あとがき
沢山ある小説の中からこの作品を見つけてくれてありがとうございます。短い連載でしたが、無事に完結することができました。
この作品のテーマは「自分らしくあることの難しさ」です。そもそも、「自分」とは何かを主人公である「愛人」はわかっていなかったのです。どうありたいか。何をしたいか。それがわからないまま人生を終えるのは、私にとっては「不幸」なことなのです。性同一性障害を題材にしてはいますが、伝えたいことの本軸はそこです。また、愛人は性同一性障害という特質を持ちつつ、それを活かすことも隠すこともしていませんでした。
「女の子になりたい」その願いが叶えられたとき。愛人は美人に自分の身を預けて、自分から動くことを完全にやめようとします。しかし、男として生きても女として生きても、どちらにせよ「いじめ」という問題は存在するということ。それを知った愛人は、やっと己で動くことを決心します。美人は、目的もなくただいじめられていた愛人を導くために『貴方に最高の幸運を』という本から出てきたのです。やるべきことが定まること。それが、愛人にとっての「最高の幸運」であると思ったからです。
では、その本を勧めた「伏見」という女店員は何者か……そして、宗次郎おじいちゃんの言う「火の始末」に関しての言動。実は関係があるのですが、あとはご想像にお任せします。
令和元年 10月24日(木)
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