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エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
王都のクーデター
40/50

街門前の争い

三人称です。

龍やんは人目を盗んで東門からの城内潜入に成功していた。東門に通じる橋の上でたむろする男たちの会話を盗み聞きしたところ、どうやらこの街で反乱が、クーデターが発生したようだと当たりをつける。

ルイスの安否が心配だ。

城内の廊下を足音を殺して走る龍やん。正門からは真っ直ぐ行けば謁見の間だったが、東門からの廊下は迷路のように入り組んでいて、龍やんは正直、どこを走っているのか分かっていなかった。

ここでミサキから通信が入る。廊下の壁に背中を付け、腰を下ろして通話に答える。

「龍?どこにいんのよ。」

「ミサキさん、それがこの街でクーデターが発生したみたいなんす。だから、ルイスさんを守らないと。」

「え?何?クーデター?」

「そう。だもんで、今は城の中にいるんす。」

「あんた、大丈夫なの?」

「今のところは。」

「今のところはって何よ。あ、なんか変な集団が来た。」

クーデターの余波がミサキの方にも行ったのだと推測する龍やん。門のところにはクスタ王子もいるので当然だ。

「大丈夫なんすか?」

「大丈夫よ、こっちは。エルさんがいるんだよ?」

「ああ、そうっすね。エルさんがいますもんね…ははは。」

エルの街壁の外での暴れっぷりを思い出して渇いた笑いがこぼれる龍やん。本当に味方で良かったと心から思う。

「通話切るわね。無茶するんじゃないわよ?」

「前向きに検討するっす。」

龍やんはミサキとの通話を終えると、想い人の綺麗な顔を思い浮かべ、うんと1度頷いてから、また廊下を走り出したのであった。



門のところに現れた約2000人の男たち。彼らは皆上半身裸で、手に持つ武器も人それぞれ。青竜刀のような剣であったり、柄の部分が木の槍であったり、棍棒であったり。共通することは皆、友好的ではなさそうな表情。

はれ、てつ、マサ、ボンレス、ベビが、ねむ、クスタ、ヨハンを守るようにさっと前に出る。街を防衛していた兵士たちは皆まだ壁の上にいた。慌てて降りてこようとする彼らをヨハンが止める。ここは防衛で疲れた兵士たちを休ませたいのと、『緋花』の対人の力を見たいという魂胆からであった。

エルは女たちの戦いを収めて、やっと門にたどり着いところで状況を把握出来ていなかった。

「これ、どういう状況?」

エルは、ずん、柚子、JUN、マリアンティーヌを連れてねむに話し掛ける。

「わしもようわからん。王子はわかりますか?」

「いや、私も何がなんだか…」

ねむがクスタに聞くが分からないようだ。そこへ、龍やんと通話を終えたミサキがやってきた。

「ねむさん、龍が言うには、クーデターが起きてるらしいよ。」

「な、何!クーデターだと!」

ミサキの言葉を聞いて驚いたのはクスタとヨハンであった。

「娘、それはどういうことだ?」

ミサキに詰め寄るクスタ。

「え?そんなこと言われてもそれ以上は分かんないよ。城の方も大変みたい…」

「何!城がだと!」

クスタの顔が真っ青になる。

「マルコとカルロスだ…やつらやりやがった…」

凹むクスタとヨハン。

「エルさん?どうする?」

ねむがエルに聞く。

「どうするって言っても人相手はなぁ…」

「わしら、人と殺し合うたことないもんなぁ…」

渋るねむとエル。

「なんじゃ、人相手に戦いとうないのか?なら、我がやってやろうか?」

マリアンティーヌが話に入ってきた。

「だれこれ?」

ねむがエルに聞く。

「ああ、マリア。マリアンティーヌですよ。」

「は?」

訳が分からないと混乱するねむをよそに二人は話をする。

「マリア、お前、その格好で戦えるのか?」

「当たり前じゃ。人間などものの数ではないわ。」

「おお、それは頼もしいな。」

「1度人を食うてみたいと思っておったのじゃ。」

「おい、それは止めとけよ。人の味を覚えたヒグマは頻繁に人を襲うようになると言う。マリアがそうなったら、僕がお前を討伐しないといけなくなる。」

「ヒグマとは何か分からぬが、それは困るの。食うのは止めておく。」

そのときであった。ずんや柚子などの美女たちが後ろから現れたことで、はれたちと睨み合っていた男たちが色めき立つ。

「うひょー。エルフの女だ。」

「うわ、やりてぇ。」

「あとでみんなで輪すか。」

下品な会話がエルの耳に届く。エルの表情はみるみる怒りに染まっていく。

「あいつら、殺します。皆殺しでいいですかね。」

エルが男たちの方に歩いて行こうとする。

「ダメダメ。エル、ダメ。柚子ちゃん、一緒に止めて。エルさんが大量虐殺しちゃう。」

「え?エルさん、ダメです。柚子はあんな言葉は耳に届きませんから。」

二人に止められ、なんとか落ち着くエル。

「もう大丈夫。ありがとう、二人とも。ちょっと試したい魔法があるんだ。あいつらは僕が無力化するよ。」

エルはそう言って前に出る。ずんと柚子はエルが落ち着いたと分かり安心しながら、エルを見送る。はれたちも、エルがなんとかしてくれそうだと道を開ける。マリアはエルに付いていくのであった。



前に出てきたエルを見て、なんだやる気かと武器を一斉に構える2000人の男たち。そんな男たちにエルは『世界樹の杖』を向ける。

「えっと、10倍くらいでいいか。試作段階だから死んでも恨むなよ?」

「何言ってんだ、あいつ。死ねっ。」

エルに向かって男たちは駆け出す。しかし、男たちがエルに到達する前にエルの魔法は完成する。

「グラビトン!」

エルがそう叫んだ瞬間、男たちはその場に倒れ地面にへばり付いた。そう、エルは彼らの上に10倍の重力を発生させたのだ。

「やるのう、主殿。この魔法は初めて見た。どうゆう原理じゃ?」

マリアが杖を構えたままのエルに話し掛ける。

「重力ってこの世界にはまだない概念なんだよな。あとで説明してやるよ。」

「おお、それは寝物語でかの?」

「違うよっ。」

「主殿、そんなことより、やつら動けぬようじゃが、まだ意識はあるぞえ?」

「うん。そうみたいだな。もっと重くしてみるか。」

エルが杖に魔力を込め出す。すると男たちは泡を吹いて気絶したのであった。



その光景を呆然と見ていたクスタとヨハンや、兵士たち。しかし、そんな場合ではなかったと行動を開始する。

「ヨハン、兵を編成しろ。すぐに城に向かうぞ。」

「はっ。」

クスタの言葉を受けて、ヨハンは兵士たちを呼び、編成を開始した。

「アース!アースはいるか!」

「はいよっ。」

クスタが叫ぶと壁の上から様子を伺っていたアースが壁から飛び降りてきた。

「お前たちにも来てもらうぞ。」

「へいへい。おい、みんなっ。」

アースが呼ぶと『北斗』のメンバーが次々に壁から飛び降りてくる。

「ねむ殿、そなたらも一緒に来てくれ。」

クスタはねむに言う。ねむの答えは…

「お断りや。」

「…は?」

「だから、お断りや。」

「な、何故だ。」

「わしらはこの街にきたばっかりでどっちが正しいかなんて分からん。政治に巻き込まれるのは勘弁や。」

「な、なんだと…今見たであろう。やつらの行いを。」

「あんなん、末端の仕出かしたことやろ?それにやつらが街の人らを傷付けたとかそんなこともなかった。」

「だが…」

「わしはうちの子らには人との戦いに積極的に参加してほしないねん。降りかかる火の粉は払うけどな。そやから、あんたらは正面から勝手に行ったらええ。邪魔はせえへんわ。わしらは裏から、龍やんくんを救出するさかい。」

「し、しかし、裏口は我らが居なくては分からないではないか。」

必死に説得を試みるクスタ。『緋花』の圧倒的な力を目にした彼は、その力が是非にも欲しかった。

「それは…」

ねむは言い淀む。クスタがいう通り、裏口の場所が分からない。でも知らない街のいざこざに巻き込まれるのは勘弁して欲しかった。ねむはどうした良いか悩むのであった。



その様子を壁の上から観察していた人物がいた。そう、メルロアとルイスだ。

メルロアはねむがクスタの誘いに乗ると思っていた。しかし、断ったのだ、王子であるクスタの誘いを。それにまず衝撃を受けた。そして感動した。ねむの仲間を思う気持ちに。

メルロアは気付けば、ルイスの制止を振り切り、壁の上から自分の身を投げ出していた。そして叫んだ。

「受け止めてくださいませ。」

と。

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