3.予想外の事態
とりあえず、用意が出来たので早速試してみることにする。
まずは、家でも簡単に出来る方法から。
この方法は、紙に絵を描いて枕元に置けば、あら不思議、起きたら異世界に到着をしているといった方法である。
お手軽で素晴らしい! ワンダフォーである。
まずは、お手軽なこれから試してみることにした。
とりあえず枕元に持っていく物を置いておく。
で、一応手首と荷物に紐を付け、分断されないようにしておく。
これで身一つで異世界に放り出されないことだろう。
当然、パジャマやジャージではなく外出着であり、またベッドや布団ではなく寝袋に入る。
傍から見ると頭の可哀相な人だが、誰もいないので問題なし!
ただこれで心臓発作で亡くなったら、世間やワイドショーでは何と言われるだろうか? ある意味、そういう結末でもありかなと思っている自分がいる。
きっと五分ほど話題に取り上げられるだろう。
で、少人数は気付くのだ。
異世界に行ったんだと。
ただ実際は、異世界というか霊界なんだけどね。
そして翌朝。
起きたら知らない……そういえば先日引っ越したんだっけ。
まだ見慣れていない天井がそこにはあった。
……どうやら寝たまま旅立つことに失敗したらしい。
まあ、そんなに簡単に行けないことくらい分かっていたが、ひょとしてという可能性もあるかもしれないと心の片隅で思っていたのに残念だ。
とりあえず重装備な為か寝汗を結構かいている。
シャワーを浴びないと……。
面倒くさい。
あぁ世の中、そう簡単にはいかないものだ。
▽
まあ、実験に失敗はつきものだ。
エジソンも「失敗は発明の母」とも言ったし。
ちなみに俺は発明などしない。
気分だよ。気分。
そんな訳で次だよ! 次!
多少、言葉遣いが悪くなるのは仕方ない。
俺は、聖人君子ではない。
ただしオッパイ聖人(星人)である。
と、俺の性癖は措いといて。
今度は、ある条件を満たしてある建物内での実験だ。
今回の方法もまた金がかからないし、移動するのも簡単である。
まあ、これで行けたら儲けものである。
ただ今回の検証は、場所と建物を選ぶ。
残念ながら俺の住んでいる建物は該当しない。
ただし公共の建物以外だと不法侵入になるし、人がいっぱいいる所だと、邪魔になるのと不審者扱いになるので、あまり人が立ち寄らずに、また昼飯時で利用しない時間で実験する。
夜に実験すればいいという意見もありそうだが、警備員に見つかったら大変なことになってしまうので自粛する。
-------検証中!---------
…………。
残念ながらこの検証も失敗だった。
やはり手近な所で、それこそ簡単に異世界に行こうと考えていたのがダメだったのかもしれない。
とはいえ、検証しないと始まらないし。
宝くじ理論である。
三千円分買っても周りから当たらないと言われても、買わないとそれこそ絶対当たらないのだ。
何を言っているかよく分からない?
言っている俺もよく分からないからどうしようもないのだ。
で、話を戻す。
普通に考えて、こう手軽に異世界に行けるようなら、世間で失敗したりなどして追い詰められた人など、あっちの世界に逃げ込んでしまうだろう。
テレビや週刊誌などでも、そんな話が取り上げられないのだからガセとはいかないまでも行くのには何かしらの条件があるのだろう。
例えば組み合わせてみるとか……。
そんな訳で、パワースポットに近い場所で、一番始めに試したのと掛け合わせてみることにしよう。
『パワースポット+寝ている間に異世界に行ける方法』である。
長期戦を見越してと無職の懐事情もあるので、用意した荷物に簡易式テントを買って、そこで一晩を過ごしてみることにした。
とりあえずパワースポットなどは寺や神社、滝に山などに多くあり、滝やら山だとテントを張っても問題はなさそうだ。
-------検証中!---------
とまあ、幸いというか選んだ場所が辺鄙な所にあるせいか、テントを張ってキャンプをしていても咎められることがなかった。
と、いうかパワースポット巡りを始めてから、一か月半が経過しようとしていた。
なんか最近では、パワースポットを観光し、その近くでキャンプをしてお土産を買って帰るというのが流れとして出来つつある。
もうここで十か所目だし。
初めの三回くらいは人目もあったし、キャンプの仕方にも慣れていなかったので色々大変だったが、今ではある程度慣れた為か楽しみつつある。
何か異世界に行く方法がついでになりつつあるくらいだ。
とはいえ、名目は異世界に行こうだからな。
名目という言い訳は大事である。(名言!)
特にオッサンというか自分にとっては。
さて、寝る準備も出来たから早く休むとするかね。
▽
それは不意打ちだった。
トイレに行こうと思って外に出たら、見知らぬ場所に出ていた。
紫色の空に灰色の木。
霧が立ち込めていて、寝る前の場所とは明らかに違う雰囲気である。
まあ幸い、テントに置いてあった荷物は俺の手元にあって無事だった。
とりあえず当初の目的だった小便をする。
生理的欲求に逆らえないのと、出来ることは早く済ませた方が建設的な考えだと思ったからだ。
少しちびったが歳のせいとは考えたくない。
あと、動揺の為か手が震えて靴におしっこがかかったなんて些細なことだ。
で、ちゃんと始末しなかったせいか小便の残りがパンツを汚したのも気にしない。
ふふふ、白いブリーフでないから多少の黄ばみなど問題ないのだよ!!
ただズボンにまでいったのは失敗だったがな(涙)
小便が終わり、とりあえずテントを片付け、いつでも動ける準備をしておく。
携帯食をかじってお茶を飲みながら、考えをまとめていくことにした。
まず、ここは俺の居た場所ではないということ。
分かっていることだが、改めて認識をする。
地面を歩いている赤い色をした蟻が、ドリンク剤くらいの大きさもあり非常に不気味である。
そんな蟻が灰色の木に登り、茶色の葉を持ち帰っている。
赤い色をした蟻に襲われなくて良かったが、気分は滅入る。
ああ何というか、ここは異世界というより、異界といった感じだ。
俺の思っている異世界というのは、昼間の世界のイメージがある。
で、異界というのは夜の世界のイメージだ。
どちらも違う世界なのだが、俺の中では区別させてもらった。
で、異世界はファンタジー系のもの。
異界というのは、異形の者がいる世界。
謂わば、オカルト系といえばいいのか。
ドラキュラやらゾンビがいる世界。
ああ自分で言って泣きたくなってきた。
絶対に来てはいけない世界だったんだよ。
ああ財布に二万円しか入れてなかったから片道だったんだな。
十万円入れておけば良かったよ。
もう泣いても何の解決もしないけど。
とりあえず、この世界にも昼夜があるか検証してみようと思う。
まあ幸い、時計は普通に動いているようだし、ここで一昼夜過ごしてみれば分かるだろう。
この場所は不気味だが、寝ている時も何も起こらなかったし、下手に動かない方がいいだろう。
まあ反対に、どこに居ても安全という保障にはならない。
何故なら、俺の知らない世界なのだから。
とりあえず杖を装備しておこう。
俺は杖を装備した。
E杖 攻撃力+3