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落合探偵事務所の幸福(仮)  作者: 相良部竜
10/11

師匠

久しぶりの投稿です

仁紀コンビニに行く道中、先ほどのことを思い出していた。そして猛烈に反省していた。いくら美人が寝ていたとはいえ、そこを襲うような真似をしかけたのは、自分の意志の弱さだろうとは思っているが、準は、今まで仁紀が出会ってきた中では、異色の存在であった。仁紀はこの気持ち悪いような、すがすがしいような気持ちを胸に抱え、コンビニの中へと入っていった。

・・・

事務所に戻ると、ちょうどカップ麺が出来上がった頃合いらしくインスタントのいいにおいが漂ってきた。応接間のテーブルを手早く片づけると、準をそこに呼んだ。二人で向かい合って食べるときに、仁紀は聞き込みを再開した。

「そういえば、阿知羅さんは、ストーカーにつけられているとおっしゃいましたけど、前の家に入り込んだ人物と、後の家に入り込んだ人物は、同一人物だと、思われますか?」

「はい、匂いが一緒だったんです。今度は鼻かと思われるかもしれませんが、独特のにおいで、以前どこかで嗅いだことがあるような匂いだったんです。」

「そうですか。それではもう一つ、以前にストーカーの被害にあわれたことはありますか?」

「いえ、私はありません。だからどこでどんな人が何で私のことを狙っているのかがわからなくて怖いんです。」

準が‘私は’のところが無意識に強く言ったのが少し気になったが、そこは触れないでおいた。またそこから沈黙が始まる。二人の麺をすする音だけが部屋の中で響く。なんとなく気まずいが、なにを話したらいいかわからないので、汁を吸おうとしたとき、「浅尾さんは、」と話しかけられた。

「浅尾さんは、どうしてそんなに人の話を信じることが出来るんですか?さっきも言いましたけど、普通はあんなこと信じませんよね?たとえ依頼人の話を信じることがモットーだとしても。」

「そうですね。確かに普通の人は信じないのかもしれません。でも、僕は、この探偵事務所の創設者であって、僕の師匠の落合からこう教えられたんです。『ここは、困った人が、万策尽きて訪ねてくる場所だ。そういう人たちは、自分に有利不利関係なく洗いざらい話してくれる。だから、依頼人の言うことは、こっちも絶対信じないといけないんだ。』その時は衝撃的だったけど、まぁ今では、それが当たり前になってますけどね。」

「そうだったんですか、今まで誰にも言えなくて一人で苦しんでて、もう信じてもらえなくてもいいからとにかく誰かに伝えたかったんです。浅尾さんに行ったら、とても気持ちが楽になりました。」

「今度は、僕が聞いてもいいですか?」

「えぇ、なんでも。」

「聴力が発達したとおっしゃってますけど、それって常時ですか?それだったら、生活音とかも気を付けないといけないので。」

「いえ、そうじゃなんです。集中した時だけなんですけど、仕事中に、急に周りの人の会話とかが耳に入ると、仕事にならないんですよ。だから、困ってて。」

「そうですか、じゃぁ普段は、あまり気にならないんですね。ありがとうございます。」

そういうと、仁紀は残っていたスープを飲み干した。底にたまっていた野菜は少し塩辛かった。


パソコンって快適

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