どこにでもいる付与術師の俺が、大魔王を倒す為に伝説の剣を作ってみた ~その3~
「あのぉ、くりすますってしってますかぁ?」
ミリアが手を後ろにして覗き込んでくる。
赤いミニスカートのワンピース、首元や袖口、スカートの裾の白いフワフワが暖かそうだ。
ボンッ!
「きゃっ!」
思わず見とれてしまい、付与のタイミングが遅れた為、聖剣の元素材が爆発する。
「危ないじゃないですかぁ!」
「そんなに可愛い格好で声かけてくる方が悪い。」
俺は残骸となった金属の塊を、脇に放り投げながらそう言い放つ。
「えっ?」
俺の言葉を聞いたミリアの顔が真っ赤に染まる。
「それで、くるスミスって誰なんだ?」
俺は内心しまったと思いつつ、気付かないふりをして話を振る。
「スミスさんじゃなくて「くりすます」です。古い文献を見つけたのですよ。」
そう言って古ぼけた本を見せてくる。
「文献によれば「くりすます」の夜は聖なる力が宿り奇跡が起きるって言われてるんですよ。」
ミリアがドヤ顔でそう言ってくる。
「それは本当なのか?」
本当であればその力を取り込んで聖剣が出来るかもしれない。
「どうすれば、その力が手に入るんだ?」
俺はミリアに聞いてみる。
「それがですねぇ……この文献によれば「こすぷれ」というのが必要らしいです。」
この姿がそうですよ、とミリアがくるりとターンを決める。
「あと男性は「きぐるみ」というのを着るそうです……ここに図がありますよ。」
ミリアが見せてくれた図には茶色い寝袋に頭に枝が生えたようなものが描かれていた。
◇
「これでいいのか?」
見よう見まねで作った「きぐるみ」を着てミリアに訊ねる。
「ぷぷっ……可愛いですよぉ。後はですねぇ……二人で食事をして、キラキラを見ながら、男の人は女の人にプレゼントをするって書いてあります。」
「おいっ!本当にそう書いてあるのか?」
「本当ですよぉ、ほらっ。」
そう言って文献を見せてくるが何が書いてあるかさっぱりだ。
プレゼントを渡している図があったので、あながち嘘でもなさそうだ。
「仕方がない、行くぞ。」
◇
「ほら、プレゼントだ。」
俺はミリアに途中で買ったプレゼントを渡す。
「ダメですよぉ。渡すときは『愛を囁く』って書いてありますよ。」
笑いながら言うミリア。
完全に楽しんでるな。
こうなったら……俺は彼女の耳元に口を寄せて囁く。
「ま、まぁいいんじゃないですかぁ?」
そう言うミリアの顔は真っ赤に染まっていて、何故か愛おしく思えて、気付いたら抱きしめていた。
結局、朝になっても聖剣は出来なかった……。
企画用第三弾です。
一応季節ものなので(^^;
興味があれば他の作品もお楽しみください。
第一弾 「どこにでもいる付与術師の俺が、大魔王を倒す為に伝説の剣を作ってみた」 https://ncode.syosetu.com/n4482gq/
第二弾 「どこにでもいる付与術師の俺が、大魔王を倒す為に伝説の剣を作ってみた ~その2~」
https://ncode.syosetu.com/n0003gr/
連載中 「ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~」 https://ncode.syosetu.com/n4385gn/
完結済 「いつか魔王になろう!」 https://ncode.syosetu.com/n3360gh/
※ 完結済ですが、時々SSをアップしています。その内セカンドストーリを書き出すかもしれません。