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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
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第4話 その4

勝太郎達三人が屋上で昼食を食べながら談笑している時。 一人の女性が電話をしていた。

「まだいい方法は見つからないの? 一体いつまで待たせる気なの!」

黒いスーツを身に纏う彼女の名前は、永泉真起子。この古宿高校の校長を務めている。

生徒や職員からは冷静沈着に見られている彼女は、校長室で電話の相手に声を荒げていた。

「もう一週間も経つのに、あなた達は何をしているのですか!」

彼女には校長という表の顔ともう一つ裏の顔を持っていた。

「一刻も早く神の儀式を完遂しなければならないのですよ!」

真起子の裏の顔、それは神の手の教祖の一人であったのだ。

神の手の教祖は十人いて、彼女はその中で一番末席であった。

ひょんな事で幸運が舞い込み教祖になれた彼女は、神を降臨させる儀式を成功させて、その地位を磐石なものにしようとしていた。

しかしそれは勝太郎達の活躍により失敗に終わる。そのせいで彼女は焦っていた。

早く儀式をすませ、その身と神を一体化させなければ、せっかくの教祖の地位がなくなってしまう。

真起子は相手の言い訳を聞き流しがら、手元の書類に目を通す。

そこにはここの生徒であるミスフォルラの事が書かれていた。

真起子は校長という地位を利用して生贄にふさわしい少女を探していた。

そして目を付けたのがミスフォルラだった。

誘拐は成功し、後は自分がその場に赴き儀式を終わらせるだけの所で邪魔が入ったのだ。

真起子はもう一枚の書類を見る。

(忌々しい探索者め)

勿論そこに書かれている人物は、同じ学校の生徒である探索者、勝太郎だった。

真起子は何度も部下を使って、勝太郎の住む雑居ビルを襲撃しようとしたが警備は厳重で、監視用のカメラまですぐに壊されてしまう始末。

文字通り八方塞がりだった。

「取り敢えず、言い訳はいいから他の方法を考えなさい!」

ずっと言い訳をしていた信者の言葉を遮り、荒々しく受話器を置いた。

「全く、使えない人間ばかり!」

真紀子はそう言いながら、右手親指の爪を噛む。

ネイルで綺麗に整えられた爪は親指だけボロボロになっていた。

その時また電話が鳴る。

また役立たずが言い訳してくるならそいつを塔獣(モンスター)の餌にしてやろうと考えながら受話器を取った。

「はいもしもし……」

その内容を聞いて真起子は口角を釣り上げるのだった。


そこは一面水を弾くタイル張りの部屋だった。

部屋の中央には簡易なベッドが一つあり何かが、赤黒く染まった白い布をかけられて横たわる。

側には肉を切断する時に使う様々な刃物が置かれていた。

部屋のドアが開き一人の人物が入ってくる。

そのは異様な姿をしていた。

足には長靴を履き手には肘までの長さのゴム手袋を付けている。

耐水性の白いエプロンを付けているのだが、何故か所々赤黒い。

体格から辛うじて男だと分かるのだが、頭に白い帽子を被り、顔にはゴーグルと顔の下半分を覆い隠すマスクをしていて表情は全く見えない。

男は部屋に入ると、まっすぐベッドに近づく。

そして汚れた布を取ろうとしたところで、ポケットの中の携帯が鳴る。

着信音が部屋中に響く中、男はそれを無視して布を剥ぎ取る。

現れたのは眉間に穴が開いた男の死体だった。

殺ったのはマスクの男だ。

彼は電動のカッターを手に持つと、そのスイッチを入れる。

モーターが甲高く鳴り響き、着信音と混ざって耳障りな音を奏でる。

不意に鳴っていた携帯が沈黙する。

(又かかってくるだろう)

男はそう確信していた。

何故なら、ポケットの電話は仕事用で、この電話に掛けてくる者は、全て彼に仕事を依頼する者だからだ。

彼はカッターを死体に近づける。

マスクの男が今優先すべきは、目の前の肉の処理だった。


建物の裏口から一人の男が出てくる。

男はツヤのない黒髪を肩まで伸ばしている。顔はシュッと細くヒゲも生えておらず、肌の色は白い。しかも伸びた前髪の所為で目元が隠れていて、何を考えているのか分からない。

彼の格好は黒のスーツで、シャツもネクタイも真っ黒だ。

さらに黒い手袋をして靴まで黒のローファーで固めていた。

彼が先ほどのマスクの男の正体である。

男は右手に赤い液体が滴るアタッシュケースを持って路地裏を歩き、駐車場に止まっている車に向かう。

車は黒のBMWで、男はそれのトランクを開ける。

すると胸ポケットに入れた電話が鳴る。

男はアタッシュケースをトランクにしまうと、携帯を手に取る。

着信は先程からずっとかかってきていた番号だ。

彼は通話ボタンを押して電話に出る。

「もしもし?」

『やっと出た! もしもし。この電話は『何でも屋』の番号で合っていますか?』

相手は女性の声だった。

声からとても焦り、苛立っているように感じられた。

「合っていますよ。どんな依頼ですか?」

『私はまだ何も言ってないんですが……なぜ依頼だと?』

女性の声は驚きで震えていた。

「分かりますよ。この電話は依頼専用の電話ですから」

『なるほど……あなたに依頼を頼みたいのですが』

「私は何でも屋です。どんな仕事でも受けますよ」

『ならば、あなたの腕を見込んで、ある仕事の護衛を頼みたいのです』

「何の護衛ですか?」

男は運転席に向かって歩き出す。

『私たちはある誘拐を計画しています。それを邪魔する者が現れた時、排除してもらいたいのです』

「詳細な情報は貰えるのですか?」

『それは依頼を受けてくれるということで宜しいのですね?』

「私は何でも屋。この電話にかかった依頼は何でも受けますよ。丁度いま一件の依頼が終わって時間が空いています」

『そうですか。今そちらにメールを送ります』

直後、男の携帯にメールが届く。

「届きました。後で確認しておきます」

『よろしくお願いします。ところでそちらの事は何と呼べばいいですか?』

「サイトーと呼んでください」

もちろん偽名だ。

『サイトーですね。私の名は……』

「待った。あなたの名前は伏せておきましょう。トラブルがあった時に、色々とまずいと思うので」

自分の名前も勿論偽名だと女性に伝える。

『……そうですね。分かりました。日時と場所の詳細もメールに書いてあります。報酬は成功してから指定の口座に振り込んでおけばよろしいですね?』

「それで結構です」

『では失礼』

その一言を最後に電話は切れた。

サイトーは送られてきたメールを確認する。

そこには決行する時間と、誘拐する場所である古宿高校に侵入する方法。

そして誘拐する人物と、障害になりそうな人物が顔写真付きで載っていた。

ターゲットは、美花子・ミスフォルラ。

そして一番の障害になるであろう海崎・ルミニス・勝太郎。

ドワーフのバルイールとアンドロイドのメルヒェン。

決行する日は今週の金曜日。

「……探索者が三人もいるのか。少なくともさっき解体した奴よりは、面白くなりそうだ」

数分で内容全てを記憶して、メールを削除したサイトーは車を発進させる。

BMWが動いた時、トランクの中のアタッシュケースがぶつかり、隙間から盛大に血が溢れた。

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