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勇者の弟  作者: ドル猫
第2章『アインリッヒ大学編』
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第2章 8『病み上がり』

 魔犬病を発症し、治療してから2日が経った。解熱剤を使い、どうにか、副反応の熱を下げることが出来たが、やはり2日目の実技試験には行くことが出来なかった。

 そのため、追試がある明後日までにはどうにか体調を万全にしなくてはならない。

 今回の追試には、アスタ以外に王都へ行く途中の船で不具合が起き、王都へ到着するのが遅れた者やアスタのように体調が悪く、試験を受けられなかった者が参加するそうだ。


「熱は下がったか…」


 体温計を口から出し、昨日まで続いた高熱が治まった事に安堵する。しかし、まだ身体全体の倦怠感や頭痛は治まっておらず、身体を動かすのは少し無理があるようだ。


「とりあえず、下に行くか」


 アスタは、身体を起こし、手摺に捕まりながら階段を下りて大きなテーブルがポツンと部屋の中心の置いてある食事場へ足を運んだ。


「誰もいないか」


 食事場には誰もおらず、静かな空気だけが広い部屋を包んでいた。

 アスタは数分間、誰もいない部屋で椅子に座り、テーブルの冷たさを肌で感じていた。


 それから、何もせずにテーブルに突っ伏していると、コツコツと廊下から足音が聞こえ、そちらへ耳を傾けた。


(誰かいたっけ……)


 頭に浮かんだ疑問を解決させる為に身体を動かし、音のする方へ歩き出した。


「あ、おはようございます」


「──!アスタくん、もう体調は大丈夫ですか?」


「はい。おかげさまで」


 足音の正体はヤーフだった。彼は、昨日の昼前にアンジェに言われて、屋敷まで戻って来たのだ。


「すいません、お仕事中に呼び出してしまって」


 アスタは、急遽呼んでしまったヤーフに少し遜譲しながら謝った。


「いいんですよ。丁度、業務も終わってましたし。それと、私は、すいませんと言われるより、ありがとうと言われた方が気持ちが良いです」


「えっ、あ、ありがとうございます」


「はい。どういたしまして」


 男2人で軽い談笑をした後、まだ完全に体調が戻らないアスタは、部屋へ戻り、病人用に摩り下ろした林檎を食べた。

 その後、アスタは身体の調子を取り戻すために庭に出て、軽く散歩をし、魔力にも異常がないか確認するために初級の水属性の魔法を使って花壇の花に水やりをしながら魔力の循環を整えた。


「よし」


 魔力にも異常が無いことを確認し終えると、今度は身体の感覚を取り戻そうと持ってきた木剣を軽く振ってみるが、数回振っただけで息切れしてしまう程、体力が奪われていた。


「明後日までになんとかしないとな……」


 今、何かをしても身体に負担を掛けてしまうだけ。休む事が最優先と考え、屋敷の自室へ戻り、ベッドに入った。

 その夜、アンジェがナモナキから帰って来た。後から聞いた話だと、カールは魔犬病に罹っていた訳ではなかったらしい。ただ、出血量が多かっただけで、アンジェがナモナキに着いた頃には熱も引いていたらしい。


 そして、2日が経ち、追試の日がやってきた。


「具合は悪くないですか?」


「はい。もう平気です」


 朝食を食べ終えた後、身支度を済ませ、アインリッヒ大学へ向け、馬車を出そうとしていた。

 アスタの体調の事を考え、送迎をしてくれるそうで、ヤーフとアンジェの手厚い心遣いには頭が上がらなかった。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい。良い報告を期待してますよ」


「はい!」


 ヤーフは、これから東にある4大都市の1つ、ガハリシュへと仕事の都合で向かう。ヤーフが王都を離れるのは2週間程度だが、合格発表日にお世話になった彼に報告出来ないのは何とも言えない複雑な気持ちになった。


 そして、馬車が動き出し、アインリッヒ大学がある王都の南側へと馬が歩みを始めた。

【豆知識】

 アンジェは、フライデンのことを尊敬していますが、孫であるアスタを特にそう言う目では見ていません。なので、登場した時はフライデンの孫と言う事を考え、どのような人物かを見定めるためにアスタの事も様呼びでしたが、第二章に入ってからは、アスタを言うことを聞かない弟のような目で見始め、使用人と言う立場も相まって、くん呼びをしています。

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