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異世界で囲われて  作者: するめいか
19/27

19.孤児院

 まずは孤児院の今置かれている現状である。

 庭で遊んでいる子どもたちは、男女共に同じ形をした服である。(乳児はもちろん別として)

 クリーム色をしたシャツに茶色のベスト。

 それに茶色のズボン。



 ふむ。汚れが目立ちにくい。

 何でも同じ服にするとお金がかからないし、お下がりになる。

 なるほど、確かにそれは一理ある。



 でもそれでいいのか?

 爺さんよ。

 あっ……爺さん、着るものなど気にしていないなかったな。



 そういえば俺も全部、使用人が用意してくれるので俺も自分のファッションなど気にしなかったな。

 とはいえ、俺も普段、ユニちゃんの無難路線だったから……爺さんと同じじゃん。

 そうか、興味がないから盲点なるんだな。

 戻ったら、考えよう。

 というか普段、服を用意してくれる人に相談してみよう。

 残念ながら俺も爺さんと大差ないわ。








 衣の次は食である。

 孤児院の食事は1日2食である。

 とりあえず普段出されている食事を用意して貰う。

 いざ実食なり!



 うむ。食べて確信。

 貴族だけでなく一般の食事もまた味が薄い。

 もうこの世界全体の食事の味が薄いのかもしんない。

 素材の味が前面、いや全面に出ている。



 で、野菜は品種改良されていないからか、栄養面はありそうなんだけど、苦みやら青臭さなど結構くるものがある。

 特に出されたトマトが・が・が。

 最近この年になって食べられるようになったのだが、また一気に苦手になった。

 おひたしにしたほうれん草なども。

 これなら三倍野菜を摂るんで勘弁して下さいってな感じ?

 せめてもうチョイ塩ふったりして食べやすくして欲しい。

 ちなみにトマトに砂糖をつけて食べるのは邪道だと思っているオールドタイプである。



 次に肉を食べたのだが、これは本当に肉なのだろうか? と疑問に思ってしまった。

 何か味が全くしないんだけど?

 獣臭いのを覚悟したらまさかの味なしだ。


 わかった!


 これ沸騰したお湯で肉をぐつぐつ煮込んで味を抜いた感じだ。

 旨みのあるスープを捨て、旨みや栄養が抜けた肉を食べている。

 ふむ。クニャクニャしている。

 食べていて苦痛である。

 せめて醤油をたらして食べたいところだが、我慢して飲み込む。



 魚は? えっ煮干し?

 お皿の上にポツンと煮干しが三つ出てきた。

 でも煮干しか。

 ダシが出そうだし、いいんじゃないか?

 ただそれを単品で出されたのはいただけないが。




 ちなみに主食は、パンか米である。

 主にパン9:米1の割合で出るとの事である。

 この世界は、あんまり米の人気が低い。

 何といってもおかずが、かなりの薄味だからなぁ。

 しかも品種改良されていないご飯に超薄味のおかず。

 やっぱ塩気がないとご飯に合わないよね。

 と、いうかどうにかしたい。

 






 食事が終わったので、最後に住んでいる孤児院を職員の方に案内をしてもらう。

 はじめに普段子どもたちが生活をしている部屋に入る。

 で、部屋の中を見て驚いた。

 部屋にあるのはテーブルと箪笥だけだ。

 ふと疑問に思ったことを職員に聞いてみた。



「子どもたちって、天気の悪い日は何をしているんですか?」

「はい。部屋の中を元気に走り回っていますよ」



 おいおい。

 せめて積み木くらい置こうよ。

 えっ!? 積み木って何かって?

 


 知的玩具は必要だよ。

 特に小さな頃から、たくさん手を使うといいんだって誰か言ってたよ。

 それを踏まえてブロックなんかもいいね。

 そういえば俺がまだ小さい頃、箱根組木細工パズルを買って貰って遊んだ記憶がある。

 それに近い物なんて作れないだろうか?

 あと知恵の輪。

 微妙に形を覚えているから作れないかな?



 あと、外にも何の遊具もない。

 せめて平均台くらい置こうよ。

 あれ簡単に作れてバランス感覚が養える優れものだよ。



 他にも本当は、古タイヤを半分埋めて跳び箱みたいなのを作れたらいいんだが、ゴム製品なんてないし。

 でも跳び箱くらいなら作れそうだ。

 俺には無論作れないが大工さんなら作れるだろう。

 ちなみに俺は日曜大工もダメだよ。

 不器用ですから。

 ついでに鉄棒でも作ってもらおう。

 そうなるとすべり台やシーソーも欲しいね。

 忘れないようにメモをしておく。

 最近、書かないとすぐに忘れちゃうのよ。





 で結論。

 あんまり美味しくない食事。

 ただ残念なことに、それがこの世界で当たり前で、食べることにさほど興味がないので問題ないといえば問題ないのだが、やっぱり美味しいもの食べたいじゃん。

 お腹が膨れるだけでいいの?

 よくないでしょ! 今でしょ。



 ぽっちゃり覚悟(料理長がね)で、王宮の料理人に限られた食材で美味い物の研究をして貰おう。

 一度レシピを作りさえすればずっと使えるし。

 ふむ。

 王宮レシピ本でも作って売り、儲かったら孤児院の経営費用に充てればいいな。



 あと、風呂もなかった。

 夏場は井戸で身体を洗い、冬は部屋を温かくして濡らした布で体を拭く。

 そりゃキツイね。

 で、冷たいオシボリで体を拭くんでしょ?

 絶対に寒いし、早く服を着たいから衛生面的に問題ありだって。



 で、当然のことながら親の愛がない。

 あと職員の人数にも余裕がないからどうにかしたいだって。

 ふむ。

 どうしたもんかな。











 まず、ここだけの問題じゃなく全体の問題だから一気に全部の孤児院合体で学校兼住処を作ることを想定した方がいいかな。王様と宰相に相談してさ。

 で、そこを建てる場所を探した方がいいと思う。

 もうこの際だから、ごちゃごちゃしている王都じゃなくてもいいんじゃね?

 土地も空くし。



 せっかくだから温泉ある所に作るべ。

 で、そこに引っ越そう。

 この際に保養所作ろうよ。



 福利厚生施設は大事だ。

 前の会社にもあったが行っていないけどね。

 東京の会社で施設が滋賀県だよ。

 せめて長野県にして欲しかった。

 周りの人? 行ったっていう人は部長クラスしか聞いたことない。

 こちとら交通費だけでヒーヒーよ。

 いくら一万近く安くても交通費で全て吹っ飛ぶよ。



 こっちでは王族になったんだから少しくらい贅沢してもいいよね?

 バイブルだって売れているし、調味料も提供しているし、それくらい問題ないでしょ。

 温泉が出る場所に保養所を作ったらプールなんかも簡単というか水のことを考えずに作れるし、温泉卵も作れるし。

 さらに温泉饅頭も作れる。あぁなんて素晴らしい。

 俺の夢は無限大だ。

 予算も湯水の如く使って経済を回そう。バイブルバブルで好景気だ。



 早速、温泉を探すのだ! 諸君。

 王国一大プロジェクトだ。

 その為の大きな一歩である温泉を探そう!

 保養処だ! 休養だ! 家族旅行だ!



 ん? 目的が変わってきている?

 いいんだよ。

 人生に寄り道は必要なことだ。

 場所というか建てたい立地は決まった。



 次は箱だ。

 旅館っぽいのを作ろう。

 孤児院には八百人も居るし。

 今後の事も考えたら多くなるかもしんないし。

 一部屋六人で二十部屋?

 十個くらい旅館を作ればいいさ。



 で、管理人を子供のいない夫婦や子供が巣立って寂しい夫婦を募集して集める。

 そして王子の占い師で子供たちを振り分ける

 疑似家族を作ることにより、絆を作る。

 現在の職員はサポートすればいい。

 そういえば職員さん、どうこの案問題ない? 温泉施設に来れる?



「私たちの住む場所はどうなるんですか?」

「まだここだけで話が進んでいますが、もし仮にそうなった場合、こちらで一軒家を用意出来るように申請します」



 住むの不便じゃない? かとの質問も出たが大丈夫。

 店なども出す予定だ。

 一大プロジェクトだからね。

 予算、多めに頼むさ。

 王様と宰相にお願いしてみる。

 ダメだったらその時に再度考えればいいさ。



 王族が順番に先生になり、勉強を教える。

 半年くらい赴任させる。

 ずっと王都にいるより旅に出た方が楽しいだろ。

 何といっても温泉もあるし。

 まあ一般常識は不安だが、学はあるしマナーは完璧である。

 マナーを覚えればどこ行っても恥ずかしくないからな。



 あと一線から引いた職人を雇ったりして後継者作り。

 むろん住む場所も用意する。

 温泉もあるし隠居生活には最高じゃないのか。

 家族だったら家を用意し、一人だったら寮に住んで貰って食事も出してお小遣いもあげる。

 で、娯楽として将棋や囲碁なども教えてあげよう。



 子供たちは職人たちに色々教えて貰って職業体験をしてもらう。

 で、自分の合った職業を探す。

 で、基礎を職人に教えてもらう。

 子どもだから飽きないように加減して貰いながら。



 で、その伝手で王国から就職斡旋。

 とりあえず、それでいこう。

 職員さん。それでいい?



「完璧です」

「いいの?」

「もちろんです」

「じゃあ申請するね」








 翌日、王城にて。



「わしも行きたい」

「私も」

「視察の名目で一週間くらいなら」



 まだ企画の前の段階で王様も王妃もノリノリである。

 まあ理由もわかる。

 即位してから、ほとんどお出掛けしていないと言っていたから。

 行っても外遊と云われる各国の挨拶回り。

 「遊」と付いていても遊べない理不尽さなのだ。



 で、今回外でノンビリ出来ると聞いたら否応なく賛成に回ったわけだ。

 ちなみに「孤児院」という単語は「保養所」という単語の前に幾億光年の果てに消え去った。

 俺とすれば「賛成」の単語さえ貰えれば問題ない。

 過程ではない結果が大切なのだ。



「よし。宰相よ」

「私は?」

「一年に二度くらい保養施設で休んだ方が他の方も来やすくなるので、積極的に取った方が……」



 どうやら宰相も行きたいらしい。

 そういえば最近、腰痛いや肩こりがすると言っていたし(時々回復魔法で恩を着せておいた)、宰相もまた家族でお出掛けをしていないらしい。

 元気なうちにノンビリと家族旅行でも行きたいのだろうか?

 そう考えると、いと哀れなり。



 で、俺が行きやすい理由を挙げると案の定、下の会話となる訳だ。

 ちなみに将軍は後回しだ。

 簡単になびく方から取り込んでいくのだ。

 将軍の耳に届く前に奥さんと娘の耳に入れておくと簡単に次のステージに行く。

 根回しは大事なのである。

 


「明日にも会議ですな」

「うむ」



 早速、奥さんと娘さんにこの情報を流さないとな。

 それにしても、こっちの世界の展開って早いよな。

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