春の三大会
俺は多々羅さんに一通り説明をした。
「とまあ、俺は大学校の校内選手権で優勝してモテまくり人気でまくりを目指そうと思ったんだけさ。」
荒れた部屋を一瞥して多々羅さんに向き直る。
「やってしまった以上は、今から校内選手権目指すよ。」
「本気で言ってるの?校内選手権で上位行くような奴らは化け物ばっかよ?」
「能力がな。あいつらは能力に頼りすぎている。フィジカルやメンタル部分でも弱さが見えるし。」
「で、でも…」
「あいつらは能力頼りで進化を忘れてる。圧倒的弱者である人はなぜ幾千年の中で生き残り続けたのか…」
頭を指で二、三回コツコツと叩く。
「ここで考えて戦ったからだ。俺はいわゆる恐竜時代に誕生した小さな哺乳類だよ。最初はただ狩られる身だったが今じゃ爬虫類との立場は逆転している。知恵があればそういうこともできる。」
俺の熱くなってきた演説に適当に相槌を打って彼女はある問題点に踏み込む。
「でもセコンドはどうするの?」
…忘れてた。
大会に出る人間はセコンドを付けなければならない。
何故ならば、重傷でも戦闘を続けようとする選手がいた場合第三者からの判断がないとダメだからだ。
大体セコンドは友達や彼女に頼むものなのだが…
俺は生憎そういった方は一人もおらず。
「多々羅さん。これも何かのご縁で」
「嫌よ。」
察した多々羅さんからの瞬殺返答
「俺今先ほど助けましたよね…?」
「嫌よ。」
あんまりだ。
「お願いしますよ!多々羅さん!」
「簡単にいうけどね、セコンドって申請したら特別な理由以外は外れることできないのよ!?私にはこれから花のJKライフが待ってるのに、なんであんたみたいなのと組まないといけないのよ!」
「そ、そうだ!俺が強ければいいですよね!?」
俺は一世一代の賭けに出る。
「四月の1-1オープン 2-1グランプリ 1-2オープンで優勝するよ。もしダメだったら俺は退学する。そうすればセコンドもまた探せる。勝てばそれこそ多々羅さんの望み通りの男になれる。これでいいですかね!?」
春の三大会と呼ばれる大会。
比較的レベルが低く日数も近いので
強豪はおらず
連続出場する選手はごく稀だ。
「ふーん。言った以上は後戻りできないわよ?」
「あぁ。」
「まあ、毛持ぶっ飛ばしたあんたならそのレベル大会制覇はあるかもね。強いのでないし。」
俺と多々羅さんはニヤリと笑う。
俺はやってやるぞという笑い
多々羅さんはやってみなよという笑い
そんな二人の間にあるテレビのBGMが突然変わる。
朝の校内放送だ。
〈えー、緊急のニュースです!昨年度校内選手権ベスト4に入った金剛 力 選手が4月の2-1グランプリ大会に出ることを名言しました。校内ランキングで10位内に入る選手のグランプリ出場は初となります。〉
続いてそのニュースを受けて一般生徒の感想が流れている。
俺は冷や汗を出しながら多々羅さんに話しかける。
「やっぱ優勝じゃなく、入賞ってことじゃ、、」
「嫌よ。」
ですよねーーーー。