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誕生の裏側

暗い光が照らし出す格納庫の中に帯電防止の白衣姿の男性と同じ白衣を着た女性がいた。

二人は格納庫を暗く照らす光を放つ3メートルほどの白い六面体を見ている。

「本当にいんですか?イマニス主任…」

作業着の女性は眼前に映るモニタのENTERボタンを見ている。

「私しか…人類を救えないというのなら…それも仕方ないのさ」

言いながら、イマニス主任と呼ばれた男性は近くの机の上に置いたコーヒーに口をつける。

一気に飲み干す。飲み干して言葉を続ける。

「これで、クリスタ君の淹れるコーヒーを飲むのも最後か…苦すぎる私好みの味だった」

「…すいません、私の挽き方が上達しなくて…」

クリスタと呼ばれる女性は謝る。それに男性は手を振る。

「いや、それが君の味なんだ、まぁ他の人は誰も口を付けようとしなかったがね…」

言い終わり、カップを机に置いて男性は立ち上がる。そして、白い六面体の隣に設置されている太い回線や座った者の体を固定する装身具がついてある椅子に座り、自分で装身具を体に固定する。

そんな男性の行動に女性は俯く。

やがて装身具を固定する部分はひとつになる。男性の右手だ。男性は右手を固定されるのをまっている。

「イマニス主任…私は今でも反対です…やっぱり主任が犠牲になることなんて間違ってますよ…なぜ他の人じゃなきゃダメなんですか?主任がこの機体になる必要なんてっ…!」

「ダメだ!この機体に乗るやつを俺は知っている、…いや、あいつらしか乗れんだろうな。それに、世界最高の頭脳がこの機体の一部になるんだ、それだけでも…」

「そんな、何十年も先のことですよ…!もういいです…分かりました…」

女性は男性の右手に近づきカチリと装身具を固定する。それ後、女性は先ほどのモニタの場所へ戻る。

「押します…」

頼む。と男性は声にならない言葉で呟く。

カチリとマウスからのクリック音が聞こえる。

モニタの画面は、実行まで残り30秒と書かれた警告メッセージウインドウが映し出される。

その警告を見ずに女性は暗い格納庫のボタン式の自動ドアに寄りかかる。

これから自分に起こるテストは失敗する可能性だってある。もしそうなったら無駄死にだ。体が死の時間に近づき今まで生きてきた過去が走馬灯になって通りすぎる。その中で最近の思い出を思い出す。

「ああ、最後に…子供達(あいつら)を頼む」

「分かりました…」

男性はそれを聞いて笑う。それは満面の笑みで言葉を続ける。

「名前は………」


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