第11話 異世界の天地
凄まじい勢いで雲が俺の後ろに向かって飛んでいく。
いや違う。
これは俺たちが遥か上空からから地上へ向けて凄まじい速度で落下しているのだ。
「お兄いーー! これ一体どうなってるのよおーー!?」
優羽花が大声で俺に問いかける。
高空から落下しているのなら本来なら人の声など凄まじい風にかき消されてしまうだろう。
だが優羽花の元気に満ちた声は俺の耳にクリアに届いた。
そして風の音は一切聞こえない。
これは空気の流れを遮断する様な何らかの力場に俺たちが包まれているという事だろうか?
「兄さんーー!」
俺より少し低い位置で落下していた静里菜が、か細い声をあげて俺を呼びながら手を伸ばした。
俺は手足を動かし空中を泳ぐような感じで進むと妹の手を掴んだ。
「ちょっとー! お兄ー! あたしもーー!」
優羽花も俺のほうに泳いで来た。俺は空いたほうの手で妹の手を掴む。
兄妹同士、お互い手を繋いだままものすごいスピードで落下していく。
「静里菜、今起きているこの現象は一体何かわかるか?巫女のお前なら何かわかるんじゃないか?」
「兄さん、さっき夕日が赤く光った時ものすごい”力”を感じました。
そして光が収まった時、わたしたちは上空から落下していました。
あの力は、”妖”がこの世にあらわれる時に現れる力の感じに近かったと思います。
違う空間から違う空間へと渡る力…つまり空間を転移する力の類がわたしたちを遙か上空に移動させたのではないかと思います。
そしてこの様な力が自然に起こるとは考えにくいです。つまり何者かが意思を持って起こしたと現象だとわたしは思います」
「そうか…空間転移か」
「ちょっと静里菜!変な冗談言わないでよおー! お兄ー! なに素直に納得しているのよおーー!
そんな空間転移とか漫画じゃないんだからあ…ああっ!? …お兄!静里菜! 下の地面のほうを見て!」
優羽花の声に従って俺は地上を見渡す。見たことも無い形の高い山々がそびえたって、海みたいな巨大な湖が見える。
そして見渡す限りの広大な草原も見える。そしてはるか遠くに西洋の城らしきものが見える。
「ここは…少なくとも日本じゃないなあ…」
「いえ兄さん…ここはおそらく地球ですらありません。
ここはわたしたちが居たセカイとは気の質がまるで違うんです…そしてわたしたちのセカイでは感じなかった何者かの強大な”力”を感じるんです…」
静里菜は俺と繋がっていないほうの手を自身の胸に添えて蒼白した顔で震えながら言葉を述べた。
いつも平静な彼女がこんなにも動揺するとは…これは本当にマズイことになったのかも知れない。
俺はこれからどうするべきか思案しようとしたその時、優羽花がとつぜん驚きの声を上げた。
「ちょ、ちょっと静里菜! 何かあんたの身体…透けてきているわよおっ!?」
優羽花の声のままに静里菜を見てみれば、確かにその身体が全体的に透けて来て、彼女の背後の地上の景色が透けて見えた。
「静里菜!大丈夫なのか!?」
「…えっ? ああ…確かにわたしの身体、透けちゃっているみたいですね。
兄さん、優羽花、わたし…ここで消えちゃうみたいです」
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