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第120話 目線

 俺が両手から放った巨大なエネルギー波は

 リリンシアを包み込んで大爆発を起こす。

 凄まじい爆炎が巻き起こり周囲を完全に覆い隠した。


 俺が過去に幾度となく戦った(あやかし)

 彼等は人間よりも圧倒的な強者であるという自身に満ちている。

 故に人間に対しては油断が生まれる。

 時には自身に付け入る隙を与える言葉、

 即ち弱点を自ら漏らすことがあるのだ。

 その慢心から来る失言という奴である。


 リリンシアは自身を『闇の精霊』と名乗った。

 これは己が人間よりも圧倒的な強者である自信から出た真実(まこと)の言葉であろう。

 確かに人間はお前たちに比べたら弱者だ。

 力も、速度も、回復力も、その全てが比べ物にならないだろう。

 だから弱い人間である俺は、

 お前たちの傲慢さから出る失言を聞き逃しはしない。

 その言葉で得た情報から速やかに考えを巡らせて、

 お前たちを倒せる(すべ)を作り上げるのだ。


 リリンシアが闇の属性というのなら…闇を滅する属性は光である。

 ならば、地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつの気功波系最高の技『極光(きょくこう)』が正に打って付けであろう。

 そして俺が今居るこの精神世界は俺に対して有利に補正が働いている。

 リリンシアの力は大きく削がれているのだ。


 この状態で、

 『極光(きょくこう)』を真面(まとも)に喰らえば魔界五軍将といえども無事では済まないだろう…。

 俺は爆炎が収まった後に何も居なくなっている事を”期待”した。

 しかし…その期待は儚くも裏切られた。



 爆炎が収まった跡には、

 自身の髪で全身を覆って身を護っているリリンシアの姿があった。


「そんな…『極光(きょくこう)』が直撃した筈なのに…無傷なのか?」


「フフフ…そんなことはないワ。ちゃんと”効いている”わヨ」


 リリンシアの全身を覆っていた髪が全て、灰となって崩れ落ちた。


「うーん、髪の再生は無理みたいネ。

ケイガクン、女の髪を切り落とすなんて最低ヨ?

でもショートカットも悪くないかナ?

フフフ…ケイガクンはロングとショートの髪のどっちが好みなのかしらネ?」


 相も変わらず俺に対して余裕の軽口を叩くリリンシア。

 髪を失った分、その力は確実に弱まっている筈である。

 それで居て、その口振りと言う事は、

 まだまだ余裕が有るということなのだろう。

 俺はリリンシアを”目の端”で捉えながら再度、戦闘態勢を整える。


「…ちょっとケイガクン!

何か微妙にアタシから目線を外してカナ?

こんな魅惑的な女をちゃんと見ないなんて失礼じゃないノ?」


 …くっ、気付かれた!?

 大雑把に見えて案外細かい女だ…。

 俺は目線をリリンシアの真正面に戻す。



「…って見れるかあッーー!!」


 俺は一糸纏(いっしまと)わぬ全裸で堂々と立っているリリンシアに対して絶叫した。

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