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エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
革新の日
8/50

その他のフレンドとの通話

「他のフレンドにも連絡したいんだけど、柚子ちゃんはもういいの?」

「はい、私、あまりフレンドいませんから。『雪中花』の人たちとエルさんと松ちゃんと…あとはエルさんに紹介された『緋花』の人たちくらいですもん。」

「そうか…あ、シャオさん!『東部連合』のシャオさんフレンドリストにいるよね。」

「はい、いますね。」

僕とりんさん…名前は『りんた』ていうんだけど、りんさんとずんちゃん、はれさんにシャオさんは元々『緋花』じゃなく、りんさんがギルマスのギルドに所属していた。半年ほど前、りんさんとシャオさんが喧嘩しシャオさん以外は『緋花』に、シャオさんはサーバーギルドランキング2位の『東部連合』に移ったのだ。りんさんとシャオさんはいまだに仲悪いけど、僕たちはたまに遊んでいた。シャオさんは中身が女性のドワーフの女だった。だからおっさんにはなっていないはずだ。

「シャオさんに連絡取って『東部連合』の様子聞いてくれない?あと『武燕』さんにエルが話がしたいって言ってるって伝えてくれると助かる。」

「はい、了解です。」

柚子ちゃんは了承したあと『MENU』を開く素振りを見せる。

『東部連合』の『武燕』さん。72サーバーに第2世代が何人か来るまではサーバー物理攻撃ランキングで1位だった人だ。第3世代で最もレベルが高い人だったはずだ。『東部連合』とは仲良く、出来れば『緋花』と同盟まで持っていきたい。



さて、ずんちゃんにと『MENU』を開くとまた頭の中で着信音が鳴った。『かずゆ』と表示されている。僕は受話器マークを押す。

「エル様ー。かずゆです。分かりますか?」

女性の声が聞こえた。かずゆは僕より年上の女性だ。

「分かるよ。そっちは大丈夫?」

「わー。エル様の声だー。こっちは大丈夫です。」

「何回かアプリで話したことあるじゃん。」

「そうですけど、嬉しいものなんですよ。」

「それで?るきとまりりんは?」

『るき』と『まりりん』も僕より年上の女性だ。3人とも4年前に出会ってからの付き合いになる。

「はい、一緒にいますよ。エル様に誰が連絡するかでるきとまりりんが喧嘩になったんで私がこっそり掛けたんです。」

「あー、うん、想像出来る…」

よく喧嘩してる3人だけど、年齢が近いこともあり仲良いんだ。

「今どこにいるの?」

「『クリマパレス』です。私たちのギルド『L』のギルド会館がここですから。」

「クリマパレスかぁ、遠いな…」

「ええ…」

『クリマパレス』は『チェカ』から『ラズベルト』を挟んで反対側、ラズベルトとチェカの距離の倍くらいの距離がある。

「だからラズベルトの近くにしようってるきに行ったんですよー。」

「まあ、仕方ないよ。転移が使えなくなるなんて思ってなかったんだから。」

ていうか、こんな世界に飛ばされるなんて思ってもみなかった。

「そうですよね。使えませんよね。こちらでも確認しました。」

「ラズベルトに向かって来れない?」

「もちろんです。行きますよ。私たちはエル様親衛隊ですから。」

「それ、恥ずかしいから、他の人の前では言わないでね。」

「たぶん。」

「絶対止めて。」

「エル様がそういうなら…」

「で、かずゆ、こっちに向かいながらこの世界の情報を集めてほしい。」

「はい、了解です。おばちゃんパワーでそういうの得意です。」

「それから、戦闘訓練しておくように。」

「はい、自分の身は自分で守ります。そうじゃないと親衛隊は勤まりませんから。」

「あー、うん、そうだね。」

この3人の親衛隊に対する意気込みはすごい。僕の何がそんなにいいんだか。

「あとな、ベルゼブブが来てる。」

「えええー、あのサイコパスのベルゼですかー。」

かずゆたちも『AAA』に所属していたのでベルゼブブのことを知っている。

「そう、それ。相変わらずサイコパスだったよ。あいつに会ったら逃げに徹するんだ。お前たちでもあいつ相手はヤバい。」

「了解です。そのうちエル様がなんとかしてくれるんですよね?『AAA』でもあいつコントロール出来るのエル様だけでしたもんね。」

「僕にも出来てたかなぁ。まあ、もう会いたくないけど、なんとかしなきゃだと思うよ。」

「お願いしますね。」

「じゃあ、気をつけて。」

「はい、エル様も。」

かずゆとの通話を終えた。



続けてずんちゃんに連絡を入れる。

「はーい、もしもしー。」

ずんちゃんの声だ。

「エルだよ。分かる?」

「分かる分かる。声、リアルと変わらないね。」

「ずんちゃんも。」

僕とずんちゃんは電話だけじゃなく、リアルで会ったことがある。たまたま家が近くだったのだ。お昼を一緒に食べただけだけれども。黒髪ロングの綺麗な女性だった。

「ずんちゃん、チェカにいるんだってね。」

「うん、そうなんだよ。ねむさんから聞いた?」

「うん。」

「チェカすごいんだよ。地球にキトって街あったじゃん。行ったことないけど、こんな感じかなーって。高山都市っていうのかな。」

「あー、そういえばチェカに行く道って山道だった気がする。ゲームじゃ分かりづらいけど。」

「そうなんだよ。だからさ、折角だからちょっと観光して行くね。」

「いいですね。」

「いいでしょ。」

ずんちゃんはこっちの世界に来ても楽しそうだ。楽しもうとしているのかな?

「『CRAY』と『祭り』には気をつけてね。」

「『CRAY』は分かるけど、『祭り』も?『祭り』には何人かフレンドいるよ?」

「ずんちゃんのフレンドさんは大丈夫かもだけど一応ね。」

「エルさんがそういうなら気をつけるね。」

「うん。あと、ずんちゃん、ベルゼブブって知ってる?」

「ベルゼブブ?んー?あ、知ってる、知ってる。強い人だ。」

「そう、そいつもこっちに来てる。」

「まじか、ヤバい人?『CRAY』みたいな?」

「『CRAY』みたいに無差別殺人しそうかって言われたら違うけど、頭のおかしさは『CRAY』以上だと思う。」

「まじかー。気をつける。」

ベルゼブブのヤバさが伝わったようだ。

「ねね、エルさん。」

「ん?何?」

「スキルってさ、どうやって使う?」

「えっと、効果を頭で思い描いてスキル名を言うで出来ると思うよ。」

「だよねー。スキル名言わなきゃだよねー。」

「ずんちゃん、もしかしてスキル名覚えてないとか?」

「んー、そうなんだよ。ヒールとエリアヒーリングだけは覚えてるんだけどさ。」

「んー、僕もさすがにエルフエルダーのスキルは覚えてないですね。」

「あー、やっぱり?」

「レストレーションとかフォローディフェンスとかパワーブーストとかホーリーランスとかしか分かりませんよ。」

「!?分かってるじゃん。さすがエルさん。えっと何だっけ?もう1回もう1回!」

「じゃあ、言うよ。」

「うん、お願い。」

僕とずんちゃんはしばしの間、エルダーのスキルについて話し合ったのであった。



「それで?ロッドでの戦闘用のスキルはいいんですか?」

「ああ、それね。近接戦闘スキルはスキル名言わなくても発動するっぽいんだ。松ちゃんと試してみた。」

「そうなんですか…」

じゃあ、なんでベルゼブブはあのとき「3連斬」って言ったのだろうか?わざとか?わざとだな。くそっ。完全に手加減されてたわけだ。

「やっぱりずんちゃんは撲殺天使スタイルでいくの?」

「うん、そうだね。」

魔法職は杖かロッドしか武器がないんだけれど、ロッドを持つ人は少ない。魔法の攻撃力も命中率も杖の方が高いからだ。ロッドの利点、それは殴るなどの近接戦闘のスキルが使えるようになるのだ。ただそんなことする人は少ない。ずんちゃんは自分の回復力を生かしてロッドで近接戦闘するスタイルなのだ。ついたアダ名が『撲殺天使』。うん、ぴったりだと思う。

「わたし早くエルさんに会いたい。」

「僕もだよ。」

「ラズベルトで待っててね。」

「うん、待ってる。」

ずんちゃんとの通話を終えたのであった。



柚子ちゃんがまたジト目で僕を見ていた。

「ん?何?今回は変なこと言ってないと思うけど?」

「今の通話、ずんさんですよね?」

「うん、そうだよ?」

「いや、相変わらずエルさんとずんさん、仲いいなって思って…」

「うん、仲いいよ?」

「ずんさんのこと好きなんですか?」

柚子ちゃんが上目遣いで聞いてくる。ここははっきり言っておかないとな。

「柚子ちゃん!」

「は、はい!」

「あのね、ずんちゃんと僕では人間としての格が違うんだ。」

「ん?あれ?」

「ずんちゃんのことは好きとかそんなんじゃないよ。」

「そ、そうなんですか!」

「そう、尊敬している。いや、信仰していると言ってもいい。」

「ん?あれれ?」

「僕は初めてずんちゃんと『エネレボ』の中で会話したとき、自然とリアルで頭を垂れていたよ。」

「げ、まじですか…」

「ずっとずん様って呼んでいたし、敬語だった。ずんちゃんに散々指摘されて1年でやっと普通に話せるようになったんだ。今でも油断したら出ちゃうよ。」

「あ、それは見たことあります。」

「だから好きとかそんなんじゃないんだ。」

「で、でも大切な人なんですよね?」

「ああ、もちろん。」

「じゃあ、やっぱり好きなんじゃ…」

「ずんちゃんと僕の命の価値が同じなわけないんだ。だから大切なんだよ。」

「んんん?あれ?これ、好きとかよりヤバいんじゃ…」

分かって貰えたようで何よりだ。



「それで?シャオさんはどうだった?」

「はい、元気そうでしたよ。『ノースポート』の街にいるみたいです。」

「ノースポートか。『東部連合』の拠点だもんな。」

「はい。今は各地に散ってるギルメンを集合させているみたいでした。」

「うん。無難な動きだね。」

「だから、武燕さんには落ち着いてから話してくれるそうです。」

「そうか。柚子ちゃんありがとう。助かった。」

「いえいえ、お安いご用です。」

「じゃあそろそろトーリの街に向かおうか。」

「そうですね。」

僕は『MENU』を開き馬の召喚笛を出そうとする。すると柚子ちゃんに話し掛けられた。

「エルさん、ひとつ聞いていいですか?」

「ん?何?」

「エルさんって馬以外の召喚笛持ってますよね?」

「うん、持ってるよ。」

「それ、乗せてくださいよ。馬よりそっちの方が速くないですか?馬見た感じ二人でも乗れそうでしたし…」

「う、あ、いや。」

「エルさん?」

「ん?何?」

「凄い汗ですよ?他の召喚笛って何なんですか?」

「飛竜と魔法の箒…」

「うわっ、すごいっ、でも高所恐怖症にはキツそう…」

「ね、だからごめんして。」

「私が手を握ったりしても無理ですかね?」

「それはとても素敵な提案だけれども、いろんな意味で心の準備が足りないかな…」

「そうですか…仕方ないですね。じゃあそのうちどっちか貸してください。」

「あ、そうか、ここゲームじゃないからアイテムの貸し借りとか上げたりとか出来るんだ。」

「たぶん…」

「じゃあ、箒あげるよ。3つ持ってるし。」

「3つも…」

「ハロウィンイベントの報酬、毎年箒だったから。ゲームのころは転移を除いたら最速の移動手段だよ。」

僕は馬の召喚笛と魔法の箒召喚笛を取り出し、魔法の箒の方を柚子ちゃんに渡した。

「いいんですか、わーい。ありがとうございます!大切にします。」

柚子ちゃんは受け取ってアイテム欄に入れたようだ。無事上げれたみたい。ゲームでは他人とのアイテムの交換は一切出来なかった。

そのあと二人で馬を呼び出し、トーリの街へ向かったのであった。

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