9.お休me-前話の旅というのは嘘だ!-
俺は領主宅での就職かなわず、王都まで行く(行かされる)ことになったらしい。
何時王都までドナドナされるかは聞かなかったが。
で、領主さんとの会食が終わると執事さんに客室を案内された。
ちなみに余った味噌は料理長にプレゼントをした。
渡した際に作り方(味噌自体を作る方法)を聞かれたが、当然そんなの俺に答えられるはずがない。
ただ何となく覚えていた大豆と塩と樽と発酵を上手くさせて作るとだけ伝えたが、それで作れるかどうかは不明だ。
残念ながら、これ以上のアドバイスはしないというか出来ないのだ。
その後、執事さんに案内された客室は、豪華というより落ち着いた造りだった。
ちなみにメイドさんは夜のお世話をしてくれないようだ。
残念ではあるが、まあいい。
最近父親的な目で愛でることだけで何となく満足できるのだ。
そうそう若くはないのだよ。(シャ○・アズナ○ル風で)
ちなみに好きなMSはズゴッ○である。(オッサンの条件である初代に滅法強い)
ベッドに入る前に持ってきたリュックサックをベッドの横に置いた。
とりあえず微妙に重量のあった味噌500グラムが減ったのは大きい。
重さ的にも限られた空間的にも。
ちなみにアイテムボックス若しくはイベントリーは、あの異界滞在時に芋虫をもう一匹ほどやっつけておけば手に入ったのだろうか?
まあ今となっては後の祭りであり、永遠の謎ではあるが。
とはいえ。
「あーすごく疲れた!」
靴をぬいでベッドに寝転ぶと疲れと眠気が一気にきた。
昨日、今日とイベントいっぱいで若人でも疲れると思うくらいだから、普通のオッサンより少しくたびれている俺の疲れ具合は推して知るべしであろう。
まだまだ若い者には負けないと言える人の爪を煎じて強制的に飲ましたい人の一人である。
絶対に飲まないが。
で、そんな訳だからもう何もしたくないのでござる。
領主さんとの食事も何やかんやで結構気を使っていたんだなーと思う。
明日は、この部屋にこもってゴロゴロして誰にも会いたくない。
で、明日も明後日も一週間くらいここでゴロゴロしたい。
昨日、今日と一年以上の濃い経験をしたのだから仕方ないことなのだよ。
……。
あっ、回復魔法(微)があるじゃないか俺には。
天啓的な何かがひらめき、早速回復魔法をかけてみる。
…………。
残念ながら身体の疲れは取れても精神的な疲れは取れないようだ。
で、どうやら現在の俺は精神的な疲れがたまっているようだ。
結論から言うと、あんまり意味がなかった。
もう寝よ。
ちなみに灯りはキャンドルである。
ロウソクとも言うが、ここはヨーロッパ風だから敢えて言う、キャンドルだ。
ただ消し方というか対処の仕方がわからないのでベッドに潜って寝る。
これから部屋に出て聞くなんて面倒くさいお年頃なのである。
▽
翌朝、五時に太陽の明るい日差しと共に起きた。
何といっても昨日は八時前には寝たからな。
とりあえず、まだ早いのでベッドでうつらうつらと微睡むことにする。
ここで起き上って着替えたり、ストレッチなどの運動などは当然しない。
せいぜいするのは、伸びくらいである。
三十分ほどかけてゆっくり意識を覚醒させ、横に置いたリュックサックから持ってきた本を取り出して読む。
無論、上半身だけ起こしてベッドの中で。
ここでのダメダメポイントはベッドの中にいることである。
しばらくそうしていると、人の歩く足音が聞こえてきたので仕方なくベッドから起き着替えることにした。
で、洗顔をして軽く伸びをしながら身体をほぐすことしばし。
「マツシロ様、お目覚めでしょうか?」
「はい。起きていますよ」
「朝食のご用意が出来ました」
「もう準備出来ていますのですぐに行きます」
執事さんが朝食を知らせにきた。
こっちも用意は出来ているので、ドアを開けてそのまま執事さんに付いていく。
「マツシロ様、昨夜はゆっくりお休み出来たでしょうか?」
「ええ。疲れていたせいか、ベッドに入るなり熟睡してしまいましたよ。それにしても昨夜お借りした部屋は落ち着いた雰囲気があって良かったです」
「そうですか。気に入って頂いて何よりです」
「ええ。本当に気に入りました。出来れば本日もゆっくり休みたいくらいです」
「それほどまでに気に入って頂けたのですか?」
「はい、とても。実際、年のせいかまだ疲れが抜けないんですよ」
暗に今日も泊まらせろと催促する。
とても待遇は良かったですよを全面に出して。
俺はもうオッサンなので、少し図々しいのだ。
昔というか入社して間もない頃、おばちゃん達に、もう少し図々しくした方がいいわよと教わり今では結構図々しさが板についてきたのだ。
初々しさはどっか遠くへ飛んで行ったのだ、残念ながら。
「そうですか。それでしたら王都に行く予定を少し見直して貰えるか旦那さまに……」
「いや、領主さんは昨日の仕事が今日に回っているはずなので、宜しければ私が奥様に聞いてみますよ」
「わかりました。でしたら奥様に予定を聞いておきますね」
「空いた時間で結構ですので、お願いします」
昨日、見た感じ奥さんの方が領主さんより強いのは明白である。
この分だと、領主さんに話を持って行ったら間違いなく奥さんにその是非を問うだろう。
そうすれば高い確率で断られるだろう。
だが、始めに奥さんに話を持っていけば……ニヤリ。
基本、第三者の立場だと断りやすいのだが、面と向かっては断りにくいものなのだ。
しかも俺の能力と将来性を高く買ってくれている奥さんなら断れないだろう。
だから奥さんに話を始めに持って行き、それから領主さんに報告して貰う。
で、夜に領主さんから話を受けて奥さんに聞けば予定を遅らせてくれるだろう。
これで一週間はグウタラ出来るだろう。
だって、ここをでたら王都まで旅をしないといけない。
で、着いた早々、王子と会うかもしれないじゃ、俺ぜったいに過労死するよ。
毎日、同じようなことを何年も繰り返してきたんだよ。
ストレスマッハで禿るの確実だべ。
回復魔法は《微》なのか精神的な疲れに効かないし。
爺さんな俺には無理だ。
てか爺さんでいい。介護して欲しい。
▽
簡潔に言うと、俺の作戦は成功した。
で、一週間ほど、こちらで厄介できることになった。
本日、滞在三日目。
「おじちゃ~ん、料理長が呼んでいるよー」
「あんがと。リゼッタちゃん」
日本のおとぎ話をしたのが功を奏したのか、リゼッタちゃんと仲良しである。
で、更に微妙に画力のある俺は絵本を描いた。
ちなみにこの世界にも紙はある。
藁半紙みたいのだが。
そこにクレヨンで絵を描いて作った。
字は奥さんに書いて貰っている。
あの翻訳、実は字すらも書けるのだが、俺は字が下手なのだ。
絵と字は違うのだよ。残念ながら。
昨日と今日で五冊も作った。
まあ一冊で一時間くらいだから大したこともない。
これで、居心地が良くなるのなら安いものだ。
ちなみに俺からこういった物を本にして売り出したらと提案してみた。
紙芝居でもいいしとか何とか。
これくらいは俺でも出来るのだ。
ただし、これが紙から作れと言われたら無理だが。
そうそう料理長に呼ばれているんだっけな。
料理長に味噌を出してから、俺と料理長の仲はいい。
昨日、調味料を全部出して色々と確認をしたのもあるかも……はっ! それが目当てか!
ちなみに調べた結果、調味料1につき
『さ』の砂糖:1000グラム
『し』の塩:1000グラム
『す』の米酢:500ミリリットル
『せ』の醤油:1000ミリリットル
『そ』の味噌:500グラム
となっている。
昨日、各2ずつを出して渡したら料理長が厳重に管理していた。
しばらく出し続ければ、ここでノンビリしていられるかもしれん。
何といってもここは、あの異世界の出入り口があるからな。
安心は出来ないが保険にはなる。
と、思っていたが現実は非常である。
それはそれ、これはこれ。
一週間後、俺は予定通りに王都へ行くことになった。
「おじちゃ~ん、気をつけてねー!」
リゼッタちゃん、笑顔の別れである。
そこに涙などない。
どうやらこの世界の子ども結構冷めているのかもしんない。
で、あの異世界ポイントはあきらめた。
パワーポイントであればそこから行けるかもしれないに賭けたのだ。
まあ一応、分かるように石を幾つか埋めてマークをしておいた。(五日目に)
だが、もう来ることはなかろう。
頭を切り替えないと大きな失敗をするかもしれんし。
俺の唯一の特技。諦めは早いことだ! それ特技か?




