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また夏の夢を見ていた  作者: 真冬こなつ
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動き出した時間

はじめての投稿となります。

目標としてはちゃんと完結させることです!

自分自身恋愛小説が好きなので、同じような趣味を持った方にドキドキしていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

キラキラしていて、どこか儚くて......

一つ結びの髪と頼りなさそうに伸びた手足。

多分その時僕は恋をしたのだろう、忘れられないのはそういうことなんだろう。


懐かしい夢を見ていたのは、窓から差し込む日差しの熱が多分あの日に似ていたから。

就寝前にタイマーをかけたエアコン由来の冷気はすっかり生ぬるくなってしまって、枕元は自分の汗で湿っている。

この調子じゃ二度寝もできそうにない。

待ち合わせまで約五時間、別に誰も僕の思考を盗んでなんかいないのに、上気する感情を冷ますように顔を両手で拭う。上京してきて一週間ほど経過した。

髭も髪の毛も無造作に伸びたままだ。


あの子から連絡が来たのは二日前のこと

まだ生活感のない部屋でコンビニで買ってきたつまみと発泡酒を一人で楽しんでいた時だった。

「今度こっちに来るのはいつ?」

そういえば上京してきた事を言ってなかったっけ、彼女は僕より一足先に上京していた女優の卵、端役とは言えど最近ちょくちょくコマーシャル等で見かけるぐらいには仕事を貰えてるみたいだ。

一方の僕はと言えば、数えるほどしか客のいないライブハウスで歌を歌っている、所謂バンドマンだ。

数えるほどとは言えど、バンドを始めた当初より聴いてくれる人も増え、軌道に乗ってきた......気がするから上京をしたのだ。

別に聞かれてもいないのに、取り繕うように言い訳を探す、業種は違えど芸能という同じ括りで彼女に負けている気がしてメッセージを既読してから気づけば十分程経過してしまっていた。

早く返信しないと、つい最近上京してきた事を簡潔に送る。

彼女からの返信は5分も経たずに送られてきた。

「そうなんだ! なら近いうちに会おうよ」

何度目の期待だろう、一年近くご無沙汰だった感情が久しぶりに僕のところへ訪ねてきたみたいだ。

ぬるくなった発泡酒の残りを飲み干して、新しい缶のプルタブを強く手前に引いた。


久しぶりの再会は思いの外呆気なくて、寝不足の感情は気づけばどこかへ消え去っていた。

白のシャツにジーンズ、変装のためだろうか、キャップ帽に眼鏡。

かえって目立ってしまっている気もするが、するのとしないのとではまた違うのだろう。

僕だって努力はしたつもりだ、未だに慣れないワックスで髪を固め、一応髭も剃った。三十分程前、家の鏡で確認したときは自分ですら少しばかり、いやかなりかっこいいと思ったぐらいだ。

だがそんなことを知る由もない彼女は外見には一切触れず、スマートフォンに吸い込まれている。

「ここら辺に行きつけの居酒屋があるからそこにしようか」

行きつけって言ってもチェーン店だけどねと恥ずかしげに微笑む。

懐かしい表情を目の当たりにして、僕も頬が緩む。

昔と変わらない、彼女のペースだ。

置いてかれないようにと必死になるけど、どこか心地よい。

空を見上げて深呼吸をする。今日ばかりは嫌いだった空が少し好きになれた気がした。

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