始動の裏側
◆
そこは薄暗くて静かで人の気配がなく、人が住んでいないような場所だった。
それもそのはず。ここはセリーヌの屋敷。セリーヌ・スティーブンの所有する屋敷なのだ。父は亡くなり家族は母だけ。
その母は最高魔法研究機関第一等チーム、アルカレイドの主任をしていて研究所住まいだ。最後に家に帰ってきたのはもう八年前。父がまだ生きていた頃だ。
屋敷に住む人は居らず、また手入れも全くされてなく、セリーヌが久しぶりに帰る日に掃除をする。今回は学院の寮の部屋が焼けてしまいここに帰ってきた。
その屋敷のセリーヌの部屋。そこにも魔力通信機が配置されている。それを使って通信を開始する。
「母さま?聞こえますか?」
「ええ、お手柄だったわね、バーミリオンを倒したのあなたでしょ?」
「…アンドリューよ、ほらあのアンディ君のおにいちゃん…」
「嘘。バーミリオンの戦闘力は星城騎士団の四位に迫るものがあったはずよ。あなたの着ている星装で得られる力と同等くらい」
確かに赤魔道騎士、イグネイシャスの戦闘力は凄まじかった。それこそ炎の精霊王を殺せるほど。でも。
(…なんで、…なんでそれを知ってるの?)
「結果は勝ったみたいね、それじゃあ明日星装の情報を確認するからこっちに来なさい」
「でも、今回は私とアンドリューで戦って勝ったんだよ?」
「そう、それじゃあ彼にも来てもらおうかしら?」
「っ!?なんで?」
それはセリーヌにとって最悪の回答だった。
「あなた彼のこと好きでしょ?昔から彼の話ばっかり、それなら私の計画の手伝いをしてもらうわ」
セリーヌの胸が痛くなる。まるでガラスが刺さったような感覚。魔法を使いすぎたとか、体の筋肉痛ではなく純粋に心が痛い。
「あなたはこの世界の秩序を正す魔女、彼にはその騎士様の役をやらせてあげる」
その声は笑っているように聞こえてしまう。
あー終わったった
これで一巻終了です。これから絵書こうかな




