23.かえりみち
あれから湖を見学して王国に戻った。
マスはいたし、シジミは見かけなかったがいるとの事だ。
うむ。味噌汁のレベルアップは間違いない。
シジミの味噌汁、あれはいいものだ。
それと舟の利用方法を聞いてみたが、漁と移動にしか使わないとのことだ。
どうやら観光(景色を眺める)やらデートのような娯楽には使っていないらしい。
うし! 観光の方だけ教えてデートの方は教えないでおこう。
そう、格差社会を生むだけだからな。
こっちの世界にはバレンタインデーもなければクリスマスもない。
『非リア充』と『男の懐』に優しい世界だ。
幸い今の俺には、マルガという妻がいるからいいものだが、日本に居た時は彼女のいない非リア充時代が結構多かった。
特に学生時代は、非リア充の権化といってもいい。
そういったイベント時は、部屋で時代劇三昧。
時代劇は優しい。
江戸時代には、そのようなイベントなどなかったのだ。
鎖国万歳。
家康どの、あなたは非リア充の権現だったのですね。
ありがたや、ありがたや。
それに引き換え、ペリーさん。
黒船と一緒に宜しくない文化を持ってきちゃて。
クリスマス、別名苦しみマス。
彼女のいない時には、ロンリー気分を。
彼女の居た時には、財布への打撃を与えてくれましたね。
しかも隔月にて。
義理チョコでお返しが地味にきつかったバレンタインデー。
貰えなかったら嫌われているじゃないか称号で、貰ったら倍返しで懐に厳しいホワイトデー。
義理チョコ散財で真っ白になったからホワイトデー。
で、もともとチョコよりアンコが好きだった俺はチョコを貰っても食べるのに苦労した。
そういえば、こっちに来てからアンコ食っていないな。
ていうかアンコ見ていないし。
そう考えたら。
アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい。
アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい。
アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい、アンコ食べたい。
こ~んな気持ちになった。
アンコ、あれは良いものだ。
基本チョコと違って値段がリーズナブル。
そしてイベントに登場しない。
で、甘味がソフト。
あんぱん。
小倉とマーガリンORバターのパン。
おはぎ。こしあんと粒あん。
小豆ミルク。
おしるこ。白玉を入れるのもいい。
甘太郎焼きにタイ焼き。
クレープにのっけるのもありだ。
幸いチョコの作り方は知らないが、アンコの作り方なら知っている。
小豆さえあればいける。
いや、それどころか俺のあげた物の大半は作れる。
デザートいけるで。
デザートか。
あ、それなら温泉地域でデザートで思いついたのがあった。
プリンだ。
あれなら俺でも作れる。
ただし蒸しプリンのみだが。
ぶっちゃけ作ったことあるのは茶わん蒸しだが、プリンもいけるはず。
茶碗蒸しとプリンと温泉饅頭で名物いいんじゃね?
茶碗蒸しのダシをシジミにして多分いけるだろうか?
マスの切り身と饂飩を入れて名物料理にしたらいけそうだ。
料理長に試作品を作って貰おう。
で、孤児院で料理屋を経営するのもいいかもな。
そして全部の料理名の前に『元祖』を付けるんだ。
なんかテンション上がってきた。
▽
王城への帰り道。
もちろん歩きでなく馬車で帰っている。
もう歩きはお腹いっぱいである。
帰りの馬車内では、ほとんど寝て過ごしていた。
書き物をしていたら気分悪くなるし。
話をしていればいい? オッサンたちとは別である。
ハルバー将軍は馬に乗ってハイヨーって帰ったし、職員さんはまだ向こうで見ている。
だから馬車内では今一人でロンリー。
ガラガラと鳴る音と心地よい振動が眠りを誘う。
で、一応馬車と歩きで泊まる箇所をピックアップしておく。
歩いて泊まる宿が各駅で馬車が急行みたいな感じで村の再開発をしていけばいいんじゃないかな。
一応、そんな風に意見書を出して決めるのは国に任せよう。
これ以上、仕事増えるのはイヤだし。
温泉的孤児院経営だけで十分だよ。
しかもオーナー的存在が望ましい。
大きな経営方針的な何かを指針して、細かな部分は現場の人が作っていく感じの。
で、普段ノンビリしていたい。
上がのんびりした方がドッシリしていると勘違いされるからな。
とりあえず昼は馬車で寝て、宿で意見書と料理についてのアレコレを作成する。
微妙に生活リズムが崩れそうになりそうな三日後。
無事に王都に着いた。
馬車で寝ていたので微妙に身体が凝っているが、俺のなんちゃって回復魔法で治るから問題ない。
で、王城に着き早速三階の我が家に行く。
報告書は世話役のバリンに渡す。
俺の住処は何といっても王城である。
緊急の用なら呼び出されるか部屋に来るし、何の問題もないのだ。
むしろ王様から謁見は明日でいいと言われたくらいだしな。
何といっても王城のお偉方は、妊婦であるマルガを大事にしているからな。
マルガに俺のいない約三週間の報告を聞き(マルガはどうも報告したがる癖がある)、途中途中に質問をし(これは大事で、きちんと聞いてますよアピールである。夫婦円満の秘訣は妻の話をおざなりにしない事である)お腹の子とマルガの体調を聞いておく。
で、お腹に回復魔法をかけた後、のんびりお茶を楽しむ。
お茶を楽しみながら報告を聞けばいいじゃないかと言われそうだが、報告したがる人にとってはお茶をしながらなど報告を聞くなどそんな悠長なことを言ってられないからな。
俺からすると、報告も世間話も同じレベルなのだが、それを言ったら大変なのである。
俺の親父がそれを理解出来ないから、いつも怒られていた。
しかも理解出来ないでなく、理解をしようとしないから年齢を重ねる度に立場というか扱いが雑になっていった。
俺はそれを横で見ていたから同じ間違いはしないと誓ったので今のところ問題ない……はずだと思う。
マルガはその日ずっと話ていた。
途中に何度かループした部分があったが、特に問題ない。
すでに母親で慣れている。
マルガが疲れないよう、何度か回復魔法をかけた為か舌好調だった。(誤字でない)
で、翌朝。
何というか旅行に行く前のマルガに戻っていた。
昨日の報告したい病は無事完治したようである。
朝食をとって旅行の話を少しする。
温泉や名物料理やデザートなど。
俺と結婚するまで、あまり外に出たがらなかったマルガには新鮮なようで温泉や湖のことを色々質問された。
ただしデザート系の方が多かったが。
マルガからデザートを所望されたので料理長を呼ぶ。
王族であり有名な俺が厨房に行くと色々面倒なので呼んでいる。
ちなみに俺の部屋には台所がある。
俺が作るのではなく、ここで料理長が試作品を作るからだ。
当然、俺が作らないから材料などはない。
料理長に必要な物を準備して貰い、ここで作るから。
久しぶりに料理長を呼ぶと、五分もしないうちに部屋に来た。
息を弾ませながら嬉しそうに。
今回の料理を教えると、王妃も呼ばないと後が大変とマルガと料理長が口を揃えて言うので呼ぶ。
「デザートですか。とても楽しみです」
侍女に呼びに行って貰ったところ、本当にすぐに来た。
本当に嬉しそうな顔をしながら。
まだ準備も出来ていないのに。
「デザートを作っているのを見学するのも楽しいですから」
そんな感じでデザートの味見をしながら、旅行の話をしている。
まったりとした時間である。
で、作ったのは
プリン(カラメルソースも作った)
小豆トースト
小豆ミルク
この三点である。
特に小豆ミルクは喜ばれた。
飲み物がデザートというのが珍しいらしく、二杯おかわりをしていたくらいだ。
もちろん果物のジュースはあったが、サッパリしたものだから甘いもの感覚でいからね。
王様にも持って行ったところ気分転換にちょうどいい非常に喜ばれ、しばらく三時のおやつになりそうな勢いである。
で、旅行の報告は明日とのこと。
甘い物を食べながら、話を聞こうとのことである。
まあ孤児院の件は火急な用事でも国が左右するような案件でもないからね。
のんびりやって、国から多大な援助でもしてもらおう。
まあ保養所の件もあるから問題なかろう。




