第1章 1『プロローグ』
どうもドル猫です。『カラスはなぜなくの』に続き、3作目の作品です。この作品は完結までに5年は掛かると予想しており、ドル猫史上、一番の最長作となるでしょう。新しいことにも挑戦をする作品ですので、面白かったり、続きが気になったりした方は、ブックマーク登録を宜しくお願いします。作者が庭を駆け回るくらい喜びます。
薄暗い室内、巨大な玉座、立っているだけで何かしてくる訳ではない側近、小窓から差し込む一筋の日の光、明かりを灯していないシャンデリア、血に濡れた剣と鞘、破損している盾、折れた刀、仲間はいない。眼前には魔王、そして、仲間と今まで出会った人たちの思い、それを全て自分の力の糧とし、今、最終決戦へ騎士は、いや──、勇者は臨む。
「──ここで俺が、全ての因果を断ち切る!その為にここまで来た!」
勇者は折れた刀を投げ捨て、錆び切った剣を鞘から抜き、最後の闘いへ挑む。
「我、汝を屠る、魔王なり……、そして、資格を見極めし者……いざ参らん」
「──今更…訳の分からないことを言うな。いくぞ……」
「……………」
二人は動き出し、闘いが始まると同時に放った魔王の魔法と勇者の魔法が相殺される。
お互いの魔法は爆散し、部屋が煙で包まれる。勇者は息を止め、体勢を低くしながら魔王の足下まで走り込んだ。
(此処で…負ける訳にはいかない!兄さんの為にも。自分の為にも。魔王の為にも)
(おれは──俺は──)
(見なくてはいけない)
(知らなくてはいけない)
(この世界の真の姿を──)
勇者の剣が魔王の硬い肉体を斬り裂く。しかし、魔王はその巨体を動かし、勇者を押し潰さんとする。
「──っっ!!」
勇者は、間一髪でのしかかり攻撃を避け、氷属性の魔法を魔王にお見舞いする。
魔王は勇者の魔法を回避できず、足元から氷漬けになる。
部屋のど真ん中に巨大な氷塊ができた。側近が気になり、片目で確認するが、側近は動かない。どうやら、本当に手を出す気はないらしい。
「うおおおおおおおおお!!」
魔王は自力で氷を割る。だが、無理矢理動いたことであちらこちらの皮膚が剥がれて流血している。
「治癒魔法を使えないお前など、怖くない!!寧ろ哀れに思うわ!!」
勇者は、魔王のダメージが残っているうちに追撃をかますため、勢いのままに床を踵で踏み、筋力と強化魔法を合わせた跳躍力で天井付近まで飛び上がり、魔王の顔面目掛けて愛剣を突き出し、魔王の右目にその刃を差し込んだ。
右目に灼熱が走る。熱に焼かれる寸前、右目の視界に入ったのは錆びついたボロボロの名剣。もはや、あの頃の面影はなく、鋼特有の光沢も無くなっていた。
「があああああああああああああ!?」
身体の一部の喪失に魔王は声にならない声を張り上げる。
「──ごめんなさい。ごめんな……さい」
彼は何故か魔王に小声で謝った。蠅の羽音よりも小さな声で懇願した。
「もう、俺は罪と罰に塗れるしかない。それしか、方法はないんだ」
(この世界の真実、そして、俺たちを追いやったあいつらを見つけるまでは死んでも死にきれないんだ)
「うあああああああああああああああ!!!」
寂れた剣から放たれる一閃、勇者の弟『アスタ・ホーフノー』による物語の幕はここに開かれた。
プロローグ 《完》
どうもドル猫です!『カラスはなぜなくの』に続き、3作目の作品です。これからは『THE new world 〜移り変わる世界より〜』と同時進行で投稿していきます!乞うご期待!!
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