この異世界よりも更に不安定な世界で

 遙かに格上の敵と対峙しながらも、

 何とか生還することが出来たのである。

 少しぐらいテンションが高くなっても仕方があるまい。


 しかし…もしかすると…さっきまで俺がいた世界は…

 全て俺の夢だったということもあるのか?


 悪夢にうなされて目を覚まし、全ては夢であったことに安堵する…。

 今俺が感じている感覚はそれに酷似しているのである。


 俺は自身の手のひらを見つめながら、

 あの精神世界での出来事を思い浮かべる。


 静里菜(せりな)(まと)う巫女服の素晴らしい感触。

 静里菜の柔らかい頬の感触。

 魔界五軍将・魔精将リリンシアの魅惑的な肌の感触

 光の精霊の小さな手の感触。


 この手のひらに残る…彼女たちの感触は、

 とても夢とは思えない現実味(リアル)なものである。


 そして…

 リリンシアから台風の様に巻き起こったとてつもない圧力。

 俺の腕を締め付けて押さえ付けたリリンシアの凄まじい握力。

 リリンシアの鋼の髪から繰り出される暴風の様な攻撃の数々。


 これらの言わば”恐怖の感触”も、夢とは思えない現実味(リアル)なものであった。


 あの精神世界での出来事は、今でも俺の脳裏に鮮明に焼き付いている。

 もしあの世界の出来事が全て夢だとするならば…

 その記憶が此処まで鮮明に残るだろうか?

 夢というものは覚めた時点で、その記憶の大部分は忘れてしまうと聞く。

 俺はあの世界で起こったことを最初から最後まで覚えているのである。

 だから精神世界の出来事は、セカイは違えど現実(リアル)だったと俺は確信した。


 そういえば…

 あの精神世界で俺はかなり長い時間を過ごしていたと思うが、

 現実世界と時間の流れは同じなのだろうか?

 確か俺はポーラ姫とミリィが部屋に来る迄の間、

 ちょっとだけベッドで休んで待つつもりだった筈。

 もし時間の流れが同じなら、

 とうの昔にふたりは部屋に来ているんじゃないのか?


 俺は急ぎベッドから起き上がるべく身体全体を右横に向けた。

 だがそんな俺の視線の先には…すやすやと眠っているポーラ姫の寝顔があった。

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