17.おめでた
あれから三か月。
ある事がキッカケで、買い物の件など俺の頭から吹っ飛んだ。
なんとマルガが妊娠をしたのだ。
「わーい!」(三十過ぎの喜びww)
一言で表すとこんな感じだ。
もう俺も三十三歳だし、そろそろ子どもが欲しかったのだ。
無論マルガも。
マルガは、先月に二十九歳になって三十までに子どもが欲しいとかなり俺を急かしていたからな。
俺は最低でも一週間に一度は頑張っていた。
そこは毎日じゃないのか? って。
無理!
絶対に無理だから!(男の甲斐性がないとも言う)
しかもプロレスごっこする日は月曜(携帯の日付)と決めていたし。
ちなみに決めた日に頑張るのは、大切らしい。
毎週月曜日に頑張ると決めると、身体が自然とそのリズムを覚えるからだ。
だから身体だけでなく精神的な部分も自然とその日にピークになるんだそうだ。
とはいえ時々、マルガの赤ちゃん欲しいリクエストに応えて週に二回ほど頑張ったりしたけど。
お前、軟弱過ぎるだろだって?
だから言ったじゃないか。
俺の実力ではハーレムは絶対に無理だって。
もう今の年齢でこれだから、四十になったらマムシやらスッポンに頼らないとダメかもしれない。
こっちには栄養ドリンクなどないからね。
今度、作るか。主に俺の為に。
一大プロジェクト発足だ。
半分ウソで半分ホンキ。
本当は九割ホンキ。
俺と同じく軟弱そうな宰相辺りに話を持っていこう。
あの人なら分かってくれる筈だ。
あと王子にも。
二人、嫁が居て大変って言っていたし。
ちなみに王様は嫁が王妃様しかいない。
結婚をして王女二人(妹は他国に嫁いでいる)と王子二人(これまた今の王子に子どもが二人出来てから他国に婿養子)の子だくさんだったので、特に嫁を増やさなかったとのことだ。
うん。王様にも栄養ドリンクが必要だな。
多分精神と体力の両方だな。
細いしな。
そう考えると、五十過ぎても子どもをバンバン作る芸能人とか議員はすごいね。
きっと大元の出来が違うんだろうね。
俺にそのエネルギーを分けて欲しいくらいだよ。
あっても今までの人生だと持て余していたが。
その妊娠してわかったのをその日の夕食時に話をした時の事は忘れられない良い思い出だ。
王様が立ち上がって喜びを表現し、王妃様がうれし泣きをし、王子が変なポーズを取っていた。
あとで聞いた話だと神さまに感謝するポーズだったらしい。
俺も覚えて、今度使ってみよう。
ちなみに忘れられないのは変な王子のポーズで、良い思い出が王様と王妃様であったのは言うまでもないオチだ。
▽
マルガが妊娠をしたとわかってから、俺は前以上にのんびりと日がな一日過ごす日々である。
よく妊娠している時に女性が色々とストレスを溜めがちになるというが。
俺は現在というかずーっと無職同然で傍にいる。
また、かゆいところまで手の届く侍女がおり、専用の主治医も近くにいて尚かつ俺も軟弱ながら回復魔法が使えるので特にストレスは溜まっていないようだ。
ちなみに俺も溜まってない。(ストレスではない)
何というか解脱したのだ。
安心して下さい。
まだ枯れてませんよ。
あと一人は欲しいからね。
そうそう最近、妊婦も多少運動をした方がいいと地球で聞いていたので、三階でパターゴルフを始めた。
廊下をコースにして王族を巻き込んだ。
こっちの王族は基本、暇人だらけだからね。
布を丸めてボールにして、大工に木製のパターを作らせた。
王族は三階に二十人くらい住んでいるが、基本全員参加している。
というか、みんな積極的に参加しているよ。
娯楽に飢えている面々だからな。
周りに迷惑を掛けていそうだが、そうでもないらしい。
その時間に部屋を一気に清掃出来るから効率的にいいようだ。
迷惑をかけないように九時から十一時に時間を区切って遊んでいる。
今のところ問題は起きていない。
まあたまに腰をおかしくする爺様もいるが俺の回復魔法で事足りる。
これを昼時までやっているので、軽食タイムに突入する。
これもまたメイドさんから言えばバラバラだったのが一気に片付いていいとの事だ。
俺、エクセレントじゃん。
▽
話は変わるが。
俺といえば手品遣いだ。
そうそう、こっちの世界にも手品はあるのだ。今さらだが。
ただ魔法という言葉がなかった為に手品遣い、簡単に言えば不思議な力を持つ人みたいな感じで俺は解釈されている。
簡潔にいえば、怪しいオッサンだ。
その手品の一つ調味料魔法だが、毎日全部使い切っている。
だいたい醤油と味噌に変わっている。
まあ時に砂糖や塩に変わるが、一応この世界にも若干クセはあるが砂糖も塩、そしてお酢も存在している。
ただ塩と砂糖は精製されてなく淡い茶色なので、料理などでは茶色の塩や砂糖が使われ、お茶やコーヒー(こっちにもあった)のように自分で入れたりするのには俺の砂糖や塩が使われているのであんまり変換されない。
で、ちなみに全部使っているのは、勿体ないからだ。
せっかく毎日入るのに捨てるなんてとんでもない。
しみったれ根性、バンザイだ。
王族になってもそうそう捨てられないのが俺クオリティ。
あと最近になって醤油と味噌を研究しているようだが、まだ上手くいってない。
俺もアドバイザー的な役割を任されているんだが、以下の文を読んで図るべしだ。
「味噌は塩と大豆で作る。それには発酵させないといけないらしい」
イマイチなアドバイスで職人は悩む。
俺だったらアバウト過ぎるって怒っているだろう。
そこは王族、バンザイである。
更に合っているようで、大事な部分が抜けているようなアドバイスが続く。
「ちなみに発酵させるには適温で保管させないといけないらしいのと、木の棒でかき混ぜたりするみたいだ」
と、どっかの番組でやっていたのをうろ覚えで教えているものだから、もはやサスペンスである。
更にヒドイ(もう自分でヒドイと言っている!)のが、醤油に関してのアドバイスで。
「確か味噌を頑張ってどうにかすれば、醤油になった記憶がある」
ちなみにどういった過程で頑張ってどうにかするのかは不明だ。
もうツッコミどころ満載で職人たちは俺をナイフで刺したいくらいだろうな。
俺だったら、物陰に隠れて石を投げつけるくらいのことはするな。
とはいえ、何の手がかりもない職人たちは一生懸命に聞いている。
異世界に行くんだから、それくらい調べておけば良かったと思う。
ちなみに持ってきた本には当然書かれていない。
まあ自分で一応フォローすると、味噌と醤油は近いものだよという事なんだけど伝わったかな。
だが、一般の人の知識ってそんなもんじゃなかろうか?
小学校の低学年の時に社会科学で行った醤油工場なんて覚えているはずがない。
帰りに醤油を貰ったのと、校門の入り口にその日着色されたヒヨコが売られていたのを覚えていたくらいだ。
ちなみに小学校に通っていた頃、校門付近で売られていたのは着色されたヒヨコとミドリ亀にカブトムシ、そして通信教育の教材くらいだった。
特にミドリ亀は欲しかったが、買った記憶はない。
と、いつも通り話はずれたが、醤油や味噌についてはこんな感じだ。
まあ作る材料だけでも特定しているだけマシだと思って欲しい。
苦戦をしているようだが、俺が死ぬまでに完成すればいいってなもんだ。
そのうち出来るのではないだろうか?
まあ城のお偉方や料理人が必死になって研究をしているんじゃなくて賢そうな人たちに研究させているので数年あれば出来上がるかもしれない。
とりあえず、頑張ってとしか言いようがないのだ。すまん。




