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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
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第5話 その8

勝太郎は振り向く。

見ると赤い光が柱のように伸びていた。

『勝太郎。ゴメン儀式を止められなかった』

バルイールの謝罪が勝太郎の耳に入ってくる。

「今、ミスフォルラを連れてそっちに合流する」

『分かった』

勝太郎はミスフォルラの元に向かう。

「海崎くん」

勝太郎の姿を見つけたミスフォルラが手を振る。

「あの光は何?」

「奴らの儀式が終わったんだ……大丈夫かミスフォルラ何があったんだ?」

銃を持っているミスフォルラを見て勝太郎がそう尋ねた。

「敵が現れたから撃っただけ、ただそれだけだよ」

「そうか。よくやった。みんなと合流するぞ」

勝太郎はあまり詳しく聞かず、ミスフォルラの腕を引いてバルイールとメルヒェンに合流する。

「ショータロー、ミスティ。こっちこっち」

バルイールとメルヒェンは岩に身を潜めていた。

「メルヒェン、バルイール」

二人の姿を見てミスフォルラは涙が出そうだった。

「ミスティ無事なんだね。よかったよ」

「姉さま。会えてとても嬉しいです」

「私も二人に会えて本当に嬉しい」

「三人とも感動の再会は後だ。何か出てくるぞ!」

勝太郎が言ったように魔法陣の出口から何かが現れた。

「何なのあれは?」

バルイールの問いに答えられる者は誰もいなかった。

魔法陣から現れたのは全長七メートル程の人型の化け物だった。

肌は黒く体毛はない。

頭には目と耳がなく、人間そっくりの鼻と大きく裂けた口がある。

身体は上半身と両腕が筋肉で異様に盛り上がり下半身が小さく見えていた。

「これが神。ああ何と頼もしい姿なの」

真起子が歓喜にその身を震わせながら化け物に近づいていく。

「あれが神?」

バルイールがG3を油断なく構えながらそう呟いた

「モンスターじゃないの?」

その隣でミスフォルラも呟く

「データにありません。新種のモンスターのようです」

メルヒェンは冷静に敵を観察する。

「……悪趣味な神だな」

勝太郎は吐き捨てるように言った。

「神よ。どうかこの身をあなた様と一つに、それが私の望みです」

真起子は神と呼ぶ化け物の前に跪いた。

「ウルルルルルル」

化け物はそう鳴くと、真起子をその太い手で掴んだ。

「私を認めてくださるのですね……ぐぇっ」

真起子の口からカエルが潰れたような音が漏れる。

「なっ!」

勝太郎達は目を疑った。

怪物が真起子を握りつぶしたからだ。

「な、なにを……」

化け物はまだ生きている真紀子を掴んだまま、持ち上げて口の前に持ってくる。

「ウルルルルルル!」

化け物は口を大きく開ける。

想像できないほど、口は何倍にも広がった。

「やだ、やだやだやだやだやだやだやだやだ。やだあああああああ」

悲鳴をあげる真起子を化け物はその口の中に放り込む。

そして口を閉じて咀嚼し飲み込んだ。

「うぅっ」

それを見ていたミスフォルラが口を押さえうずくまる。

「何なのあいつ? あれが神……」

バルイールも今まで見たことのない異様な存在を前にして声が震える。

「落ち着け。あれは唯の化け物だ!」

勝太郎はバルイールの目を見て力強くそう宣言した。

「マスター。化け物が動きます」

見ると黒い化け物が動き鼻をヒクヒクと動かす。

そして頭を周りにいた信者達に向けた。

「ひっ」

信者の一人が悲鳴をあげる。

それが聞こえたのか、化け物が笑うように口角を吊り上げた。

そして次々と手近な信者をつかみ、大きく開いた口に放り込んでいく。

そこは阿鼻叫喚の地獄だった。

「ウルルルルルルルルルル!」

化け物は鳴き声を上げながら、逃げる信者を捕まえて口に入れ咀嚼する。

銃を撃って抵抗する者もいたが、化け物の拳で吹き飛ばされ潰されていく。

「……何なのよ。あいつ」

バルイールの口から思わずそんな呟きが漏れる。

「おい。逃げるぞ! おい!」

勝太郎は化け物から目を離せなくなっているバルイールを無理やり自分の方に振り向かせる。

「化け物が信者達に夢中になっている間にここから脱出するぞ。分かったな!」

「う、うん。ゴメン、ショータロー」

「謝るな。メルヒェン、ミスフォルラを連れて行ってくれ」

「分かりました」

メルヒェンは動けないミスフォルラに肩を貸す。

「姉さま。つかまってください」

「ありがとう」

ミスフォルラはメルヒェンの方に手を回す。

メルヒェンは左手一本で彼女の身体を立たせた。

直後化け物に背を向けていた四人に大きな影が覆いかぶさる。

いつの間にか、信者達の悲鳴は聞こえなくなっていた。

「くそ。みんな走れー!」

振り向いた勝太郎はそう叫ぶ。

化け物が鼻をヒクヒクさせながら鼻と口しかない顔でこちらをじっと見ていたからだ。

先頭を勝太郎、次にミスフォルラに肩を貸すメルヒェン。最後尾にバルイールの順で走る。

「ウルルルルルル」

化け物は鬼ごっこでもしているのか、楽しそうに鳴きながら追いかけてくる。

目の前の玩具を掴もうと左手を伸ばしてきた。

「来るな。化け物!」

最後尾のバルイールが振り返ってG3をセミオートで二発ずつ撃つ。

発射された七・六二ミリは化け物が伸ばした左手に穴を開ける。

「どうだ……えっ?」

しかしすぐに穴は塞がり、何事もないように追いかけてきた。

再びバルイールは振り返り今度はフルオートで撃った。

十発以上の弾丸が左手を穴だらけにする。

「ウルル、ウルルル」

今度は効いたのか、化け物が左手を引っ込める。

「よしっ! ざまあみろ!」

「バルイール足を止めるな!」

勝太郎の警告は少し遅かった。

油断したバルイールにものすごい速さで左手が伸びバルイールを掴みにかかる。

「きゃあああ」

彼女の悲鳴が辺りに響き渡る。

「バルイールが捕まった。彼女を助けるぞ!」

「はいマスター」

勝太郎とメルヒェンは振り向く。

化け物が掴んだのはバルイールが持っていたG3のハンドガードだった。

「この、離せ!」

バルイールは咄嗟にハンドガードを持っていた左腕を引いて、身体を掴まれるのは回避したが、G3が捕まってしまった。

化け物の左手に掴まれたG3のハンドガードが軋んでヒビが入っていく。

バルイールはその手を引き剥がそうと力任せに引っ張る。

「バルイール。銃は諦めろ!」

「うぎぎぎぎっ! 離せー!」

勝太郎の指示は聞こえておらず、バルイールは更にG3を引っ張る。

G3のハンドガードは完全に潰れ銃身も握りつぶされていく。

「バルイール。お願いもう逃げて!」

叫んだのはミスフォルラだった。

「はっ……ゴメンG3」

ミスフォルラの声でやっと我に返ったバルイールは。

そして左手でベストからM26手投弾を取り出し、安全ピンとレバーを外す。

そして四秒待って、握りつぶされていくG3から右手を離し手投弾を化け物の左手に投げつけた。

直後、爆発が轟く。

「うわああっ!」

「きゃあああああっ!」

爆風から身を守るために、勝太郎は頭を左腕でガードし、メルヒェンは悲鳴をあげるミスフォルラを守るために一歩前に出る。

爆煙の中から、バルイールが転がり出てきた。

「バルイール大丈夫か?」

勝太郎が近づいて彼女を起こす。

バルイールはヘルメットを外してこう答える。

「イッテー……大丈夫。スーツが守ってくれたけど壊れちゃった。アスカちゃんにめっちゃ怒られる」

バルイールは勝太郎にボロボロになったヘルメットを見せる。

「だが、死ぬよりはいいだろ」

「そうだね……あいつ、まだ生きてる!」

バルイールが指差した方を見ると化け物はまだ生きていた。

左腕はM26の爆発でボロボロになっていたが、それもだんだんと再生していく。

その化け物が今度は右手をバルイール達に伸ばしてきた。

「ショータロー退がって!」

バルイールはそう言うと、左手で背中からM37ソウドオフを取り出しセイフティを解除する。

そして迫る巨大な掌に向けて引き金を引いた。

放たれた散弾が、化け物の掌を大きく抉る。

「全弾喰らえー!」

バルイールは吠えながら、引き金を引いたまま、フォアエンドを前後させる。

バガガガンと四度銃声が轟き、四発のショットシェルに詰まっていた約九ミリの鉛の散弾三十六個が怪物の右手をズタズタに引き裂いた。

「ウルルルルルル!」

化け物は悲鳴をあげて、右手を抑えながらうずくまる。

「今だ逃げるぞ」

勝太郎のその一言を聞いて三人は一斉に化け物から距離を取るのだった。

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