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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
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最終話

(う、う〜ん……ここは?)

勝太郎は目を覚ます。

視界に映ったのは白い天井だった。

「……病室か?」

そこは以前サイトーに撃たれた時に運び込まれた病室だった。

勝太郎は喋った時に、息苦しさを感じて左手を動かす。

見ると腕全体に包帯がきつく巻かれていた。

首を動かして身体を見る。

全身、包帯でグルグル巻きで、まるでミイラみたいな格好になっていた。

その左手で口を触る。

包帯は顔全体を覆っていた。

「すうーすうー」

勝太郎の左側から、健やかな寝息が聞こえてきた。

「……?」

勝太郎は相手の正体を確かめるために首を動かす。

「……ミスフォルラか?」

彼の視界に映ったのは、黒の長髪を持つハーフエルフの少女だった。

「ん、ん〜?」

名前を呼ばれて目が覚めたのか、ミスフォルラが片目をこすりながら起き上がる。

そしてしばらく勝太郎を見つめていた。

「……勝太郎? 起きたの」

「おう」

「……よかったー!」

完全に覚醒したミスフォルラはミイラ男状態の勝太郎に抱きつく。

「ぐわああああああああっ!」

激痛で彼の口から魂が出て行く。

ミスフォルラにはそう見えていた。

「きゃああああっ!大変! ごめんごめんね勝太郎。しっかりして」

ミスフォルラは両肩を掴んで揺さぶる。

しかし勝太郎は目を覚まさない。

「こういう時どうすれば……そうだナースコール!」

それにやっと気づいたミスフォルラはベッド近くにあるナースコールのボタンを押すのだった。


「まったく、死ぬとこだったぞ!」

「ごめん。つい嬉しくなっちゃって」

意識を取り戻した勝太郎に向かってミスフォルラが両手を合わせて謝罪する。

「ところであの事件からどれくらい経ったんだ?」

窓を見るとカーテンが掛けられ、今が夜ということしかわからない。

「あれから一週間経ってるよ。因みに今は夜の七時」

「そうか……一週間も寝てたのか」

「うん。勝太郎、全身血だらけだったんだよ。あの時は死んじゃうと思った……」

ミスフォルラは目尻に浮かんだ涙を拭う。

「泣くなよ。俺は生きてるだろ……さっき殺されかけたけど」

「あれはその嬉しくてつい……ごめん」

「別に怒ってない。むしろそんなに心配してくれて……ありがとな」

勝太郎は恥ずかしくなって顔をそらす。

「ど、どういたしまして」

ミスフォルラも、赤くなって俯いていた。

「なあ、俺が寝てる間の事教えてもらっていいか?」

「うん。あのね……」

ミスフォルラが一週間の間の出来事を話していく。

バルイールの怪我は軽くて今はピンピンしている事。

メルヒェンは桃ノ木博士のラボで修理中で後一週間すれば戻ってくる事。

キメラスーツを二着とも破壊された事を知った桃ノ木博士がさらなる改良型を作っている事。

化け物、黒い悪食を倒した後、神の手の教祖達が姿をくらました事を話した。

「……そうか。お前は元気なのか? 身体、何ともないのか?」

「うん。今は健康そのものだよ」

「なら良かった」

「バルイールにメルヒェン。それに勝太郎のお陰だよ」

ミスフォルラはそう言って花が咲いたような微笑みを見せた。

「それは、どういたしまして」

勝太郎の顔が真っ赤になる。

「な、なあ一つ聞いてもいいか?」

勝太郎は恥ずかしさを紛らわせるために質問する。

「何?」

「俺の事、さっきから勝太郎って……」

「あっごめん。アルフィアさんがこう呼ぶと彼喜ぶよって言ってたから……駄目かな?」

ミスフォルラは俯いて上目遣いで勝太郎を見る。

「……駄目じゃない」

「よかった。ねえ勝太郎。私も一つお願いがあるの」

「何だよ?」

ミスフォルラは意を決して思いを口に出す。

「私の事もミスフォルラじゃなくて、ミスティって呼んでほしいなぁ、駄目?」

ミスフォルラは頬をほんのり染めてそうお願いしてくる。

勝太郎にそれを拒否する事はできなかった。

「分かった。今度からそう呼ぶよ」

「うん。呼んで?」

「今か?」

勝太郎は驚いて目を見開いた。

「駄目?」

彼に今のミスフォルラに逆らう事は不可能だった。

「……スティ」

「うん? 聞こえないよ」

「く〜〜ミスティ! これでいいだろ」

勝太郎は恥ずかしさのあまり毛布を頭まで被る。

自分でもわかるほど顔が熱くなっていた。

「えへへ。ありがとう勝太郎。すっごく嬉しい」

彼女のとんがり耳は嬉しさでパタパタと動いていた。

ミスフォルラは毛布に隠れたままの勝太郎に話しかける。

「私そろそろ戻るから、何か欲しい物ある? 言ってくれれば取ってくるよ」

勝太郎は毛布の中で考える。

そしてある一つの考えが浮かんだ。

「……ある」

「何持ってきてほしいの?」

「……くらしてくれ」

「えっ? 聞こえないよ勝太郎」

ミスフォルラは聞こえるように彼に近づく。

「枕が合わないんだ。だから……」

「だから……?」

「膝枕……してくれないか?」

「分かった膝枕……ええええっ!」

ミスフォルラの絶叫が病院の個室に響く。

慌てて口を自分の手で押さえた。

「そ、それは、えっとその……」

ミスフォルラはしどろもどろで何も言えなくなってしまう。

「駄目か?」

勝太郎は狼狽えるミスフォルラの目を見て尋ねる。

彼の左手がミスフォルラの方に伸ばされた。

(そっか)

ミスフォルラはある事に気づく

彼は一人になりたくなかった。

誰かに一緒にいて欲しかったのだ。

「だ、駄目じゃない!」

ミスフォルラは勝太郎の左手を優しく掴んだ。

「駄目じゃないけど、そ、その私の膝枕でいいの?」

「ああ、ミスティのがいい」

今の勝太郎は子供みたいだった。

「分かった。ちょっと待ってね」

ミスフォルラはベッドに腰掛ける。

「ど、どうぞ……」

勝太郎は頭をミスフォルラのふとももに乗せる。

「どうかな?」

「うん。気持ちいい……ありがとう……」

勝太郎は彼女のふとももに頭を預けてすぐ寝息を立てる。

「勝太郎? 寝ちゃった……」

ミスフォルラは眠る勝太郎の髪を、起こさないようにゆっくり梳く。

勝太郎の顔はとても幸せそうだ。

「おやすみ勝太郎。いい夢見てね」

ミスフォルラはそう言いながら、彼の頭を優しく撫で続けるのだった。


勝太郎は夢を見ている。

いつもの悪夢だった。

けどいつもと少し違った。

ずっと遊んでいても世界は暗闇に包まれず、両親も炎の中に消えない。

振り向けば笑顔の両親がこちらに手を振ってくれる。

幼い勝太郎は公園で遊び続けた。

その時、公園に一人の白いワンピースをきた少女が現れる。

少女は勝太郎に近づいてくる。

勝太郎も彼女の元に駆け寄った。

少女は黒いロングヘアにエメラルドの瞳を持ち、細くとんがった耳を持っていた。

勝太郎は彼女の事を知らないはずだが、なぜか初めて会った感じがしない。

しばらく二人は無言で見つめあった。

「いっしょにあそぼっ!」

先に口を開いたのは勝太郎だ。

彼は彼女に向けて左手を伸ばす。

「うん!」

少女は耳をパタパタと動かしながら勝太郎の手を握るのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

これでこの物語は一応終わりです。

楽しんでもらえたでしょうか。

少しでも楽しんでもらえたらとても嬉しいです。

もし宜しければ感想を書いていただけるとありがたいです。

それではこの辺で。

また次の物語でお会いしましょう。

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