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異世界で囲われて  作者: するめいか
22/27

22.ビジョン

 三人のオッサンは約十日間旅をし、やっと目的地に着いたのだった。

 毎日、軍の演習をしているハルバー将軍と違い、一般人の俺と職員のダラネさんはかなり疲れている。

 無理はしていないが、慣れていない所で休むのは精神的に疲れるのだよ。

 マルガにも会っていないし、心のゆとりが欲しい。

 そんな訳で俺はのんびり温泉に浸かって疲れをとりたい訳よ。



 その足で早速、現場の様子を聞くことにした。

 工事現場の監督曰く、湧き出たのは山奥で熱湯とのこと。

 何でも山の麓にあるこの地まで(山奥まで歩かないよ、もちろん)引くらしい。

 結果、現在工事中とのこと。



 俺の当初の目論見はリーマンショックの時のように潰えた。

 心が痛い。

 まるで俺の株が凍結されたあの頃のようだ。

 ちなみに俺は現物派だから凍結しても問題ないのだ。

 まあ、ここに来たから未来永劫凍結され続けることに違いないが。



 心を落ち着け気を取り直すことしばし。バシバシ!

 で、どんな湯が湧いたか聞いてみることに。

 やはり温泉というのは湯の質が大事だからな。

 で、専門家に聞いたところ、無色透明で上質な温泉らしいとのことだ。

 ふむ。専門家が言うのだからきっとそうなのだろう。



 ちなみに俺は発案者だが、実のところ大して温泉に行ったことない。

 いつもお世話になっていたのは温泉ならぬ温泉入浴剤である。

 温泉旅行には数年に一度行くくらいである。

 前回行ったのは五年前だったか。

 (パワースポット巡りの時は行かなかった)

 でも入浴剤は結構変えているので多少は詳しくなっているが。

 匂いとかメーカー名とか、ただし効能効果はよくわからない。



 いわば温泉に関してはレベルの低い素人なのだ。

 素人同然ではない、全くの素人である。

 だからよくわからない部分は職人にお任せである。

 ぶっちゃけ温かいお湯と温泉卵と温泉饅頭があれば満足である。

 それと温泉が飲めたら言うことない。

 ちなみにここのは飲用可とのことである。

 素晴らしいというか、さすが選ばれただけある。



 源泉を山まで見に行かないが、街を作るところくらいは見ることに。

 で、近くに湖があるというので眺めてみる。

 見に行くのは後日である。

 マスはいるかな?

 マス寿司食べたい。

 俺の湖を見た感想である。



 ちなみに俺の湖のイメージは、あとスワンボートくらいしか思いつかない。

 あった。シジミが取れたらいいな。

 自分で言うのも変だが、知識が貧弱過ぎる。

 食べ物とボート。

 俺のレベルはそこいらの幼稚園児レベルである。

 ただ琵琶湖のある滋賀県の幼稚園児には負けるであろう。









 着いて早々お仕事である。(温泉目的の)

 さすがにもう疲れた。精神的にしんどい。

 というか、今日じゃなくても良くね?

 明日ゆっくりして明後日以降見学にした方が良くね?

 早速、その旨を現場担当者に伝え簡易宿舎に行くことになった。



 一応、俺というか王族やら貴族が来るので領主さんくらいの屋敷が建てられている。

 建物に入ると、新築の匂いがしていい感じである。

 こうなると畳が欲しいが、作り方がわからない。

 そもそも畳は井草から作るという知識はあるが、井草がどのような草かわからない。

 まあ一般人に井草がどれか? と聞いてわかる方が珍しいと思う。

 とはいえ、わからない尽くしである。



 執事さんに部屋を案内される。

 案内された部屋に備付けられていたのはベッドとクローゼット、そして机と椅子くらいだ。

 ビジネスホテルみたいである。

 まあこっちをメインに住む訳じゃないから特に気にしない。

 早速ベッドの寝心地を確かめるという言い訳のもと夕食まで寝ることにした。



 翌日は休日にして貰った。

 朝、起きようとしたのだが歳のせいかとてもだるく起き上がれなかったのだ。

 よく三十代は若いといわれるが、他人は他人、自分は自分である。

 中学二年から帰宅部を続けてきた俺に、そんな体力はない。

 平日三時過ぎに学校が終わり、四時には毎日きちんと時代劇アワーを見ていた俺に体力など備わっているハズもなかろう。

 よって起き上がれないのは道理なのである。



 そんな俺だから、過労死はしないと断言出来る。

 まあ俺みたいなのが転移者なのだから、せっかく王族になっても俺の内政の知識関連では大して発展しないだろうと思っている。

 下手に首突っ込むと被害が出るかもしれん。

 色々理由付けは出来るのだが、実際はこっちに来てまで慌ただしく生きていたくないのだよ。



 そうだ。革新しないで保守的にいこう。

 お尻を拭くのが葉っぱでもいいじゃないか。

 痔にならなければさ。

 というか、結構柔らかい葉っぱだから安いトイレロールよりも尻触りがいいんだよね。

 ちなみにサイズは男性の手のひらサイズで専用に栽培されているのだ。



 とまあ、話はずれたが本日はお休みだ。

 久しぶりに一人でのんびり出来る。

 で、ここで俺の真面目な部分が何故か発動する。

 よくわからない時に発動する困ったちゃんである。



 今回は、旅で感じたことをノートにとったのをまとめてみる。

 俺はすでにオッサンだから、ある程度まとめておかないといつの間にか脳の肥やしになってしまうのよ。

 すでに幾つか肥しになっているかもしれんが。

 そんな訳でまとめているのだが、その時の気分で書いているものだから大事な部分が抜けていたりとかなり大変である。

 城に戻っていたら幾つもクエスチョンマークがあっただろう。

 ……。これでクエスチョンマークが二つめだ。



 途中、途中悩みながら昼くらいまでノートを手直しした。

 これでどうにか説明出来る。

 まあ昼のごはんを食べたら一気に俺の真面目な部分がしぼんだのだが。

 やっぱりごはん食べてお腹いっぱいになると人間だらけるよね。



 で、昼ごはんを食べ、夕方まで昼寝をしたら一日終わってしまった。

 ちなみに夜は、旅したオッサン三人で王城からここまでの双六を作った。

 帰ったらみんなで遊ぶ予定だ。

 ちなみに凝りすぎて、ゴールまでの所要時間五時間ほどになったのは些細なことだ。








 翌朝、朝食を摂ってのんびりして十時くらいから現場を見ることにした。

 あんまり早くから行くと現場の人間が早起きしないといけなくなるからね。

 見学予定時間は十時から十二時まで。

 お偉いさんが長居すると仕事は捗らないから基本短くである。



 現場に行くと棟梁が案内をしてくれた。

 工事の工程やら作業方法なども解説してくれているが、基本がわからない俺にはサッパリだ。

 他の面々も頷いているが、きっとわからないだろう。たぶん。

 まあ、ただ半年近くかかりそうな事がわかっただけ収穫である。



 これから一年くらい見積もれば大丈夫だろう。

 こちらとて孤児院のこともあるし、急ぐこともない。

 子どもたちも十四歳になったからって絶対に働かなくてはいけないという法律もあるわけじゃないし。

 今後六十過ぎまで働くのだから一年や二年くらい延長しても問題なかろう。



 実際、孤児院に赤ちゃんから十三歳の孤児が八百人いるのだが、十二歳と十三歳の子はいても百人未満だろう。

 騒ぐほど大層な数字でもない。

 二年くらい養ってあげるさ。

 王国がね、税金でさ。

 だからきちんと管理運営をやるのだ。



 主に職員さんがね。

 まあ俺も手伝うけど、あれよ。

 権力的な部分で多少バックアップするだけよ。

 いきなり俺が出てきても困るでしょ、みんなが。

 徐々に慣れていけばいいのよ、主に俺が。

 目指せ三年で顔見知り!



 のんびりし過ぎだって?

 急な変化は反発があるから、徐々に染み込んでいけばいいんだよ。

 例え温泉的孤児院が完全に軌道に乗るまで十年掛かったとしても、百年、二百年先まで盤石なら歴史が短いと感じるだろ?

 まあ最悪、俺が定年と考える六十くらいまでに完成に近いところまで持っていければいいと思っているし。

 そう考えると、あと三十年か。

 ほら『目指せ三年で顔見知り』作戦なんて短いもんだ。

 ふっふ~ん!

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