表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エネーボ・レボリューション  作者: 春夏秋冬
幕間1
11/50

『エネーボ』大陸

ースティファニア王国ー


「何?エルフとダークエルフが街中に急に現れたとな?」

「はい、私もこの目で見ました。」

ここは、エネーボ大陸と呼ばれる大陸の中央部、緑の森と草原に囲まれた国『スティファニア王国』…であったところの首都『リルア』、その中央にある城の中の執務室。ここでスティファニアの王であるボノ=スティファニアと騎士団長が話をしている。『であったところ』というのは、10年ほど前からこのエネーボ大陸に魔物が大量発生し、凶暴化し始めた。そしてちょうど5年前、遂に街と街の間を誰も行き来出来なくなったのだ。なので今は街で独自に自治をしている。だからスティファニア王国としての体裁を保てていないのだ。魔物は不思議なことに街には近付いて来ない。なので人類は滅ぶことなくなんとか生き永らえていた。

「エルフとダークエルフは5年前から全く見なくなったと聞くが?」

「はい、私もそのように伺っております。」

「大賢者が天空城シャンベルにてハイエルフたちを使って何か儀式を行っていると聞いたが、その影響かの?」

「そうかもしれません。」

「そやつらは、力を、魔物らを駆逐する力を持っておるのか?」

「わかりません。しかし、普通に街から出たり、平然と何処かから街に入ってきたりしているようです。」

「うむ。騎士団長よ。」

「はっ。」

「そやつらに監視を付けよ。気付かれぬようにな。」

「はっ。心得ております。」

ボノは満足そうに頷くと机の上の鈴をチリンチリンと鳴らした。

「失礼します。」

メイド服を着た女性が執務室の扉を開け中に入ってきた。

「メルロアを呼べ。」

「はい。」

メイドは返事をすると執務室を出た。

数分後、コンコンと執務室の扉がノックされた。

「メルロアでございます。」

「入れ。」

ボノが言うと金髪のストレートヘアにティアラをちょこんと乗せ紫色のドレスに身を包んだ美しい少女が執務室に入ってきた。スティファニア王国の第1王女、メルロア=スティファニアだ。

「メルロアよ。」

「はい、お父様。」

「このエネーボ大陸に救世主たちが現れたかもしれん。」

「まぁ、それはそれは。やっと街の外に出られるのですね。」

「うむ。詳しい状況はまだ分からぬがの。して、メルロア、そなたにはその中の誰かと結婚して貰わねばならぬかもしれん。」

「はい。救世主の妻になる。それが私の勤めです。」

「そうか。覚悟しておいてくれ。」

「はい。」

メルロアは執務室を出る。

「良いのですか?メルロア様をどこの馬の骨とも分からぬ連中に…」

メルロアの足音が聞こえなくなるのを待って、騎士団長が話し出した。

「ああ、良いのだ。それで、このスティファニア王国が、いや、エネーボ大陸が救われるのなら…」

ボノは机に肘を付き両手を組みそこに顎を乗せる。そして窓から見える青空を見た。どうか、救世主であってくれと思いながら。



ージルバニア帝国ー


ここはエネーボ大陸の西側にある大国『ジルバニア帝国』だったところの首都『クリマパレス』、山を背にした白亜の帝宮の中の謁見の間だ。金銀財宝で彩られた立派な椅子に赤い髪に深紅のドレスを着た20代半ばの女性が座っていた。彼女の名は『エリザベート=M=ジルバニア』、ジルバニア帝国の女帝陛下だ。

エリザベートは椅子の肘おきに肩肘を付き、拳を頬に当てて「うぬぬぬぬ…」と唸っていた。これが彼女の考え事をするときのスタイルだ。

先ほど、部下からエルフとダークエルフを複数見掛けたという情報を得たのだ。エルフとダークエルフがこのクリマパレスから姿を消して久しい。世の中に何か変化があった証拠だ。

「救世主が現れたか?」

そう口に出し、フフフフと笑う。彼女は救世主が現れたときその身を捧げるため、27歳の今も純潔を守っていた。

「アレス!アレスはいるかっ。」

エリザベートが叫ぶ。

「はっ、ここに。」

椅子の後ろから現れた屈強な身体した青年がエリザベートの横へ行き、片膝を付き頭を垂れる。彼がアレス。クリマパレスで、いや、ジルバニア帝国で最強の戦士だ。魔物には全く歯が立たなかったが。

「エルフとダークエルフの話は聞いたな。」

「はっ。」

「見付けたら騎士団をけしかけてみよ。」

「はっ。しかし、良いのですか?」

「ふん。騎士団に勝てぬようでは、どのみち魔物には勝てぬわ。」

「いえ、有効的な関係を築かなくて良いのかと…」

「クリマパレスはもう限界じゃ。そんな悠長に構えている暇はないわ。そのあとは、わらわがなんとかして見せよう。わらわが純潔を捧げる相手は最強の戦士でなくては困る。」

「はっ、失礼しました。仰せのままに。」

「もう良い。下がれ。」

「はっ。」

アレスは立ち上がり、部屋を出ていく。

ことの始まりの10年前、エリザベートはまだ皇帝ではなかった。魔物討伐に向かう騎士たちを率いるアレスの背中をこの帝宮から見ていた。先の皇帝である父から、魔物討伐が成功した暁には、アレスを婿に迎えると言われていたのだ。しかし、アレスは敗走してきた。そのあと何度もアレスは騎士団を率いて魔物討伐に向かったが、残念ながら成功することはなかった。

2年前、心労が祟り、父はこの世を去った。第1継承権を持っていたエリザベートの兄は気弱であったため、皇帝になることを拒否した。だから、第2継承権のあったエリザベートが女帝になったのだ。

エリザベートは虚空を見上げ、純潔を散らす瞬間を思い描き、少し頬を赤らめたのであった。



ーデムロイ公国ー


エネーボ大陸は簡単に言うと扇の形をしている。エルたちの物語は扇の紙が貼られた部分で起きている。今回、革新の日に転移してきた異世界人は約1万人。正確には9855人が転移してきたのだが、その内の実に9852人が扇の紙が貼られた部分に転移した。残りの3人はどこに転移したのか?それはもちろん、紙のない部分である。

この国の名は『デムロイ公国』。『エネーボ・レボリューション』でいうと最初のチュートリアルや序章、魔物との戦いに慣れる場所。紙の貼られた部分とない部分の間には山脈があり、序章が終わるとプレイヤーはみんな山脈を越えて行く。もう戻ってくることはない。

デムロイ公国の魔物は強くない。10年前から魔物は増えたが、国の兵士たちでなんとか対応出来るレベルだ。だから、このデムロイ公国だけは平和な日常が流れていた。

そこに転移してきた3人の異世界人…彼らはこの国にやがて変化をもたらすのだが、また別の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ