25.思いつき
マルガのお腹もすっかり大きくなった。
早いもので、出産予定日の三か月前である。
で、子どもが生まれるというので最近、部屋を移動した。
王城に空いていた部屋を改築して移動した感じである。
で、新しい部屋の違いは具体的に言うと、部屋を広くして防音の為に壁を厚くした。
他にベビーベッドなども置かれ、いよいよ俺も親になるんだなと実感してくる。
で、温泉的孤児院の下準備も整ったことだし、行くことになった。
今回は無論、歩きでなく馬車の旅である。
マルガの出産のこともあり、ゆっくり物見遊山などしていられないからな。
向こうで必要な事をチェックして温泉的孤児院も最終段階になる予定である。
道中、新たに建設された宿泊所をチェックし、料理などの味を確認する。
で、そこではたと気付いた。
名物料理しか用意していないことに……。
とりあえず、近隣の住民に名産があるか聞いて、無ければ木彫りの動物でも作って貰おうと考えた。
まあ木彫りの動物は一時的な物だし、彫ってくれる人がいなければ王都から木彫り職人でも呼んでしまえばいいかなと思った次第だ。
その他に、この辺りの昔話の本や木刀でもいいし。
木刀にここに村の名前を彫れば立派な土産になると日本で教わったからな。
製造場所は王都だけど仕方ない。よくある事だ。
日光にある牧場の土産店に北海道で製造されたチーズケーキがあるくらいによくある事だ。
微妙に解決したような解決していないようなモヤモヤした気分を残したまま馬車は温泉地へと走り出す。
少しずつだが、整備されてきた道を見ると少し感慨深い。
時折、汗をかきながら、道を整備する人を見かけると頭が下がる思いだ。
で、少しの感動と沢山の居眠りをして俺は保養所……間違えた、孤児院を建てる現場に着いた。
見たかんじ、もう建物自体はあらかた完成をしているようだ。
▽
で今、建物をチェックしてみると外観工事は終わって、内装工事をしているといった具合だ。
孤児院、保養所、宿泊所と順番に見て行く。
特に温泉設備の進み具合をチェックする。これがキモだからである。
で、見たところ入浴設備は完成をしていた。
後は、風呂桶や脱衣所の内装を少しいじれば問題ないくらいだ。
チェックが終わったので、のんびりお茶を飲む。
まあ俺も王族で一応責任者だけあり、現場の責任者が挨拶もとい報告にくる。
あちらは緊張をしているので、鷹揚に返事を返す。
俺的にちょい前まであっちの立場なので、気持ちはよく分かる。
ちょっこっとの作法のミスくらいは見て見ぬ振りをする。
で、報告も終わったので王城に変えることにしたのだが、ある事をふと思いつく。
『神社』
そういえば、こっちでは神社というのを見た事も聞いたこともない。
結構温泉地の近くに大きな神社とかあった気がする。
せっかくだから、温泉の近くに建ててもいいんじゃないかと思う。
無論、地球の神さまでなくこちらの神さまを祀る。
まあ俺も素人だから、神社のしきたりなどほとんど知らない。
しきたりは知らないが、よく神社にお参りに行ったので外観は知っているというか覚えている。
少し罰当たりだが、ここに神社を建立するのもいいかもしれない。
何と言っても観光の名所にもなるし、こちらの神さまも祀られても祟られることはなかろう……たぶん。
で、この案件が通ったら、教会にお願いをしよう。
何といってもシスターを巫女にしないといけないから。
そうそう、牧師は神主さんになって貰う予定だ。
同じ神さまだし、問題なかろう、たぶん。
ただ服が若干変わるだけである。
そして、現場の大工さんたちの仕事がちょっとだけ増えるだけである。
よし! その事を忘れないようにメモを取り、王城に持って帰ることにしよう。
ということで、マルガの待っている王城へと帰るとするか。




