26.出産
王城へ戻った俺は、早速神社についてのことを会議にかけて貰うようにお願いをした。
で、会議の結果は、とりあえずやってみようとの事だった。
教会にも連絡をしたら、特に問題の部分もないですし、協力をしてやってみましょうとの事だ。
ただ神社に関しては、温泉的孤児院が完成をした後でも特に問題ないので忘れないうちに話を通すことにしただけのことである。
とはいえ、マルガの出産も近いので、王都から外には出たくないというのが心情である。
結果、王都から出ずに自分の仕事が出来るということで、先ほどの神社の模型を作ることにした。
で、その模型を何で作るか迷ったが、中学生の時に夏休みの工作で、割りばしを使って家を作ったのを思い出したので、廃材を割りばしサイズにして貰って、現在神社の模型を作っている。
そんな俺の作業風景を見たマルガを含む王族たちが、俺の仕事風景が楽しそうに見えたのか、俺の模型作りを真似て各々家などを作っている。
さすが王族だけあってか、はたまた色々な城に行っているのか中々センスがいい。
で、一部の人が外観だけで物足りなくなったみたいか、粘土まで使って、内部の家具を作るくらい凝り始めたのを見て、他の人まで内部にまで詳細に作り始めている。
もはやティータイム時には、この話で場がおおいに盛り上がっている状況である。
とはいいえ、王族の暇潰しに金がほとんどかからない模型作りをしているから財務大臣からは感謝されている。
もともと大して王族たちは贅沢をしていないが、やることのない王族はよく外出をしていたのだ。
無論、警備やら外出費もただではない。
と、そこへ俺がやって来て、パターゴルフやらスゴロクやらで一気に出費が減ったのだから文句が出るはずもない。更に出費が減った。
まあ今後、保養所は出来るが、王都から近いし決まった場所なので維持・管理費はともかく、宿泊費やらはかからない。
まあ建物やら何やらで出費をしたが、新たな財源を確保したと思えば長い目で見ればプラスだろう。
まだ儲けが出るとは確定していないが。
と、話はずれたが、皆各々の部屋で工作を楽しんでいる。
そしていつの間にやら発表会なるものが出来上がっていた。
ちなみに発表日は、一か月後になっている。
優勝者には、俺から新作の名物料理を一番初めに食べられる栄誉がある。
まあその日の晩飯はその新作料理なんだが。それはそれ、これはこれである。
王族としては普段表彰する側なのだから、たまには表彰されたいと思うのが人間の心理である。
とはいえ、せっかくだからメダルでも作るか。金メッキの。
そういえば、こっちはそういったのないんだっけ。
軍人ならバッチかなあと日本を知っている俺だからこそ思うのだが、こっちではそれらしきものを見たことないな。
なら、せっかくだからこっちの世界で、メダルなんかを作ったらいいかもしれない。
褒美に領地やら高価な物品だと金もかかるしな。
それに王族やら大貴族なら、そんな物なんて余っているし。
それなら名誉でもあげたらいいんじゃないか。
何と言っても懐にも優しいし、名誉なら盗まれたり誰にも盗られないし。
よし! ちょっと王さまの所に話を持って行こう。
その結果。すごく感謝された。
なら、一か月後の模型作りからメダルを授与しようということになった。
新作料理にメダル。よし! バッチリだ。
ただメダルのデザインは、面倒だから丸投げにした。
とりあえず片面を国旗にしたらと助言だけした。
まあその結果、どうなるかは知らないが。
ちなみにこの国の国旗は鷹と太陽をモチーフにしたもので、なかなか格好いいのだ。
で、とりあえずメダルの件は片付いたので部屋に戻って、また神社の模型作り。
隣の作業机で、マルガもログハウスっぽいのを作っている。
うむ。なかなかセンスがいい。
せっかくだから、あっちの家(別邸)にしてもいいかなと思う。
マルガにその事を言うと、新しく作り直していた
どうやら彼女の心に火を点けたらしい。
他の王族の作った物も建てるのもいいかもしれないな。
個人の物じゃなく、公共の建物として。
美術館やら図書館風に少し手直しすれば大丈夫なのもあろう。
レストラン向けのもあったし。
……と、まあ根を詰めるのもよくないので、庭に散歩に行く。
マルガとのんびり歩いても彼女の頭の中は家のことでいっぱいらしい。
子ども部屋をあーたらこーたら楽しそうに話している。
まあ、楽しそうだからいっか。
▽
こうして温泉的孤児院の見直しやら神社の模型を作ったり、名物料理の発表をしたりした。
そして、とうとう待ちに待った日がやってきた。
「おぎゃー、おぎゃー」
「おめでとうございます。元気な双子の赤ちゃんでございます」
向こう(元の世界)で半分あきらめていた結婚。
しかも可愛い奥さんに自分の子ども。
「あなた、私たちの子どもですよ」
「うん……うん、マルガ、ありがとう……」
俺は、何時の間にか声を詰まらせ泣いていたようだ。
こっちに来て、特に何の苦労もしていないのに、自分の子どもとマルガを見たら自然と涙を流していた。
「婿どの~」
走ってやって来た王様も泣いていた。
あ、王妃も王子も泣いている。
家族から愛されていたマルガだったが、容姿の面から本人が結婚を諦めていたのだった。
それが俺と出会い、結婚だけでなく双子の赤ちゃんが無事に産まれてきたのだから、愛する家族としてもひとしおの感慨なのだろう。
王さまと王子、俺で抱き合い、王妃がマルガの傍で赤ちゃんを抱っこしながらあやしている。
しばらくして助産婦さんが双子の赤ちゃんを抱っこしてこっちに来た。
どうやら初抱っこらしい。
助産婦さんから赤ちゃんをこわごわと受け取り少しあやす。
そしてすぐ返す。
抱っこは人形で練習したんだけど、ちょっと怖かった。
いやかなり怖かった。
間違って落としたら大変である。まあ絶対に落とさないが。
とりあえずまだ無理だ。
よし! 後で、もう一度練習だ。
マルガやら王妃には笑われたけど怖いものは怖い。
大事な物ほど怖いのだ。
練習した後でまた来て抱っこをしよう。
な、王子(同志)よ。




