ラブラブなのか?
さて。
写真撮影を終えた頃には、もう21時になっていた。
なんだかんだ言って、長いこと話し込んでいたからな。学生的にはもう帰る時間だ。
その際、須賀の野郎が
「今日もお泊まりしないのー?」
とおちょくってきた。
それも少々悩んだが、俺はいったん帰ることに決めた。
母――香苗からメールが届いていたからだ。なにやら話したいことがあるのだという。
そう言われれば帰らざるをえない。
由美との関わりも大事だが、俺を育ててくれた家族も人生の一部。今日くらいは恋愛にうつつを抜かすのではなく、家に帰りたい。
高校生らしくない判断かもしれないけどな。
けど――これが俺の決めた人生だから。
だから別れる際、由美が切なげに俺を見つめてきていた。
「ねぇ……明日も会えるんだよね?」
「ああ。明日は10時から日進駅だな」
日進駅。
大宮駅の隣に位置する駅だ。
ありがたいことに、里親について詳しく話を聞きたいと連絡があったのだ。
その人は日進駅の近辺に住んでいるようなので、その場所に待ち合わせることにしたわけである。
「うん……」
しかし由美は寂しそうな顔。
下を向いたまま裾を掴んでくるばかりである。
「由美。メールはできるから」
そう言って俺は彼女の頭に手をのせる。
考えてみりゃ、ここ最近はずっと一緒にいたからな。すぐに会えるとはいえ、寂しいもんかもしれない。
「ひゅーっ。ラブラブ!」
「おまえは殺すぞ」
「須賀っち殴るよ?」
真顔で睨みつける俺と、笑顔で殺人宣言をする由美。
「あう。ごめんなさいごめんなさい」
縮こまる須賀に、浩二がまたも「はは」と苦笑いを浮かべる。そして腕を組み、微笑ましそうに俺と由美を見つめた。
「しかしまぁ、冗談抜きでお似合いのカップルだと思うぞ? だから早くくっつけと言ったんだ」
「浩二……」
「はぁ。羨ましいくらいだよ、まったく」
そうして一瞬、切なげに脇を向く浩二。
なるほど。
三上楓のことか。
レオの件が落ち着いたら、改めて話を聞いてもいいかもしれないな。
俺は改めて由美に目を戻すと、できる限りの笑顔を浮かべてみせた。
「そういうわけだ。また明日、会おうぜ」
「うん。そうだね……!」
そうして由美も笑顔を浮かべる。
そんな彼女は――やはり太陽の輝きを放っていた。
俺も正直、別れるのが惜しいと思ってしまった。
が、ここはちゃんと我慢する。
恋愛にかまけて共依存になっちゃどうしようもないからな。
彼女の暗い未来を回避するためにも、ここは自制の仕方でも覚えておくべきだろう。
「それじゃ、また明日な」
「うん……またね」
そうして俺たちは互いの帰路につくのだった。




