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エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
チェカの街解放作戦
17/50

尋問?

僕たちは喝采に包まれた広場を抜け出し、『エデン』のギルド会館を目指し歩いている。案内をするように1番先頭を松ちゃんが、その後ろを僕とずんちゃんが並んで歩き、僕たちの後ろをはれさんがロープで縛られたダークエルフ2人を引き摺って歩いている。はれさん、体は小さいけどさすがドワーフ、パワーはすごい。見た目子供に引き摺られる、大の大人2人…なんかシュールだ。



「で?さっきのスキルなんだったの?あんなスキルあったっけ?」

歩きながらずんちゃんが聞いてくる。

「あれはスキルじゃなくて魔法。」

「魔法?」

「そう、魔法。この世界には僕たちが使うスキルじゃない、魔法形態があるっぽい。」

「ぽい?」

「ああ、実際見たわけじゃないから。こっちの人が魔法使ってるところ。」

「え?じゃあ、何?あれ、完全にエルさんが考えたってこと?」

「んー。ちょっと違うかな。僕が考えたことを、柚子が成功させてくれたから、今回はそれを応用してみた。僕と柚子の合作かな。」

「柚子?柚子ちゃん?柚子ちゃんに会ったの?」

「会ったというか、転移したところが一緒だったというか…」

「そんなこと通話で言ってなかったじゃん。」

「あれ?そうだっけ?言ったつもりだった。」

「ふーん。」

あれ?ずんちゃんの声のトーンが急に低くなった。

「最近、夜は柚子ちゃんにべったりだったもんね。」

「べったり?まあ、言われてみればべったりだったかもね。」

「わたし、寂しかったもんね。」

「え?そうなの?」

「そうだよっ。」

するとはれさんがチョンチョンとずんちゃんをつつく。

「ずんちゃんずんちゃん。この人、唐変木だからさ。」

「はぁ、そうだよね。知ってた。知ってたけど…はぁ。」

あれ?僕なんか呆れられてる?



『エデン』のギルド会館が見えた。一目で分かった。ここだけ周りから浮いている。黒い2階建ての家だ。日本にもあったような、四角い家。

「ただいま。」

松ちゃんが玄関の木の扉を開ける。中は…人でごった返していた。玄関ホールはたくさんの人が慌ただしく動き回っていた。現地の人たちだ。

「お、ずん様が帰られたぞ。」

ひとりの男性が言うと人々は一斉にこちらを向き、「おかえりなさい。」「おかえりなさい。」と口々に言う。

「こ、これは?」

「ははは、なんか助けてたら、何か手伝わせって押し掛けられたんだよね。」

あー、想像つくよ。要は僕の同士たちだ。ずん教の信者だ。



「ギルマス、おかえりなさーい。」

人を掻き分けてエルフの少女がこっちにやってくる。『エデン』の唯一のギルドメンバー、『ソルト』さんだろう。ずいぶん背が低いな。はれさんとあまり変わらないぞ。こっちの僕たちの体にはかなり個人差があるようだ。

「ああ、ただいま。何か変わったことはなかった?」

「ありました。ずんさんにお客様です。」

松ちゃんの問いにソルトさんは玄関ホールの奥にある扉を指差した。もうひとつ部屋があり、そこで待ってもらっているのだろう。

「ソルト。悪いけど、もう少し待たせておいて。ちょっとこいつらを地下室に放り込んでくるよ。」

松ちゃんはそう言いながらロープで縛られながら気絶しているダークエルフ2人を親指で示した。

「あ、例の街で暴れてるダークエルフですか。すごいですね。倒せたんですか。」

「ああ、エルさんがね。」

「エルさん?」

僕は一歩踏み出す。

「ソルトさん、久しぶり。エルだよ。」

「あ、エルさんだったんですか。ゲーム中はお世話になりました。わぁ、エルフの男性ってカッコいいんですねぇ。」

「そ、そうかな。ありがとう。」

そう言うとはれさんが僕の横腹を肘でドンと小突いた。いてっ。ドワーフの力強いんだから手加減して。

「エルさん、鼻の下伸びてるよ、鼻の下。」

「え?」

僕は自分の顔を触る。どうやらにやついていたらしい。ちらりとずんちゃんを見ると笑顔が何故か怖かった。



「みんな、ちょっと通してね。」

松ちゃんが玄関ホールの奥にある2階へ上がる階段の方に歩いていくので、僕たちもあとに続く。

「地下室って?」

「まあまあ、見ててよ。」

僕の疑問に松ちゃんはそう答えた。松ちゃんは階段の裏へ行く。そして座り込み、床に指を付き何かやっている。すると「カチャリ」という音が鳴り、床の一部がスライドしたのだった。その中に現れたのは下へ向かう階段。

「よく見付けたね、松ちゃん。」

「なんか歩いてたら足音が違う部分があることに気が付いたんだ。で、いろいろやってたら、見付かったってわけ。」

「はぁー、すごいな、松ちゃんは。」

「エルさんほどじゃないよ。」

松ちゃんは階段を降り始めたので僕たちも続く。1人分しか通れない広さだ。



暫く下ると廊下になっていて両側に鉄製のドアがある。明かりは階段の上の地上からの光だけだ。松ちゃんはしゃがんで何かをやっているが暗くて見えない。すると松ちゃんの手元が明るくなった。ランプだ。ランプに火を着けていたようだ。

「左右の部屋に分けて入れよう。」

松ちゃんはそう言い、左のドアを開けた。はれさんが引き摺っていたひとりをそこに放り込んだ。続いて右の部屋。はれさんに放り込んでもらったあと、僕も一緒にその部屋に入った。部屋には窓もない。ランプを消したら完全な闇だろう。松ちゃんもランプを持って入ってくる。ずんちゃんとはれさんは部屋の外だ。

「ちょっと尋問するよ。」

僕はそう言い、アイテム欄から回復薬(小)を取り出し、ダークエルフの口に強引に流し込む。そして胸ぐらを掴み、頬をペシペシと叩く。

「おい、起きろ。おい。」

「ううううう。」

ダークエルフの目はゆっくりと開かれる。体を動かして自分が縛られていることに気が付いたようだ。

「なん、なんだここは?」

「お前は僕に負けたんだ。覚えているか?」

「ちっ、あの不意討ち野郎か。」

「戦いに不意討ちのくそもあるか。お前らも散々やってきたんだろう。」

「けっ、オレらはいいんだよ、オレらは。天下の『CRAY』様だぞ。」

僕はバンとダークエルフの頬を叩く。

「いって。」

「お前らのアジトを言え。この街で拠点にしているところがあるだろう。」

「誰が言うか、くそがっ。」

僕はまたダークエルフの頬を叩く。

「いってぇな。」

「言えよ。知っていること全部。」

「ふん、教えて欲しかったらあのエルフの女を差し出せ。」

部屋の外から顔を覗かせるずんちゃんの見てダークエルフは言った。僕は強くダークエルフの頬を叩く。するとダークエルフはぎらっとした目をずんちゃんに向けた。

「犯してやる。犯してやるか、ぐふぁっ。」

あまりに耳障りな言葉に僕はダークエルフの鳩尾に拳を叩き込んだ。ダークエルフは床に転がる。

「ずんちゃん、上に行ってて。はれさんはずんちゃんに付いて行って。」

「でも、わたしも見ているべきだと…」

「いや、見せたくないんだ。」

「こ、殺すの?」

「殺しはしないと思う。たぶん。見せたくないのはそっちじゃなくて、僕の闇の部分。」

「や、闇の部分?」

「そう。だからお願い。はれさん、頼む。」

「わかった。」

はれさんは悩むずんちゃんを引っ張って行く。やがて足音が聞こえなくなった。

「松ちゃんも行っていいよ。ランプだけ置いておいてくれと助かる。」

「あ、ああ、そうさせて貰おうかな。」

「1階に上がったらここの蓋閉めて。開け方分からないからノックしたら開けてほしい。」

「ああ、分かった。」

松ちゃんはランプを置いて去っていく。階段を上がり蓋を閉める音がした。



「さてと。」

僕はアイテム欄から剣を1本取り出す。いつも使っていた双剣ではない。ドロップ品の安いやつだ。

床に転がるダークエルフに近付き足首に向かって刃を走らせる。足の腱を切ったのだ。

「ぎゃーーーー。」

ダークエルフは痛みで叫ぶ。僕はそいつの髪の毛を掴み顔を上げさせる。

「お前は女神に剣を向け、汚い言葉を吐いた。万死に値する。生きて生まれてきたことを後悔させてやるよ。」

そして顔面を床に打ち付ける。

「わかった。話す、話すから。お前がそんなイカれた奴だなんて知らなかったんだ。」

僕はダークエルフの右手を背中で締め上げ、小指を持つと一気に捻る。ボキッと言う音が響く。

「ぎゃーーーーーーー。」

「悪いな。今の目的は話を聞くじゃなくて後悔させるってことだから。」

そのあと地下室にはダークエルフの悲鳴が響き渡ったのであった。



暗闇の中、階段の天井をコンコンとノックする。するとカチャリと音がして天井が動いた。

1階に上ると3人が待っていた。

「ど、どうだった?すごい悲鳴が聞こえたけど?」

はれさんが代表して聞いてきた。

「ああ、アジトの場所を聞き出せたよ。」

僕は1枚の紙をひらひらさせた。ここにアジトの地図を書かせたのだ。

「ここ、分かる?ずんちゃん。」

僕はその紙をずんちゃんに見せる。ずんちゃんは紙を受け取ると暫く「うんうん」言いながら見ていた。

「なんとか分かるかも。行ったことない場所だけど。」

「じゃあ、ここ強襲しよう。あ、えっと、お客さんは?」

「それどころじゃなかったから待たせてある。」

「そっか。じゃあ、話を聞いてから強襲だね。」

僕は玄関ホールにある扉に向かって歩く。

「あいつら逃げ出さないかな。松ちゃんの話では中からでも結構簡単に開くみたいだよ?」

「大丈夫でしょ。二人とも足の腱切っておいたから。」

「え?」

「ん?どうしたの?はれさん?」

「エルさんって何者?本当に日本人?」

「うん、普通の日本人だったつもりだけど?」

「ボク、エルさんには逆らわないようにするよ。」

その言葉にずんちゃんと松ちゃんも激しく顔を上下にさせるのであった。ひどい…



僕はノックをして部屋に入る。そこは玄関ホールより一回り小さな大部屋だった。入ってすぐ左側に扉のない入り口があり、その向こうはカウンターみたいになっている。入り口の中が厨房で、こっちは食堂って感じかな。

部屋の中には5人いた。部屋の真ん中にテーブルが置かれていて、そこに身なりのいい初老の男性が座っている。その後ろに全身甲冑の兵士が4人立っていた。

初老の男性は僕たちに気が付くとさっと椅子から立ち上がった。そして声を掛けてきた。

「貴女が女神ずん様ですか?」

僕はその言葉にうんうんと頷く。

「め、女神…」

「ずん様だって。」

ずんちゃんとはれさんは小声で何か話している。僕はさっとずんちゃんの前を開け、ずんちゃんに右手のひらを向ける。

「こちらが女神ずん様です。」

「ちょ、エルさん!」

すると初老の男性と兵士たちはざっと両膝を付き両手を胸の前で合わせる。

「街の噂は本当でしたか。」

「噂?」

「はい、この街に女神が降臨されていると。」

僕はうんうん頷く。やっぱり分かる人には分かるのだ。

「あわわわ、街中がエルさんみたいになってる…」

ずんちゃん、何を言ってるんだい。これが世界の真理なのだよ。

「それであなたたちは?」

「は、申し遅れました。私、チェカの領主代理を勤めさせていただいております。グラビオと申します。以後お見知りおきを。して、貴方は?」

「僕?僕は女神ずん様の唯一の騎士エルです。」

「これはこれは女神様の騎士様でございましたか。」

グラビオは、ははぁーと頭を垂れる。

「顔を上げてください、グラビオさん。僕たちは同じ女神を崇める同士じゃないですか。」

「おお、そう言っていただけると。」

「ずん様はこの街の復興をお望みです。私たちにお任せください。」

「おお、ありがたきお言葉。」

また、グラビオさんがひれ伏したので、僕はグラビオに近付き立たせ、包容を交わし合ったのであった。

その光景を3人は顔を盛大に引きつらせながら見ていたのであった。

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