第12話 護り巫女(まもりみこ)
「ちょっと消えるって…静里菜! 何言ってるのよおー!」
優羽花は俺の手と繋がっていないほうの手を伸ばして静里菜の手を掴んだ。
その目には涙が浮かんでいる。
「そんな…あたしは嫌! 嫌だよ! こんなところで静里菜が居なくなるなんて! 絶対に嫌だよおーー!」
「…あっ? 優羽花、誤解を招いた様でごめんなさい。わたしここで死んじゃうとか存在が消えるとかそういうことでは無くてですね。
この透けてる現象は、わたしの存在が元のセカイに戻されようとしているんです」
「静里菜? どういうことだ?」
「兄さん、優羽花。
もしかすると話すのは初めてかも知れませんけど、地ノ宮神社はあの地域一体を護る社。
そしてわたしは地ノ宮神社が守護する地域の護り巫女なんです。
ですからわたしには地域一帯を司る神様、地ノ宮神社の御祭神の加護があります。
今みたいに別のセカイからの力の干渉に対して、御祭神さまのご加護が働いて、わたしを元のセカイに戻そうとしている訳なんですよ」
「静里菜、あたしはあんまり頭が良くないから、あんたが何を言ってるのかよくわからなかったけど…静里菜が死なないならそれで良かったよおー」
「俺も静里菜の身には何事も無いと聞いて一安心だ」
「でもですね、このままだとわたしだけ元のセカイに帰っておふたりはこのままこの異世界に置き去りになってしまいますね…」
「静里菜、巫女の術とかでもう一度ここに俺たちを迎えに来ることは出来ないか?」
「この異世界とお二人の位置をはっきりと認識できれば、あとは元のセカイで大掛かりな巫術を行えばそれは可能だとは思います。
それでは二人ともこれを肌身離さず持っていて下さいね」
静里菜はそう言って懐から二枚の符を取り出すと俺と優羽花にそれぞれ手渡した。
「あとは…優羽花、ちょっと手を出してくださいね」
静里菜はそう言って優羽花の手に口づけをした。
「わたしの息を優羽花に吹き込んで、護り巫女の加護をかけました。どんなに危ないことがあっても一度ぐらいなら護ってくれるでしょう」
「何かすごくあたたかいのが身体に入って来たよ、凄い…。静里菜、ありがとね」
「いえいえ、今のわたしが出来るのはせいぜいこれぐらいで逆に申し訳ないぐらいです。
それでは次は兄さんにも護り巫女の加護をかけますね」
静里菜はそう言って俺の胸に抱き着くとその可憐な唇を俺の口に近付けた。
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