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「ちょ、ちょっと待ってよ生田君!」
ぞろぞろと部活動を終えた生徒達が校門に向かって歩き出している。
「あぁ?」
弦も生徒達に混じるよう歩いていたが、腫れものにでも触れるように誰もが距離をとっていた。
そんなこと気にも留めていないと言った様子の弦に、鈴は荷物も何も持っていないまま駆け寄ってきた。
「一週間なんで無茶だよ! 今から戻って期間を伸ばしてもらおう! 第一、肝心の箏がないもん!」
下校中の生徒達は声を荒げる鈴に一瞬だけ視線を向けるが、我関せずと視線を元に戻す。
「――箏の当てならある。ま、正直行きたくねーんだけどな」
困ったように手を首の後ろにあて、小さくはにかんで見せる。
「それに友人が困ってるのに放っておくのはダセ―しな。いっちょ見返してやろうぜ」
「――うん! もちろん」
二人は辺りの目など気にせず、大きな音が鳴るくらい手を叩き合わせた。