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エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
王都のクーデター
45/50

クーデターの終焉

マリアと監視役にハムさんとベビさんを庭に残し、僕たちは屋内に戻り階段を降りて謁見の間に向かう。

城の広い玄関ホールに向かう廊下を走っていると、上半身裸の男たちが大勢いるのが見えた。庭での出来事が伝わっているのか、皆混乱しているようだ。

「ねむ様、降ろしてくださいませ。」

メルロア姫の言葉にねむさんがメルロア姫を廊下に立たせる。

「皆様、護衛をお願いいたします。掛かってくる者は殺しても構いませんので。」

メルロア姫はそう言ってつかつかと玄関ホールに向かって歩き出した。僕は『誓いの剣』を抜き、メルロア姫の左後ろに控える。

「わたしも。」

ずんもロッドを握り締めながらメルロア姫の右後ろに。真後ろではねむさんが弓を構える。

「スティファニア王国第1王女メルロア=スティファニアの名において命じます。皆のもの、武器を捨てなさい。庭での出来事はもう聞き及んでいるでしょう。戦いはもう終わりです。さあ、武器を捨てなさい。」

メルロア姫の呼び掛けに半分くらいは武器を捨てたが…

「姫様に巨乳エルフだぜ。」

「うわ、やりてえ。」

「たった4人で何ができるってんだ。」

「そうだ、ドラゴンは城の中までは入って来れない。」

「犯せ犯せ犯せ。」

そんな言葉に武器を捨てた者までまた拾い直す始末。はぁー、腐ってやがる。ちなみに4人じゃなく、だいぶ後ろに王を背負ったてっちゃんとミヨさんもいるのだが。

僕はアイスバレットを10個展開する。

「いけ!」

「犯せ!」

そんな声と同時に男たちが襲い掛かってきた。

「アイスバレット!」

10個の氷の弾丸が10人に当たり、吹き飛んでいく。しかし、それでは収まらない。吹き飛んだ男たちを乗り越えて次々と向かってくる。

「アイスバレット!アイスバレット!アイスバレット!」

僕はアイスバレットを連発し、それでも足りないところは剣で首を飛ばす。苦しませないよう、せめてもの情けだ。

ずんはロッドで殴り殺し、ねむさんが放った矢は次々と男たちの頭に刺さっていく。

「□▽△○▽光の矢よ、敵を打て。」

遂にはメルロア姫も魔法を放ち、玄関ホールに次々と死体の山が築かれていくのであった。



玄関ホールにいた男たちの半分、100人くらいが死んだあたりで、僕たちが自分たちでは到底敵わない相手であることに気が付いたようだ。やっと動きが止まり後退る。そのときであった。

「なんだ?なんの騒ぎだ?」

一段と体の大きい上半身裸の男が玄関ホールの先にある幅の広い階段の上から姿を現した。

「グレン?グレンなのですか?」

メルロア姫には見覚えがあったようだ。

「め、メルロア様…どうしてここに?」

グレンという男はメルロア姫に聞く。

「クーデターを止めに来たのです。もしやと思いましたが、スラムの男たちを束ねていたのはグレンだったのですね。」

「ああ、そうだよ。」

「グレン。5年前の強制退役の件、こちらにも落ち度があります。ですので、命は取りません。投降しなさい。」

「メルロア様…そりゃもう出来ねえ。もう手遅れだ。」

「手遅れではありません。あなたほどの男が仕える主はマルコで良いのですか?マルコのためにその命投げ出すのですか?」

「そ、それは…」

もう完全にメルロア姫のペースだ。ある意味、僕やマリアより強いメルロア。

「今、ここで決めなさい。仕えるべきはマルコかわたくしか。投降か死か。」

「ま、また仕えさせてくださるのか?」

メルロア姫はねむさんを見る。ねむさんはうんと頷く。

「存分に仕えなさい。あなたの命が続く限り。」

メルロア姫の言葉を聞いたグレンは大粒の涙を流し出した。グレンは階段を駆け降り、メルロア姫に向かって土下座をし、額を床に擦り付ける。

「メルロア様からそのような言葉を聞ける日が来るとは…このグレン、心命を賭して姫にお仕えいたします。」

そのグレンの姿を見た男たちは一斉に武器を捨て投降したのであった。



「グレン、謁見の間は?」

「ああ、じゃなかった。はい。現在はマルコ王子とカルロス大臣と『北斗』とか言う異世界人たちだけだ。」

5年も兵士辞めてたら、急に敬語は難しいよな。メルロア姫は僕を見る。

「エル様、お願い出来ますか。このクーデターを終わらせてください。」

「了解した。ずん、ミヨさん行くよ。」

僕は二人を連れて階段を駆け上がる。

「ずん、大丈夫?」

ずんは初めて人を殺害したのだ。精神が心配だ。

「大丈夫…とは言いきれないかな。まだ、手が震えてる。」

ずんは小刻みに震える手を見せてくれる。

「無理しなくても良かったのに。」

「ううん。エルが頑張ってるのに後ろで震えてるなんて、わたしは嫌だ。エルの隣で戦うと誓ったんだから。」

油断せず、今夜はアフターケアをしっかりしよう。

「ずんさんは強いのですね。」

ミヨさんがぼそりと言った。

「ううん。わたしは強くないよ。でも、強くあろうとしてる。ただそれだけ。」

「やっぱり強いです…」

ミヨはそう言って黙り込んだのであった。



すぐに大きな扉が見えてきた。あれが謁見の間の入り口だろう。扉の前に二人のダークエルフがいる。僕たちを見付け武器を構えた。僕も剣を抜く。

「待って!待ってください。私が止めますから。」

ミヨさんはそういうが剣を鞘に収めるわけにはいかない。ずんの命が懸かっている。

「『ルーブル』、『まさる』さん、私です。ミヨです。武器を構えないで。」

「ミヨ?」

「ミヨちゃん?」

僕とずんは立ち止まる。ミヨさんは僕たちの前に立ち、二人に頭を下げる。

「みんなに話したいことがあるんです。扉を開けてください。」

ルーブルとまさると呼ばれたダークエルフ二人は武器を下ろし、顔を見合せると、うんと頷き合って扉を開けてくれたのであった。



「なんだ?何事だ?」

扉が開くと赤い絨毯の先、階段の上の玉座に座る神経質そうな少年とその横に立つ、鷲鼻の頭の良さそうな初老の男性がこちらを指差し何か喚いている。

絨毯の両側の立っていた『のほほん』のメンバーであろう転移者たちが一斉にこちらを向いた。

ミヨが戸口を潜り、謁見の間に入っていく。

「みんな、リオネルさんは死にました。私は解放されました。メルロア姫と『緋花』のねむさんは、私たちの命を助けてくれると約束してくれました。だから、みんな、武器を捨て投降してください。」

ミヨはそのまま床に座り、額を床に擦り付け土下座の体制になる。

「みんなごめんね。ごめんなさい。私がリオネルさんに捕まったばかりに辛い思いをさせてしまって。本当にごめんなさい。みんなには一生掛けて償います。だから、だから、お願い。武器を捨て、投降してください。」

静まり返る謁見の間。やがて…

「そうか、リオネルは死んだのか。」

「ミヨちゃんが無事で良かった。」

「ミヨが悪いんじゃない。オレたちも悪いんだ。」

そう言って『のほほん』全員が武器を捨て、両手を上に上げたのであった。



「こんなことが!こんな茶番があってたまるかー!」

この光景に激怒したのは、鷲鼻の男性、カルロスだ。

「何をしている!あの3人を殺せ!早く殺せ!」

カルロスはそう叫ぶが『のほほん』のメンバーは全員首を横に振って言うことを聞かない。

「なら、私が!」

剣を抜きこちらに走ってくる。すごく遅い。

「えっと、殺さない方がいいんだっけか?」

「うん、たぶん。」

僕は土下座したままのミヨさんの前に出る。ずんも付いてくる。

「じゃあ、殴って黙らすか。メルロア姫がお灸を据えろって言ってたよね?」

「そうだっけ?えっと…優しくね?」

僕は出したままだった剣を鞘に収める。

「馬鹿にしてっ。殺してやる。」

カルロスにはそれが気に入らなかったようでさらに激昂し出した。カルロスは剣をふらつきながら振り上げる。止まって見える。いや、剣の重たさで本当に止まってるな。

僕は優しく優しくと呟きながら、そっとカルロスの顔面を殴った。

「グヘラブッ!」

変な声を出しながら玉座の方に吹き飛んでいった。

僕はそのままカツカツとマルコ王子が座る玉座の方に向かって歩く。ずんも付いてくる。一応、『のほほん』たちへの警戒は忘れない。でも大丈夫そうだ。そのまま、玉座に向かう階段を登る。

「マルコ王子!」

「な、なんだ!」

僕がマルコ王子を呼ぶとマルコ王子は震える声を必死で抑えるように返してきた。

「もう終わりですよ。もうあなたの味方はいません。」

「そ、そんな…」

「このクーデターは終わりましたが、あなたの戦いは終わっていません。」

「それはどういう?」

「数日後には僕たち『緋花』はメルロア姫を連れてリルアを出ます。そのあとに存分に戦ったらよろしい。」

「な…」

「ただし、武力ではなく言葉でです。」

僕の言葉にマルコ王子は玉座に力なく項垂れたのであった。

こうして、リルアの街のクーデターは終焉を迎えたのであった。

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