第100話 冷却作業
「…うわあっ!?」
俺は思わず声を上げた。
…これはまずい!
めちゃめちゃポンコツなシノブさんが不意に見せた可愛さに、
俺の分身が瞑想の鎮静効果を超えて反応してしまうっ!?
俺は『地ノ宮流気士術・四の型、瞑想』で高まっていた全身の気を両足へと一気に収束させ、別の技へと転化させた。
『地ノ宮流気士術・二の型、飛燕・改』
両足に集中させた気を爆発的に噴射させることで体制の整っていない状態でも高速で飛翔してその場を離脱する緊急回避技。
俺は打ち上げ花火の如く凄まじい勢いで湯舟から脱出し、銭湯の遥か上空へ跳び上がった。
そして空中でくるりと身体を回転させて態勢を整えると洗い場へすたりと着地する。
流れる様な動作で蛇口の青い手回しを全開にして桶の中に冷水を注ぎ込む。
桶に満遍なく溜まった冷水を容赦無く股間に打ち付けた!
「うおおおおおおーー!!」
俺は再度、桶に冷水を汲み上げると股間に再び打ち付ける。
それを何度も何度も繰り返した。
鎮まれ…鎮まれ…俺の分身んんんん!!
俺は冷水に身体が震えるのも気に介することなく股間を冷やし続けた。
シノブさんは姫騎士団の団長を務める、凄い美人の女騎士。
しっかりした立ち振る舞いの女性である。
俺よりも落ち着いていると思う。
少なくとも俺と同い年…いや、多分俺より年上だと思う。
彼女も他の姫騎士団員やポーラ姫たちと同様に俺の妹になったのだが、
年上の妹とか、妹の法則そして概念すらも破壊しかねない、
妹としてイレギュラーな存在である。
そんな彼女が以前とある出来事で、俺の見通しの眼鏡を掛けた際、
俺は凄く仕事が出来そうなキャリアウーマン的な雰囲気と同時に、
凄いポンコツな雰囲気を感じていた。
そしてこの度のお風呂の様相で、俺があの時に感じたことは正しかったことが証明されたのである。
しかし、そんなポンコツ残念美人さんであったシノブさんがさっき俺に見せた、
はにかんだ姿は凄まじい破壊力であった。
心の準備無しで急にドキっとさせるのは辞めて欲しいです!
そんなことされたら25歳童貞の俺は、
地ノ宮流気士術の技を持ってしても、
耐えられないですからね!
みんな妹だから!
俺とみんなは清らかな兄と妹の関係だから!
そんなドキっとする事されると俺は勘違いして好きになっちゃうからそういうのは禁止で!
本当お願いしますからねシノブさあん!!
俺は股間の分身を冷却し続けながら心の中で叫んだ。




