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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
1/43

第0話

新しいシリーズを始めました。

今回は近未来の東京が舞台のダンジョンを探索する、高校生探索者を主人公とした物語です。

日本の東京が舞台ですが、エルフやドワーフも出てきます。

後、銃もたくさん出ます。

前置きはこれぐらいにして、私の物語を楽しんでもらえたら嬉しいです。


塔の出現から一ヶ月後。

桃ノ木アスカは、薄明かりに包まれたひんやりとする通路を歩いていた。

彼女の格好は、防水ジャケットに丈の長いズボンという動きやすい服装で、いろいろなサンプルをいれるための大きいリュックサックを背負っていた。

頭を保護するための戦闘帽を被ったその姿は、彼女の幼い容姿と相まって、まるで小学校の遠足のようだった。

しかし彼女と共に歩くのは物々しい格好をした大人達だった。

アスカの周りには揃いの迷彩服を着た自衛隊員十人が、彼女を守るように囲んでいる。

(うーん居心地悪いな〜)

アスカは心の中でそんな事を呟いていたが、決して口には出すことはなかった。

「どうしました? 桃ノ木博士」

「な、何でもない!」

いきなり声をかけられたので、心を読まれたのかと思い、返事が上ずってしまう

「そうですか。あとあまり大きな声は出さないように、我々を狙う奴らがどこにいるか、分からないのですから」

「わ、分かってるわよ」

アスカは、彼と目を合わせると心の中が見透かされているような気がして、すぐさま顔を背けた。

「ならいいのです」

アスカと会話していた自衛隊員は、彼女が自分から首を背けた事を知って、それ以上話しかけず前方を警戒する事に集中する。

(怒らせてしまったか……)

彼の名前は荒刃刃鬼(あらはばき)六郎。階級は三佐で、この調査隊の隊長を務めている。

彼は、アスカを自分の小学生の娘と重ねて見ていた。

だが、今はそんな事を考えている場合ではない。

今彼等がいる所は前人未到の場所。油断すればここにいる怪物たちに、文字どおり食い殺されてしまう。

なので、荒刃刃鬼は後で謝ろうと結論を出し、先を進む。


(ハァー。秋葉原で買ったあのフィギア早く開けたい)

荒刃刃鬼から心配されているのにも気づかず、アスカはそんな事を思っていた。

「おっと」

考え事をしながら歩いていた為、つまずいて転んでしまった。

(しまった……)

視界いっぱいに、急速に地面が迫ってきて、アスカは思わず目を閉じる。

ぽよん。

「えっ?」

硬い床に顔を強打すると思ったら、物凄く柔らかいものに包み込まれた。

「アスカちゃん。大丈夫ですか〜?」

「…………」

「ア、アスカちゃん?」

そう声をかけてきたのは、(ひいらぎ)梨花二尉であった。

どうやら転んだアスカを咄嗟に受け止めてくれたらしい。

しかし彼女にとって、今顔を(うず)めているものが自分には無い物で、とても気に食わなかった。

「……苦しい」

「ああ、ごめんなさい!」

梨花は慌ててその大きな胸からアスカを解放した。

アスカの目の前で双丘が再び柔らかそうに揺れる

「ごめんねアスカちゃん。怪我はない?」

「全く、羨ましい……」

「何か言いました〜?」

梨花はおっとりした性格と身体つきからは想像できないが、彼女も立派な自衛官である。

しかも医官。彼女は部隊に欠かせない存在なのだ。

アスカから見れば、とても失礼な話だが、彼女は自衛隊員のコスプレしてるようにしか見えなかった。

「足、一応見ておくね」

「大丈夫よ。ちょっとつまずいただけよ」

「駄目です! 万が一という事もありますから」

「んー、分かったわよ」

「はい。失礼しますね」

アスカの足を診ている間、周りの隊員達は中腰で周囲を警戒する。

「うん。異常はないみたい」

「だから大丈夫って言ったでしょ」

「うん。ごめんね」

「博士は大丈夫か?」

「はい荒刃刃鬼三佐。問題ありません」

「そうか。博士気をつけてくださいよ。皆行くぞ!」

「…………」

アスカが怪我をしていないとわかって、荒刃刃鬼は返事を待たずに、すぐ部下に移動を命じる。

「ごめんね〜。アスカちゃん」

「何で梨花が謝るのよ?」

「三佐は厳しく見えるけど、とってもいい人なの。嫌いにならないであげてね」

そう言って梨花は両手を合わせてペロッと舌を出す。

そんな仕草も彼女にはとても似合っていた。

「大丈夫。それくらい分かってる」

「そうよかった〜」

荒刃刃鬼が部下達から慕われているのは、アスカにも分かっていた。

彼の指示は的確で、部下達は嫌な顔せずにテキパキと動いていたからだ。

アスカも立ち上がり、歩き出す。

梨花も彼女の横について一緒に歩き出すのだった。


荒刃刃鬼達の元に、先行していた部下の一人から無線が入る。

丁字路に差し掛かり、荒刃刃鬼は安全を期す為、部下を二人偵察に出していた。

無線は左の通路に行った部下からだった。

『三佐。大きな部屋を見つけました』

「中には何かいるか?」

『はい。十匹以上のフィア族がいます』

フィア族とは、肌の黒い角の生えた小鬼のような生き物である。

彼等は人間を見つけると持っている武器で襲いかかってくるとても危険な存在だ。

「フィア族か、そこから退避しろ。もう一方の道を行こう」

「待って下さい。それが……」

部下の報告を聞いて、荒刃刃鬼は退避するという考えを改める事にした。


「何してるの?」

丁字路から進まなくなった一行を見て、アスカは荒刃刃鬼に話しかける。

「ドローンを出しているところです」

荒刃刃鬼はドローンを出すように指示を出しながらアスカの質問に答えた。

「何の為に?」

「この先の大部屋にフィア族が大量にいる事が分かりました。そこをコレで偵察するんです」

出てきたドローンは四輪タイヤのついた真っ黒なミニ四駆のようで、車体の上に丸いカメラが取り付けられていた。

「三佐。準備できました」

「よし……そちらに動きはあるか?」

『いえ。入り口に注意を払っている者はいません』

「了解。ドローンを出せ」

荒刃刃鬼の指示で、ドローンが発進する。

それを操作するコントローラーはタブレット端末で、その画面には部屋の中が映し出されていた。

「十匹、いやそれ以上のフィア族がいるな」

「 すごい広い部屋です〜」

「これは何、檻かしら」

荒刃刃鬼がフィア族の数を確認し、梨花が部屋の広さに驚く中、アスカはあるものに注目していた。

それは何かの骨で作られた檻が映っていた。

しかもそれは一つではなく、何個もあった。

中には人間が入っているように見えたが、まだ遠くてよく分からない。

「消息不明になった調査隊の人でしょうか?」

荒刃刃鬼達の前に、二度調査隊が派遣されていたが、いまだに多くが行方不明だった。

「分からん。もう少し近づけるか?」

「これ以上近づくと、見つかる可能性がありますが」

「構わん。檻の中に誰が囚われているかを確認するほうが重要だ」

荒刃刃鬼の指示を受け、ドローンをさらに近づける。

檻の中にいるのは調査隊の人間ではなかった。

ボロの服を着て薄汚れた男女が檻の中にぎゅうぎゅうに押し込められていた。

よく見ると彼らの髪は金や銀で皆美しい顔立ちだったが、一番目立つのは耳がとんがっていた事だった。

「この姿って、まるで……」

「……エルフ?」

梨花の言葉を引き継いだアスカの一言に皆が驚く。

「でもエルフなんて架空の存在のはずなのに……」

「三佐。檻はかなりの数があり、そのどれにも、囚われている人がいるみたいです」

ドローンのカメラが動きエルフによく似た人々を映していく。

「あっ、見てください!」

梨花が画面を指差す。

「柊二尉。声が大きい。何を見つけた?」

「すいません! ここにさっきの人達とは特徴の違う人が見えます〜」

ドローンが梨花が指差した檻に近づく。

そこには逞しい体格の立派なあごひげを生やした人物が檻に閉じ込められていた。

「この姿も、何処かで見た事があります〜」

「もしさっきの人達がエルフなら、この人達は……」

「ドワーフか?」

アスカの言葉を奪ったのは荒刃刃鬼であった。

「……娘に読んであげた本に、そういう人物が出ていただけだ」

荒刃刃鬼は戦闘帽で目元を隠し、一つ咳払いをする。

「荒刃刃鬼。彼らを助けるべきよ」

「私からもお願いします」

アスカと梨花に言われて荒刃刃鬼は考える。

彼らを助けたい気持ちはあるが、かなりの人数が囚われている事は間違いない。

こちらは十人。別行動している部隊と合流しても三十人ほどしかいない。

無事に彼らを救出できるかどうか、難しい決断を迫られていた。

その時、ふとタブレットに目をやると、彼らの子供だろうか、少女がドローンに気づき何かを訴えていた。

スピーカーが付いていないので音は拾えなかったが、幼い彼女が助けを求めているのは荒刃刃鬼含め、全員が分かっていた。

「あっ! ドローンが!」

突然ドローンの画像が乱れ、回復した時、目の前にフィア族の醜悪な顔が画面いっぱいに映し出された。

フィア族に掴まれたドローンは地面に叩きつけられ、破壊されてしまう。

タブレットの画面は真っ黒になってしまった。

「……フィア族から彼らを救い出す。全員準備しろ」

荒刃刃鬼は直ぐに決断した。

「「「了解!」」」

「了解です!」

梨花を含めた全員が隊長の言葉に力強く頷くのだった。


荒刃刃鬼は自分を含めた九人で檻がある大部屋の前に集まっていた。

ドローンを操縦していた 一人を、アスカの警護として曲がり角のところに残しておいた。

部屋を覗くと、フィア族は騒いでいたが、入り口には全く注意を向けず、ほとんどの者が、いつの間にか忍び込んだ黒い塊の周りに集まっていた。

「奴らはドローンに気を取られている」

荒刃刃鬼は二人呼び寄せ指示を出す。

「できる限り数を減らす。静かに無力化するんだ」

指示を受けた二人は無言で頷き、持っていた八九式小銃を、背中に背負っていた狙撃銃M24と交換する。

M24はボルトアクションで連射はできないが、銃口には、銃声を小さくするサプレッサーが取り付けられている。

サプレッサーは数が揃わず、射撃の成績の良い自衛官に優先的に支給されていた。

荒刃刃鬼の指示を受けて、二人は等倍に合わせたスコープを覗きながら、中腰でゆっくりと部屋の中に入っていく。

そして部屋で孤立しているフィア族を見つけ、頭に照準し引き金を引く。

スコープの中で、フィア族が頭から血を流して倒れた。

M24を持った二人は静かにフィア族の数を減らしていく。

「行くぞ」

荒刃刃鬼は後ろにいる部下に指示を出して、部屋に入っていく。

全員八九式小銃の照準器を覗きながら、檻まで近づく。

彼らが止まったのは得体の知れない皮と骨でできたテントのような物だった。

檻の前には、まだ数匹のフィア族がいた。

『こちらから狙撃できます』

「待て。今発砲したら檻の中の人に当たる」

荒刃刃鬼は必死に考えを巡らせる。

テントから微かに漂う異臭を無視しながら、彼が考えていると、檻の中から一人のとんがり耳の女性が引っ張り出されていた。

「ゲグ!ゲゲゲグゲグゲ!」

「あいつらと会話できるのか?」

最初彼女は悲鳴を上げているのかと思ったが、違うようだった。

どうやらフィア族と会話をしているように荒刃刃鬼の目には見えていた。

二匹のフィア族は、ゲラゲラと笑いながら女性の懇願を無視する。

彼女は必死に抵抗するが、フィア族は強く手を引っ張って無理やりにでも連れ出そうとしていた。

彼女を連れて行く目的は、分からなかったが、泣き叫ぶ女性を見れば、最悪の運命しか待っていないのは明らかだった。

『三佐。指示を』

「……女性を連れて行こうとする二人を狙え。俺の合図とともに狙撃しろ」

『『了解』』

「俺たちはあの二匹が倒れたと同時に残りのフィア族を撃つ。用意しろ」

荒刃刃鬼の指示に従い、七人は持っている89式小銃を、ピタリとフィア族の頭部に照準する。

『いつでもいけます』

「狙撃班、撃て」

そう言った直後、二発の銃弾が女性を連れて行こうとしたフィア族の眉間を貫いた。

それを見た女性は突然の事に対処できずその場に崩れ落ちて悲鳴をあげる。

残りのフィア族が、悲鳴をあげる女性の方を見てそちらに近づいていく。

「射撃開始」

荒刃刃鬼は冷静に指示を出して、89式の引き金を引く。

指示を受けた梨花達も躊躇うことなく引き金を引いた。

放たれた弾頭が、フィア族の急所を次々と撃ち抜く。

檻の中に囚われていた人々は突然の事態に驚く。

破裂するような大きな音に続いて、フィア族が血を流して倒れていくのを見て、声も出すことも忘れていた。

『狙撃班はその場で待機。敵を見つけ次第撃て』

荒刃刃鬼はそう指示を出して、部下と共に檻に近づいていく。

近づく間に何度かくぐもった銃声が聞こえた。

荒刃刃鬼達は、銃口を油断なく構えてゆっくりと檻に近づく。

視界には檻の中の人々が詳細に見えてきた。

皆一様に、銃を構えて近づいてくる自衛隊員を、不安げな瞳で見つめていた。

荒刃刃鬼と目が合った何人かが慌てて目をそらす。

梨花はどこかに連れていかれようとしていた女性に、駆け寄り話しかけた。

「私達は、日本国の自衛隊です。敵ではありません。あなた達を助けに来たんです〜」

「ニホ、ン? ジ、エイタイ?」

「今、怪我してないか診ますね」

「グゲゲゲ、グゲグゲゲ!」

その直後叫びを上げながら、フィア族が迫ってくる。

「奴らが来る。柊二尉! 直ぐに彼女を連れてこちらに来るんだ」

「はい!」

自衛隊員達は、まだ距離が離れていたので、冷静に狙いをつけ、二人がこちらに合流したのを確認する。

「耳を塞ぐんだ!」

荒刃刃鬼は、通じないと分かっていながらも、骨格子からこちらを見る人々に、警告を発する。

そして単射にセットした89式の引き金を引いた。

次々と銃声が轟いて、檻の中の人々が急いで耳を抑える。

迫るフィア族は次々と撃ち抜かれ、地面に血溜まりを作る。

数分後、辺りに響くのは、空薬莢が床を跳ね回る音だけだった。

全員は動くものがいなくなったのを確認して、残弾の少なくなったマガジンと新しいマガジンを交換して、再び敵が来ないか警戒する。

「銃を下ろせ」

自分たちに迫る脅威がないことを確認して荒刃刃鬼はそう指示を出すのだった。


戦闘が終わった後も荒刃刃鬼は部下達に次々と指示を出す。

「狙撃班は警戒態勢を維持」

『『了解』』

「檻から彼らを解放してやれ」

「了解」

「柊二尉。君は解放した人々の健康状態を診てやってくれ」

「了解です〜」

「フィア族の死体は、人目につかないところに集めるんだ」

「了解しました」

「桃ノ木博士をここに連れてきてくれ。彼女の知識が役に立つかもしれない」

『了解。博士をそちらにお連れします』

荒刃刃鬼の指示を受けた兵達は、檻から囚われていた人々を解放していく。

「大丈夫ですか? 皆さん怪我はありませんか?」

「…………?」

「……ケガ?」

梨花が積極的に話しかけるが、やはり言葉が通じないのか首を傾げ、お互いの顔を見合わせる。

「どうしよう。やっぱり通じないよ〜」

梨花は困り果て、目の端に涙を浮かべてしまう。

「ちょっと、柊。泣いてる場合じゃないでしょ!」

「ふぇっ? あっ、アスカちゃん!」

梨花が声がした方に振り向くと、そこには腰に手を当てたアスカが仁王立ちになっていた。

彼女はサイズが合わない戦闘帽のズレを直すと、梨花に近づく。

「全く、いい歳して何泣いてるのよ」

「いい歳って、アスカちゃんより三歳年上なだけです〜!」

梨花は両手をブンブンと振って抗議する。

「今は、そんな事言ってる場合じゃないでしょう!」

「はっ、そうでした〜。皆さんと言葉が通じないんですよ。どう意思の疎通をしたらいいのか……」

アスカは梨花の背後にいる彼らを見ると、皆不安そうにこちらを見ていた。

目の前でずっと意味不明な言葉でしゃべっている人間がいれば誰だって不安になってしまうものだ。

「私に任せなさい! げほげほ」

「ア、アスカちゃん!」

アスカは梨花を安心させるために、ドンと勢いよく胸を叩いた。

けど余りにも強く叩いたせいで、思いっきりむせてしまう。

「だ、大丈夫ですか〜?」

「ケホケホッ。大丈夫よ。任せなさい」

「……心配です〜」

胸を張って進む彼女を見てそう呟く梨花だった。


「さあ、あなた達を助けに来たわよ。私達と一緒に行きましょう」

アスカはそう言って右掌を差し出す。

囚われていた人々は、大声を出しながら近づいてきた少女に只々驚くだけだった。

「大丈夫。私達はあの化け物とは違うの。あなた達を助けに来たの」

「「「…………」」」

無言でアスカの一挙手一投足を見守っていた。

アスカは話しかけながら身振り手振りで、彼らを説得する。

「ここは危ないわ。また奴らが来るかもしれない。だから、私を信じてついてきて。さあ行きましょう!」

アスカはそう言ってない胸を精一杯反らした。

その熱意に負けたのか、囚われた人々は何かを話し合う。

アスカにはその会話の内容は分からなかったが、話し終えてこちらを見る表情から、なんとなく読み取る事が出来た。

先ほど連れて行かれそうになっていた女性が一歩前に進み出て、アスカに対して頷いた。

「よかった一緒に来てくれるのね! ありがとう!」

アスカはとんがり耳の女性の手を取る。

「柊。早く荒刃刃鬼さんに報告、報告」

「はい。今すぐ行ってきます〜」

梨花は慌てて荒刃刃鬼のところに走るのだった。

耳に付けている無線の事は、すっかり忘れているのだった。


「了解……三佐。他の二つの部隊も合流の為、今こちらに向かっています」

「うむ。分かった」

「三佐〜!」

他の部隊に合流指示を出した荒刃刃鬼の元に梨花が大きな胸を揺らして走ってきた。

「どうした柊二尉」

「はい。捕まっていた人達が、私達に同行してくれるそうです」

「それはよかった。それにしても一体どんな方法を使ったんだ?」

言葉の通じない彼らを、どう説得したのか気になって、荒刃刃鬼は思わず尋ねた。

「はい。アスカちゃ、じゃなかった。桃ノ木博士が説得してくれたんです〜」

「そうか、桃ノ木博士に感謝しなければな。報告ご苦労。柊二尉」

「はい。ありがとうございます〜」

「それと、無線で報告した方が早かったのではないか?」

「はわっ! す、すいませんでした〜!」

梨花は顔を真っ赤にして謝罪するのだった。


荒刃刃鬼達は二つの部隊と無事に合流を果たして、一階を目指していた。

荒刃刃鬼の隊ともう一つの隊が、前方を警戒し、残り一隊が囚われた人々の後ろについていた。

「あなた達は、一体何者なの? なんで囚われていたの?」

「……ナニモノ?」

一階に向かっている間、アスカはとんがり耳の女性に色々と話しかけていた。

「うーん。なんて言えばいいのかしら……私はアスカ。アスカっていうの。貴女の名前は?」

とりあえず、彼女達のことを知りたいアスカは名前を知る為に自己紹介をすることにした。

「アスカ……アスカ?」

とんがり耳の女性はアスカを指さす。

「 そう。その通り。私は日本人のアスカ。貴女の名前を教えてくれない?」

しばらく考えた後、とんがり耳の女性は自分を指差してこう口を開いた。

「アルフィア。エルフ、アルフィア」

「えっ? 今なんて言ったの?」

アスカは咄嗟のことで聞き逃してしまった。

「アルフィア、エルフ」

「そう。貴女はエルフのアルフィアなのね。私はアスカよろしく!」

アスカはアルフィアに思わず抱きついてしまった。

その目には、彼女と言葉が通じて、嬉し涙が浮かんでいた。

「ハイ……ヨロシク。アスカ」

アルフィアも辿々しい片言でアスカにそう返すのだった。


二〇二X年 四月二十七日。塔を調査していた第三次調査隊は一人も欠けることなく帰ってくることができた。

彼らの帰りを待っていた人々は驚嘆する。

調査隊が救出した人々を連れていたからだ。

さらに皆を仰天させたのは、助けた人々が自らの事をエルフとドワーフであると話し、ますます驚愕するのだった。

それを聞いた誰かがこう呟いたという。

「ここは日本の東京だぞ。一体俺たちはどうなっちまうんだ」と。

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