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双帝物語  作者: 獅文
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復讐

双帝物語始まり始まり〜

その狼は深緑の波に飲まれているかのように白い身体を地面に投げ出し、顔を伏せたまま大きく透き通る声で遠吠えをした。その声に答えるかのように山彦は広がりそして静かに消えていく。仲間からの返事はなかった。


白狼は諦めたかのように顔を伏せ、目を伏せ、そして仲間達が消えてしまった原因へと思いを馳せる。



──復讐。

何も生まない仕返しの繰り返し。やられてはやり、そしてやり返される、そんなことを繰り返しているうちに気づいたらたったの1匹になってしまった。


始まりは些細なことだった。群れの子が大好物の兎を追いかけ人間の里の近くまで行ってしまった。それだけの事だった。


それまで人間とは上手くやっていた。こちらが害することは無かったし、あちらから何かやって来ることもなかった。


きっかけは悪意のないものだった。群れの子が追いかけていた兎は人間の子供のもとから逃げたしたものだったのだ。


不運にも兎が食べられるところを見てしまった人間の子供は怒り、群れの子を持っていた木の棒で殴った。そして殴られるところを子を追いかけていた母狼が見てしまったのだ。


子を目の前で亡くした母狼は怒り狂り、子供に襲いかかった。

腹を、腕を、首を噛みちぎり、その騒ぎを聞きつけた人間の大人が集まりだしても襲い続けた。逃げなかった彼女は人間の大人に殺された。



この出来事に人間の大人も、群れの若者も長老も怒った。



人間達は群れを駆除しようと武器を持ち、群れは侵略してきた人間を駆除しようとした。

怒りのままに争いを続け、怒りは怒りを産み、憎しみは憎しみを産んだ。決して終わることはなかった。


そして、もう人間も群れも最後の一匹になってしまった。


白狼も人間の最後の一人も怪我ひとつないが、もう争うつもりもない。憎しみも怒りもない。あるのは後悔だけだ。


最初に亡くなった群れの子は好奇心が旺盛で、ネズミを狩るのは下手なのに妙に兎だけ狩るのが上手な子だった。そして白狼の子供だ。


人間の子は優しい子で兎のことも我が子のように可愛がっていたという。いなくなった兎をずっと探し続けていたらしい。


白狼には楽しく愉快な家族と凛として格好のいい群れの仲間がいた。

最後の人間には可愛く優しい家族と情に厚く熱血気質な村の仲間がいた。


互いに誇れる仲間だった。口には出さなくとも、誰に言う訳でもないが誇りだった。

しかしもう仲間はいない。美しく楽しい思い出は、記憶は所詮過去のものでしかないのだ。もう新しく増えることはない。


──後悔したって、もう遅いのだ



私の創作の1番のメインです。多分。

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