27.出発
先日、無事出産した俺とマルガの双子の赤ちゃんの名前が決まった。
ケンタとマリモである。
色々とツッコミたいと思うが、それに決まった。
まあ、それはそうと王族というのは子育ての面でもヤッパリ楽である。
何と言ってもケンタとマリモ専属のベビーシッターさん達が付くのだから。
昼間は、俺やマルガが世話をして、就寝する時間帯などは専属のベビーシッターさん達がローテーションでお世話をしてくれるので俺たちはグッスリと寝られる。
そして尚かつ、食事時や模型作りの時などもお世話をしてくれるので、育児ノイローゼとは無縁である。
よく生まれてから三歳までは子どもを叱ってはいけないそうだが、それを地でいけるのは素晴らしいことだ。
絶対、日本で過ごしていたら無理な話だ。
まあ俺なんて赤ちゃんどころか、結婚さえも出来なかったと思うが……。
……で、育児の事もスムーズにいっているが、神社やメダルの方も何の問題もなくいっている。
第一回模型コンテストも無事に終わり、優秀賞の人にメダルをあげところ、思った以上にすごく喜ばれた。
部屋の目立つところに飾られているくらいだから。
このメダルだが、俺が大きさを伝え忘れるというチョンボをしたせいでサイズがお皿くらいなっているのと、大きさが大きさ故に緻密で芸術性の高いメダルになっている。
というか、金だけでなく色も華やかであり、想像していたメダルとは掛け違った存在である。
で、そのメダルを授与しただが、今回は四人ほどが優秀賞に選ばれた。
まあ特に一位じゃないとメダルはあげないというルールじゃないし。
作品が良かったらメダルを授与する感じにしたのだ。
そのメダルのデザインだが、表にお城の絵で裏に国旗になっている。
で、もしこれがスポーツなら走っている絵が表にして、と色々デザインを作っているようである。
専門の職人さんを二十人ほど雇って、色々なデザインを作っているとの事だ。
とはいえ、メダル専門の職人さんを常時二十人雇っても、貴族たちへの褒美に比べると格段に安いらしい。
で、せっかくなのでマルガのプレゼント用としてマルガと双子の赤ちゃんをデザインしたメダルを作って欲しいとお願いをした。そう記念メダルである。
メダル授与から半月後。
やっと満足の出来る模型が出来上がったので、大工の棟梁を呼んで模型を見せることになった。
せっかくの機会なので、先日の優秀賞に選ばれた作品も見せてみることにした。
ちなみに優秀作品を作った人には事前に作品を借りて、大工に見せることを告げておいた。
で、許可はモチロンのこと、本人も来たがったが、今回は神社のことだったので後日、時間を取って貰うようにお願いをすることを伝え、引き下がって貰った。
で、大工の棟梁に神社の作品を見せ、更に周りを木で植えて荘厳さを出してもらうなど、意見を出して話を煮詰めていく。
案の定というかヤッパリというか手を洗う手水舎や神社を守る狛犬、そして日本では定番のお賽銭箱など特殊な物に対して大工の棟梁は興味津々だった。
特にお賽銭箱の作り方や効能など色々聞かれたので、「神さまもタダじゃ働いてくれないんですよ」と伝えると納得したような納得できないような微妙な顔をしていた。
他におみくじやお守りなんかも作りたかったが、まあこれは追々でいいだろう。
教会としても寄付だけよりも資金源があった方がいいし。
まあこれが汚職の苗床になったら目も当てられないけど。
▽
それから一年後。
温泉的孤児院も出来上がり、経営が順調にいっていると報告があがっている。
城でみんな楽しみにしていた保養所もどうやら良さそうであり、早くもリピーターの順番待ちが出ているとのことだ。
まあ俺たちは王族なので、比較的簡単というか早く予約が取れるようになっている。
過ごす場所も専用で少し格調高し、何よりも人数が少ないからね。
本当、こういう時って権力バンザイだ。
ちなみに以前マルガの作っていたログハウスは現在建設待ちである。
完成まであと一年後らしい。
今回は流石に無理だったが、来年はマルガの作ったログハウスで過ごすことになりそうだ。
あと、神社の方も出来上がった。
あっちに教会のお偉いさんが来て見学し、教会とはまた違った雰囲気が大層気に入ったらしく、違う地域にも同じような建物を作ってもいいかと聞いてきたので、こっちにも何の問題もないので国が問題ないと判断したらいいですよと返事をした。
ここらへんはいくら俺が王族といっても勝手に返事をし、後々問題になっても困るから国に対応を求めた。所謂丸投げということである。
あと他にも王族の作った模型をレストランや宿屋にする計画も着々と進行している状態だ。
無論、模型を作成した本人の許可は得ているというか、あっちにいった際に進行状況を見てきて欲しいと頼まれており本人たちの期待値も相当であろうと考えられる。
で、模型を作成した本人たちの要求は、ただ一つ。一番最初に利用したい! とのことだった。
何と言うか自分で作った模型が実際に建ったことが嬉しいらしく、また楽しそうに新たな模型作りをチャレンジしている。
で、それに触発されたのか、他の王族たちもその自慢話を聞いて燃え上っているので、しばらくブームは続きそうである。
で、そこから更に二か月後。
予約したというか予定した日になったので、温泉的孤児院の視察と保養所に出発することになった。
今回は、休養も兼ねて(特に休養するほど働いていないが)向こうに半月ほどゆっくり過ごす予定である。
で、今回あっちに行く面々だが、俺たち一家と王妃が一緒に行くことになっている。
王や王子も来たがったが、残念ながらお仕事である。
で、王や王子には悪いが、もう行く一週間前から、その話題で盛り上がっている。
で、出発日当日。
なぜか今回、将軍(家族同伴)も一緒に行くそうだ。
警護という名の名目で。
将軍一家は、全員武勇に優れているというので、警護はそれだけみたいである。
どうやら将軍も家族サービスをしたいらしいというか、俺には家族サービスと言っていた。
まあそれで、行く人数が少ないから多少の融通が利くから有難いが、将軍がそれでいいのか不安になる。
▽
王都から目的地まで、約三日の馬車の旅である。
双子の赤ちゃんたちはともかく、マルガにとっても初めての長旅だ。
一応、何かあってもいいように色々と準備はしてきた。
マルガには、俺の準備が大げさ過ぎて少し笑われてしまったが、万一の準備不足で泣くより何事もなく苦笑の方が全然マシである。今回は双子の子どもたちもいるんだし。
そんな今回の旅の旅団だが、俺の一家で馬車一台。
お世話部隊で一台。お土産用に二台(幌馬車)。予備で馬車一台。
そして将軍一家の騎馬4人といった編成になっている。
ちなみにお土産用の馬車に関しては、王城から持って行くお土産とあっちから持って帰るお土産になっている。
こっちから持って行く物は、俺が毎日少しずつ貯めこんだ調味料がほとんどである。
毎日毎日、何も考えずに目いっぱい調味料を出して貯めこんでいるのだ。
ちなみに研究開発をしているこっちでの調味料だが、俺のスキルで作りだす調味料のレベルに近くなった物も出来上がってきたが、まだ開発中なので量がまだまだ少なく、一般には普及していない。
あっちには時折、王城で出来上がった調味料を送っているが、今回俺の調味料を送るのは初めてである。今回せっかくだから俺があっちに持って行くことになったのだ。
で、今回はその調味料と王城で作った調味料を使った現地産の料理の味を食べ比べるという、ちょっと楽しみにしているイベントもある。行くまでにも三回も宿に泊まってお土産や名物料理も物色出来るし楽しみいっぱいである。
さて、みなの準備も出来たし出発しよう。
今日は、天気も良く澄み渡った青空だし、旅行日和である。
旅行当日に体調を壊す人もいるが、今回それもない。
よし、出発だ!




