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エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
チェカの街解放作戦
14/50

はれさんの癒し

僕はひとりでとぼとぼとラズベルトの街への道を歩いていた。これで良かったのかと考えながら。



そんなことを考えながら道を歩き、真っ直ぐ行ったらラズベルト、右に曲がったら『チェカ』方面の別れ道をラズベルト方面に少し歩いたときであった。悪いことっていうのは立て続けに起こるものだ。

着信音が鳴り、『MENU』が自動で開かれる。相手は『ずん』ちゃんだ。

「もしもし?エルさん?」

「ああ、エルだよ。」

「どうしたの?元気ないね?」

「いや、ちょっとね。」

僕の悩みをずんちゃんにぶちまけたかったが、何か違う気がして控えた。

「あのね、エルさん。悪い知らせ。」

ずんちゃんの一言で僕の胸がドクンと大きく打つ。なんだ?いったい何が起きたんだ?

「今朝からね、チェカの街で『CRAY』と思わしき数人が暴れ出したの。だから、当分帰れないかも…」

「『CRAY』?ずんちゃん、ダメだ、戦っちゃ。今すぐチェカを出てラズベルトに向かって。お願い。」

「エルさんの頼みでもそれは聞けないな。わたし、ここでもうたくさんの人たちと出会っちゃったもの。見捨てるなんてできない。」

ああ、ずんちゃんはこういう人だ。知り合った全ての人が友達で、その全てを守ろうとする。そして大抵守ってしまう。だから、僕の女神なのだ。

「わかった、じゃあ、僕が今からチェカに向かうよ。」

「わぁ、エルさんが来てくれるの?嬉しいな。でも、ラズベルトに行かなくて大丈夫?」

「ラズベルトにはねむさんがいるから、大丈夫だよ。ねむさんだよ?」

「うん、そうだね。ねむさんがいれば大丈夫だね。」

「だから僕が行くまで無茶しないで。」

「エルさん、わたしが無茶しないとか出来ると思う?」

「思わない。」

「ひどーい。」

そして二人でカラカラと笑った。

「でも、お願いだから命は大切にして。」

「うん、頑張る。」

「全速力で行くから。」

「うん、待ってる。」

ずんちゃんとの通話を終えると意を決して、魔法の箒召喚笛を取り出し吹いた。手の上にぽとっと箒が落ちてきた。これなら最初から箒でいいじゃんとちょっと思った。



箒に跨がり低空で飛ばす。地面スレスレだ。ゲームだとずっとこんな感じだったけど、この世界では上空まで行けそう。怖いから行かないけど。

別れ道まで戻り、チェカ方面に向かって箒を飛ばす。時速100キロくらい出てるんじゃなかろうか。箒の周りは結界か何かが張られているようで風を全く感じない。すごいな魔法の箒。



箒に股がりチェカ方面に爆走していた。1時間くらい経っただろうか。

前方から黒い馬が走ってくるのを見付けた。召喚の馬だ。乗り手が正面からだと見えない。ドワーフの女性かな?僕はそのまま箒を進める。すれ違い様、相手の顔が見えた。可愛い顔した男の子だ。男の子?どんな種族だ?だが、その顔とイメージがぴったりの人を僕は知っている。そして、僕の勘が言っている、間違いなくその人だと。



僕は箒を急停止させ、振り返る。向こうも馬を止めて振り返っていた。

「もしかしてエルさん?」

声を聞いて確信した。

「もしかしてはれさん?」

「そうだよ。あ、やっぱりエルさんはエル=グランドだったんだね。」

「やっぱりって…気付いてた?」

「うん、何となくね。」

ああ、可愛い。男だけど。くるっと丸まった天然パーマの栗色の髪にぱっちり開いた大きな目、服装は短パンにチェックのシャツを突っ込みサスペンダーで止めている。背中に盾と片手剣を背負っている。なんか狙いすぎやろって感じだ。二人で乗り物から降りて話す。

「はれさん…その姿…」

「ん?あれ?ドワーフはみんなこんなんじゃないの?」

「いや、男のドワーフはごっついおっさんだって聞いたよ。」

「ふーん。なんでだろうね?」

まあ、はれさんのイメージにピッタリだけれども。

「はれさんは遠くにいたの?転移が起きたとき。」

「いや、そうでもないよ?」

「じゃあ、どうして?」

「うん、この体を把握してた。もうばっちり。」

「おお、さすがはれさん。相変わらずストイックな。」

「もちのろん!」

ああ、はれさんに癒される。焦っていた気持ちが落ち着いて行くのを感じる。

「それで?エルさんはどこに行くの?ラズベルトは反対方向だけど?」

「ああ、それはね。」

僕はずんちゃんのことをはれさんに説明したのであった。



「そっか、じゃあ、ボクもエルさんに着いていくよ。」

「いいの?ラズベルトに行かなくて?」

「いいのいいの。ボクが『緋花』にいるのはエルさんとずんちゃんがいるからだよ。二人がいないところに行っても意味ないよ。」

ああ、はれさん。女だったら抱きしめたい。はれさんは僕が知る限りでは最高の前衛、ガーディアンだ。レベルこそ第2世代には敵わないが、動きがマニアックというか玄人好みというか…『緋花』は高レベルに前衛が少ない。でも、はれさんひとりいれば大丈夫、そんな感じの人だ。はれさんが一緒に来てくれるなら心強い。

「よし、じゃあ。」

僕はアイテム欄から魔法の箒召喚笛を2つ取り出しひとつをはれさんにわたした。

「これ、魔法の箒。」

「ああ、さっき乗ってたやつね。」

「これで行こう。」

「了解。」

「夜も走るつもりだけど、大丈夫?」

「誰に言ってるのかな?」

「はは、はれさんには愚問でした。」

「月が3つあるからね、結構明るいよ?」

「もしかして、昨晩はフィールド上で過ごしたの?」

「当たり前じゃん。」

「さすが、はれさん。さすはれ。」

「バカしてない?」

「してないしてない。滅相もない。」

二人で笑い合った。



「エルさん、ねむさんにチェカに向かうこと、まだ報告してないでしょ?」

「あ!」

「やっぱり。」

すっかり忘れてた。完全に視野が狭くなっていた。はれさんに会えてよかった。感謝だな。

僕はねむさんに連絡を入れる。ホウレンソウ大事。

「お、エルさん。」

「ねむさん、大変です。ずんちゃんのいるチェカが『CRAY』に襲われているみたいなんです。救援に向かいます。」

一気に捲し立てる。

「お、おう、エルさん、まあ、落ち着き。」

「落ち着いてます。」

「落ち着いてへんがな。で、ひとりで行くんか?」

「はれさんとたまたま会ったので二人で行きます。」

「ほう、はれさんか。二人なら安心やな。」

「はい、僕も心強いです。で、ラズベルトはどうです?」

「おう、こっちな。ミサキがやってくれよってな。」

「な、何か悪いことが?」

最近悪いことが続くので疑ってしまう。

「いや、ちゃうちゃう。いい方にや。ミサキのお陰でこっちの問題はあとは『UDON』さんくらいやわ。そっちもすぐに方付くやろ。」

「へぇ、それはスゴいですね。ねむさんじゃなくて、ミサキさんが?」

「せや、ミサキや。」

想像出来ないな。ミサキさんは元気なムードメーカーな女の子だ。ずんちゃんとミサキさんとじゅんちゃんという女の子で『緋花』のヒーラー3枚看板だ。

「まあ、この話は帰ってきてからやな。見た方が早いやろ。」

「そうですね。」

「まあ、気をつけや。エルさんとはれさんなら『CRAY』のやつらがかわいそうなくらいやけども。」

「はい、必ず無事ずんちゃんを連れ帰ります。」

「ああ、頑張って。待ってるわ。」

ねむさんとの通話を終えたのであった。



通話を終えるとはれさんが魔法の箒で飛び回っていた。わ、あんな上空まで。

「ははは、楽しいよ、エルさん。」

「ああ、楽しそうな。」

「エルさんもおいでよ。」

「いや、僕はちょっと…」

「ん?もしかして高所恐怖症?」

「どうもそうみたい。」

「あらら、それは残念。」

はれさんはぺろりと舌を出す。ああ、可愛い。男だけど。



はれさんとチェカ方面に飛ぶ。

草原にところどころ小さな森という景色が終わり、大きな河が出てきた。箒なので関係ない。河の上を飛ぶ。

「見て、エルさん。」

飛びながらはれさんが指差す方向を見るを大きな橋の真ん中が崩れていた。渡れそうにない。

「魔法の箒でよかったね。」

「そうだな。」

そのまま河を渡りきったのであった。



河を渡ると少し草原があり、右方に大きな森、左方に大きな街が見えてきた。なんの街だっけ?まあ、今は関係ないか。道は森の方に向かっている。

「『アスベットの森』だね。」

「通称アスベストの森な。」

一文字違いだもの、みんなそう呼ぶ。

「中はダンジョンだね。どうする?」

「ダンジョンは時間が掛かるから無理だ。」

「迂回すると時間が掛かるし…上を越える?」

「う…」

木の高さは20メートルかそれ以上ありそうだ。

「ずんちゃんのため、ずんちゃんのため。」

「う…」

エル!男を見せろ!

「よし、上を行こう。」

「よしきた。さすがエルさん。」

そう言ってはれさんは箒を上昇させる。僕もそれに続く。

どんどん高度が上がっていく。うう、こわ…あれ?怖くない。

「意外に行けそう。」

「それは良かった。風を感じない影響かな?」

「それか、この体の性能か。」

僕たちは100メートルほどの上空まで上がった。

「よし、行くよ。」

「おうっ。」

僕たちは森の上空を進むのであった。

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