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脱力系令嬢シリーズ

悪役令嬢になった女の末路

作者: 悠子










気づいたら私は悪役令嬢と言われる立場にいた。




犯罪が他国より少なく治安がいいとされる平和な国、日本で生まれて17年。着実に大人へと階段を登っていっている最中にそれは起こった。

信号待ちしていたら暴走車が突っ込んで来た。ただそれだけ。そして私がその瞬間に人生を歩んでいくのをやめてしまっただけ。


まだ若いのにとか、未来ある若者がとか。そんなことは多分誰よりも私が一番わかってる。それなのに簡単に終わっていった運命は私に何をしてくれたんだろう。

神様は何を思って私を生み、そして私を終わらせたのだろう。


俗に言う思春期の真っ只中にいた私としての最後の思い出は普遍的なものだった。

ただ、何時もより早く家を出て、忙しい母に久しぶりに見送られた。そんな日だった。


今日はちょっといい日かも、なんて耳にイヤホンをつけて昨日プレーヤーに入れたばかりの新曲を聴こうとした。そんな日。




私という人物があの世界からいなくなったあと、家族や友達、先生たちはどうしたんだろう。私のために泣いてくれただろうか。

不器用で口があまり良くない私は親しい友人は片手で足りるほどだし、適度に勉強していたから先生に可愛がられるほど構われたわけじゃない。

両親は共働きで忙しい人で、一日でも休むことは時たまの休日しか許されないような人。



そんな大切な人たちを思い出して意識を落とした私がその最後に思ったことは、私が死んだことでも変わりない日常が進んでいくこの世界だった。






ああ、終わったんだと浮遊する意識の中誰かに引っ張られた気がした。鈍く光る方へ連れて行かれるようだった。

やめてほしい、眠らせてほしい。まだなにか私になにか用事でもあるのか、もういいじゃないか。


怠惰な私がそう思っていても進む気配に、考えることを放棄した。

出来れば次の人生は波風立たない穏やかなものでありますように。そう願って今度こそ眠りについた。








起きたら目の前にはキラキラと眩しい色合いの男の子。瞳は笑ってないのに口角は上がってる。そんなチグハグな男の子。美しい男の子。

父親だと思われる人物に婚約者だと教えられたとき、私は見たことない記憶にもないような一人の女の子の人生が押し寄せて来た。


可哀想なこ、愛を知らずに愛を求める、意地っ張りでプライドが高いこ。

そして、狂気に狂い自分を自ら破滅へ進んでいくこ。


鏡を見たわけじゃないけど、このこが私なんだと思った。確信した。



なんなんだ、本当に。神様は私が嫌いなのか。前を短い人生で終わらせたことだけでは飽き足らず今度はわたしを私自身で破滅させるようにするなんて。


目の前の男の子は私を殺す子だ。後ろにたつ両親は私を地獄に突き落とす人たちだ。




なんなんだ、本当に。私はなにか大罪でも犯していたのか。そんなに幸せを望むことすら許されないものなのか。私がなにをしたっていうんだ、わたしが、なにを。





なにを。







私が行ったことは家族との関係修復とか婚約者との仲を良好にするとか、そんなことではない。だって将来的に裏切られる可能性が少しでもある人になぜ積極的に近づいて行かなきゃ駄目なの?

そんなの勿論ごめんだわ。私は前から怠惰を具現化したような人間。そんな私にこれ以上の苦行は御免被る。フラグ回避だ!とか私はそんな事しないわ信じて!とか自分のスキルをアップさせて第二の人生を歩むのよ!とか、なにそれどこのヒロインよ。


無理無理。所詮私はそこらへんにいた女子高生よ。モブ上等。なんでそんなこと私がするの?必要なくない?


もともとのこの美しい顔に普通ではない優れた頭脳。前世の記憶があるからそこらへんの馬鹿どもとは思考回路が違う。

そもそも私はこの世界の住人ではないのだからこの国ため、とか家族のため、とか自分のため、とかそんなもの一切ないわ



そりゃあ死ぬのは嫌だけど、この身体はそもそも私のモノではないし、この子がどうなろうと知ったこっちゃないわ。こんな可哀想な人生を歩んだこの子の為に幸せになろう!とかどこの能無し?

私の世界はもう終わったの。この場所ですることなんて精々時の流れに身を任せてゆらゆらするのみ。



怠惰な人間は一番の優秀な人間だと、誰かが言っていた。省エネだから自分の能力の限度を知っているし、可能不可能の境目をきっちりしている。必要なことは楽に手短に。

それに怠惰って二つの意味があると私は思おうの。省エネで最低限の行動で終わらすタイプとそもそも面倒いから何もしないってタイプ。当然私は前者であろうとしている。後者なんてただの甘ったれ。そんなのは同じ人間って名乗ってもらいたくないわ。言い過ぎって?じゃあ自立してない大人見て反面教師にしているのは違うの?


ほうら、これが私が望んだ人生よ。穏やかで人生の波なんか一寸も立たない。最高じゃない。



だからさあ、さっさと帰っていいかしら?



「おっまえ…!!!」

「自分がなにをしたのかわかってるのか!」


知らないわ。何をしたのよ?


「ファシェルにした事は人間のすることではないぞ!!」


いやいやそもそもふぁしゃる?ってだれよ。


「で、殿下…!わたし…!」

「大丈夫だ、ファシェル!俺が守ってやる。」


ふあー、早くこの茶番おわんないかな?眠くなって来たわ。


「舐めているのか!?口も聞けぬほど馬鹿だとはな!」

いやそもそも拘束されている状態で喋れとか、もっと扱いちゃんとしなさいよ。肩書きでは私は侯爵令嬢なんだけど?そこらの人たちより立場上なんだけど?


「…てか喋るの怠い…。」

「は?」


「はいはい、私がしたと言う証拠があるならそうなんじゃないですか?別にどっちでもいいわ。そのふぁしぇる?って子がどんなこかしらないけど。むしろ興味ないし私が誰かのために何かやるとか、そもそもしなわよ。面倒い。」

「は?」


「ふあー…ねむ…今日の夜会終わったの?帰っていいの?動くのもだっるいわー。」

「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!!」


「ねむー…玄関ってこっちだっけ?」

「待ちなさいって言ってるでしょう!!」


なんかピンク女がきたんだけど…


「…だれ。なんで指図されてんの私。めんど…」

「っな!!ファシェルよ、ここのヒロイン様だっつうの!なに悪役令嬢が仕事放棄してんのよ!私の幸せのために動きなさいよ!!」

「…なんで私が他人のために・・・」


「え?」


「だいったいねえ!なんなのその態度!」

「…ちゃんとやることやったわ…、…あ、玄関みつけた。かえろ…。」

「ちょっと待ちなさいよ!!」


ピンク女走って駆け寄って来たのをサラリと横にずれることでは避ける。なにこの女、イノシシかよ。


「っファシェル!おい貴様!!」

「えー…私のせい?」


なんかさっきからうるさかった男…、そういえば前会ったことある男かなあ、わかんないわ。

とりあえず伸ばして来た手を払いのけてそのまま首元を掴んで跳ばす。おっも。


「…ぐっ!!」


前世で柔道剣道しててよかったわー。これぞ御都合主義だわ。前の私グッジョブ。



とりあえず結構身長高い割にほっそいから出した私が一般よりデカい男投げ飛ばしたことで唖然となった周りを放っておいて我が家の馬車に乗り込もうと側まで歩いた。


「っまって!」

「?」


呼び止められて振り向けばそこにはなんか見たことあるような黒髮美女。グラマーだわ。


「なに?」

「帰る前に話をしましょうよ?アシェル」

「話…だれ?」

「ちょっと!?あんたと学校でよく喋ってるでしょう!!」


てんてんてん・・・・、ああ。


「委員長か。ドレス着てるから分かんなかったわ。」

「委員長ってなに!?ベラよ、ベラ!!」


「そう。じゃあ帰るわ。」

「話あるっつってんのよ!」

「ベラあんた口悪くない?大丈夫?」


「あんただけには言われたくないわよ!」


「あ、あの…」



委員長…ベタだっけ…、あ、ベラだ紛らわしい。ベラがなんか怒ってるのを一応対面して聞いている。しかしげんきだわこの子。

すると我が家の馬車の前で運転手が戸惑ったように私を呼ぶ。


「ん?ああ、待たせたわ。」

「…ねえ、最後にいいかしら?」

「なに?」


なんか私が返事したら呆れと怪しむような瞳でこっちを向いて、そして馬車の後ろに繋がった大きな荷物を見た。


「それなに?」

「ああ…これから旅に行こうかと。もう弟成人したしいいかなって。貴族とか怠いし、自由って素敵よね。まあ本当は今日来なくてもよかったんだけど、なんか絶対参加だって招待状に書いてたしいいかなって。まあ結果来なかった方がよかったわ。」


「…なに、いつ帰るの?」

「帰らないんじゃない?所持金尽きる頃には私もしんでるでしょうし。あれよ、佳人薄命ってやつ。」

「自分で言うのそれ?…まあ、しぬまえに私の屋敷くるならおもてなしくらいしてあげるわ。」


「…なんで?」

「っだから!!!あんたのこと友達だと思ってんのよ!あんたは違うかったみたいだけどね!」

「…。」


ポカーンと口を開けてみている私に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして怒るベラ。

そんなベラに前世の友達を思い出す。


『っだから聞いてるの若菜!』

『きいてるよー…加奈さん眠い、進まない、英語マジでやりたかないわー。』

『あー、もうほら!私の家来なさい!教えてあげる!しょうがないから…と、友達だし!』

『…友達くらい普通にいえば?』

『うううううるさい!』



数少ない友達、世話焼きでツンデレなとことか結構面倒くさかったけど。



「…そうねえ、近いうちに寄るわ。その時はケーキ用意しておいて、友達様?」

「!…手紙で日にち教えなさいよね!」



まあ、しょうがないかなー。未練とか、執着とか。この国にはなにもないと思っていたけれど。友達くらいいても。結構押しに弱いし、私。




悪役令嬢になった女は世界を旅して回る自由人になる。

母国に残したのは、友達ただ一人。自分以外にはなにも関心を持たない女が見つけた唯一のニンゲン。

馬車に乗り込んだ悪役令嬢はいつものだるそうな顔に少しだけ笑みを浮かべ、離れていく見慣れた風景を横目にいれて眺めていた。





―――数年後―――

「やっほ、ベラ。この子私の息子。」

「結婚したの!?子供もいるの!?それに近いうちって言ったのに数年来ないとかなんなのよアシェル!」


















すみません、これ真剣に読むようなものではなかったですよね。

恋愛ってなんだっけ?って方。申し訳有りません。実力不足です。でもコメディって感じでは無いので…。

連載版なら「脱力系悪役令嬢は〜」みたいな感じでかきたいです笑

連載中のものが目処立ってからやってもいいし、同時進行…初心者には難しいですね←

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 連載版も開始されたみたいですし詳しく見れそうで嬉しいです(´ー`)
[良い点] 見ていて主人公のだるさが面白いと思いましたw [気になる点] 最初の私は悪役令嬢という場所にいただと場所(place)の方になってしまうと思うので立場にいたの方がいいと思います。 [一言]…
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