二人の気遣い
本日二度目の更新です。
一度目は18時頃に更新していますので、未読の方はお気をつけください。
浩二とは結構話し込んでいたようだ。
ガラケーを開くと、もう21時。俺にとっちゃまだまだ《これから》だが、高校生には違う。良い子は寝る時間だ。
そろそろ帰らんとな。
そう思いながら土手を上がっていると、由美がかなり顔を赤らめているのが見えた。
しかも真っ直ぐに俺を見つめている。
「…………?」
なんだ?
顔に変なのついてるか?
念のため髪をまさぐるが、なんもついてない。当たり前だ。俺は寝転がってない。
じゃあ、あいつの様子はいったい……
「よ、よう。どうした」
上擦った声で訊ねる。
が、反応はない。
相変わらず頬を染めたまま、視線を落とすのみだ。ヘソのあたりで両手を組み、もじもじしている。
「ほら……由美! がんば!」
彼女の後ろで、須賀がなんか援護をおこなう。
「う……うん」
由美はまたも小さい声で呟くや、きっと俺を見て言った。
「は、ははははは話したいことがあるから今日も家に泊まってほしいことを所望しますのです」
「…………」
なんだ。
めっちゃ早口で聞き取りづらかったが。
もしかしなくても《家で泊まれ》って言ったか?
なんで改まってそんなことを……
「由美。いきなりどう――」
ポン、と。
後ろから浩二に背中を叩かれた。
(ここで断ってどうする。由美のこと、嫌いじゃないんだろ?)
そうして耳打ちしてくるので、俺はすべてを悟った。
(お、おまえら、最初から仕組んでやがったな……)
恨みがましい声を発すると、浩二は悪びれる様子もなく謝る。
(悪い悪い。こうでもしないと、良也も桜庭もくっつきそうになかったからな)
(ったくよ……!)
最初からおかしいと思ったんだよな。
大宮駅からここまではわりかし距離がある。
にも関わらず、浩二も須賀も《こっちの方角だから》と言うのだ。これが作戦だったんだろうな、たぶん。
須賀も須賀で、由美になにかしらを吹き込んだんだろう。内容まではわかりかねるが。
(……桜庭の元気を引き出せるのはおまえしかいない。同盟を組んだ者として、ここは頼みたいんだ)
(よく言うよ、まったく……)
ため息をつく俺。
なんだかんだ言って、俺たちの恋愛模様を楽しみたいだけじゃないのか。
視線を戻すと、潤んだ瞳で見上げてくる由美が確認できる。彼女なりに恥ずかしい提案をしてしまったのはわかっているようで、すがるように見つめてくる。
困った。
これじゃ断れないじゃないか。
「……わかったよ、由美」
「ほ、ほんと!?」
「ああ。邪魔じゃなければ、泊まらせてもらう」
母親に帰れないことをメールしとかないとな。
また後で色々と聞かれそうだ。
「それと、浩二と須賀にはいつかラーメン奢ってもらうからな。覚えとけよ」
「えっ、私も!?」
「なぜだっ」
オーバーリアクションをする二人。
まったくこいつらは……
まあ、仕方ない。
こうなったらヤケだ。
「さ、由美、帰ろうぜ」
「う、うん……!」
意図していなかったとはいえ、由美の家には一度泊まったことがある。さすがにここで緊張することはない。
「じゃ、由美。頑張ってねー」
「うん。頑張る……!」
女子組が不穏なやり取りを繰り広げたあと、浩二と須賀は満足そうに帰っていく。
案の定、来た道を戻ってるからな。ハメられたことは間違いない。
――はは……。やっぱりな。そんなことだと思ったよ――
――桜庭は間違いなく好きだと思うぞ。おまえのことがな――
さきほどの浩二のセリフが蘇る。
楽しまれていることには違いないが、これもたぶん、二人なりの気遣いだろう。
俺は肉食系男子とはほど遠いし、由美もきっとそうだから。
「良也……いこ?」
「ああ……そうだな」
由美に促され、俺は二度目のお泊まりに向かうのだった。
※ランキング上がれそうなのでもう一度書かせていただきます。
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