隣の美女
「ただいまー」
誰もいないマンションの一室を開ける。
大宮学園は長野の山奥にある巨大な学園だ。
そのため、ほとんどの生徒が下宿をしている。
自室へ上がり下校途中に寄ったスーパーの袋をキッチンに置く
「着信…あり?」
固定電話の留守番を押す
「健太?母さんです。無理しないで、そろそろかえってきてもいいのよ?大宮学園を中退した子たちに向けた予備校もあるらしいの かんが」
途中で止めた。
母親の気持ちもわかる。
異能学園の付属小学校に通ってからもう11年
俺は常に最底成績を取っている。
なぜかというと大会に出ていないからだ。
大宮学園は定期的に普通の学校でいうテストがわりに異能者同士の大会を行う
俺はそれに一度も出ていないのだ。
だが、まだなんだ。
俺は大学校と呼ばれる
能力者の大学でデビューをする予定だ。
能力に頼らず。鍛え上げたこの体で。
そんなことを考えている時チャイムが鳴った。
扉を開けるとそこには金髪の少し背の低い女子が立っていた。
「こんにちわ!となりに引っ越して来た 多々羅 湯音です!よろしくね!」
ハキハキと喋りペコリとお辞儀する多々羅湯音という女の子
「あのぅ〜、神宮さんって強いお方なんですか?」
急に甘えた声で、突拍子もないことをきいてくる。
「いや全然。俺この学園で一番弱いよ。」
冗談交じりに笑顔で答える。
すると彼女は顔を豹変させ吐き捨てるように言った。
「は?話なんね。さよなら。」
そのまま隣の部屋に帰っていった。
「……」
俺はただうなだれて自室に戻るしかなかったのである。
この学園では強さが正義だ。
強ければモテるし人気者
弱けりゃ誰にも相手なんかされない。
「11年耐えて来たけど、ストレートなのはやっぱ心にくるなぁ」
ヘラヘラと俺はから笑いをした。
やっぱそろそろ大会出るべきなのかな。
俺は学校側からの大会に出るようにという催促パンフレットを広げる。
大宮学園
この学校は定期的に大会を行う
オープン グランプリ グランドスラム 校内選手権
の4つだ。
オープンはポイントがなくても出られる大会
グランプリはオープン以上の大会で1勝以上あげたものが出られる大会
グランドスラムは100ptあるものが出れる大会
校内選手権は推薦もしくは300ptあるものが出られる大会だ。
それぞれの大会で上位に入るごとptがもらえる。
大会の地位が高いほど貰えるptも多い
パンフレットにはそう書いてあった。
もちろん俺は0ptだ。
「もういいや。」
パンフレットを丸めてゴミ箱に捨てる。
買ってきたレジ袋の中身を仕分け中調味料を買い忘れたことに気づく。
「めんどくさいけど、買いに行くか」
後回しはしたくないタイプだ。
調味料を買い終え、すっかり暗くなった外を眺めながらマンションの廊下を歩く。
すると、自分の隣の部屋
多々羅さんがいた部屋の前に二人に男女がいた。
多々羅さんともう一人イケメンの男だ
{あの腕章…SCの男子か。}
大宮学園では、ptによる校内ランキングでクラス分けが定期に行われる。
scは少なくとも1000番内に入る上位勢ということだ。
俺に気づいた多々羅さんはわざとらしくその男にもたれかかり腕を回し、俺を一瞥し薄く笑う。
そのまま二人で多々羅さんの部屋に入っていった。
「チっ、別に羨ましくねぇよ。」
焼きが入った俺は、部屋に入り強炭酸のジュースを開けおやつをほうばりながらゲームをした。
隣では楽しそうな声が聞こえてくる。
俺は無言でイヤホンをつけゲームに没頭した。