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第123話 天敵

「やみのせいれい。

わたしはこのまま、にんげんをだいまおうにほろぼさせはしない。

このせかいエゾン・レイギスのちからのきんこうをとるのが

わたしたち、せいれいのしめい。

わたしはにんげんにちからぞえをして

まぞくがゆうりとなっているげんじょうのバランスをとる」


「あなたがそうするならアタシもそうするだけネ。

アタシはこれまで通り、魔界五軍将・魔精将リリンシアとして魔族に(くみ)するワ。

話は平行線のまま終了って訳ネ。

光の精霊がいるんじゃケイガクンとはこれ以上遊べないし…

アタシはこれで退散しようかしらネ。

…でもその前に」


リリンシアは一瞬で俺の間近に現れた。

俺の眼には、彼女がこちらに移動してきた過程が全く見えなかった。

もしかしてこれは…『瞬間移動』だとでも言うのか?

俺は成す術も無く彼女の腕に絡み取られてしまった。


 ちょ!

 おまっ!?

 唐突に全裸で抱き付いて来ないでえええーー!!


 25歳童貞の俺の全身に、

 未だかつて感じたことが無かった異次元の感触が襲い掛かった。


「ケイガクン、けっこう楽しかったワ。

召喚仕立てで、これ程の力を持った地球人はなかなかいないわヨ。

流石は光の精霊が選んだだけのことはあるかしらネ」


「…ふん、そんなことは無いさ。

所詮俺は妹に巻き込まれて召喚されただけだよ」


 俺はリリンシアの柔肌の感触から来る

 内心の凄まじい動揺を決して顔に出さないようにしながら、

 リリンシアに対して平然とした態度で強がった言葉を返す。

 此処で強がらなければ…俺の身体を包み込む彼女の柔肌に

 意識を全て持っていかれるからである。


 うあああああーー!!

 女の子の裸って凄く柔らかいのおおーー!!

 それにね…何かね…彼女の肌から何か良い匂いがするのおおーー!


 俺はかつてない異次元の誘惑に負けない様に全力で精神を保ち続ける。


「巻き込まれて召喚ねえ…光の精霊はそういう無意味なコトはしないと思うケド?

それじゃあケイガクン、また会いましょうネ♪

ウフフ…今度はアタシも光の精霊みたいに妹にしてもらおうかしらネ♪」


 リリンシアは俺の頬に口づけをすると俺の身体からするりと抜けた。

 そして彼女の身体は空間に溶け込んで消えていった。


「くっ…最後まで…やりたい放題な女だ…」


 俺は頬に残った彼女の柔らかな唇の感触をぬぐう。

 そして自身の身体を(はた)いて、

 俺の身体に残った彼女の柔らかな肌の感触を意識から追い出す。

 一刻も早く彼女の甘い感触を忘れなければ。

 幾多の戦いを潜り抜けてきた俺の生存能力がその様に行動させたのだ。


 魔界五軍将・魔精将リリンシア。

 俺に取って彼女は色々な意味で天敵であった。

 魔族の大将格である彼女とは、

 何時の日か再びまみえる時が来るであろう。


 だが俺個人としては…

 出来ることならもう二度と対峙したくない相手である…。

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