ここはどこ?
ちょーっと待ったぁぁ!ここはどこなのーー!?
お風呂に入って、テレビをみて、そんでもってケータイで小説を読んでたんだよね。
ほら、今流行りの異世界トリップものっていうの?あはっ…笑えない。
えーっと確かそのお話では、城の庭園に落ちた女の子が、お城の兵士に囚われて…それで、えっと…その続きまだ読んでない!
「そこで何をしている。」
いたたた… 地面に押し倒された身体が痛いっ!上からぎゅうぎゅう押し付けられると…ちょっと、もう死ぬって!
「おーい、なんか見つかったかぁ?」
もう一人の足音がするけど、見つかったってわたしのこと?
「いや、何もねーよ。セヴァンは向こう探してくれ。」
上でわたしを押し付けてる人の息遣いが耳にあたって、無駄にどきどきするのは、きっと異世界トリップの副作用だね!
「へーい、アレンもあとで来いよぉ。」
もう1人の人の足音が遠ざかると、上に乗っていた人からようやく解放された。うー。全身が強張って動けない。
「ちょっと我慢してろよ」
ひょいっとお姫様だっこしたよこの人!
近くでみると、オレンジっぽい明るい色の目に赤茶色の髪の毛の、それはそれはかっこいい男の子だった。
ちょっとすると建物の一室に運ばれ、ベットの上に座らされた。
「はじめまして、異世界へようこそ。」
要約するとこうだった。
なんでも、この人アレンっていうんだけど、騎士団の副団長で、さっきの人が団長のセヴァン。なんでわたしがここにいるかっていうと、アレンの異世界召喚の失敗。だからアレンが引き取ってこれからアレンのお世話になる、と。そしてこの失敗は誰にも言っていないから、当分はアレンの恋人として居候するというわけ。
そんなこんなで一週間たったんだけどね、アレンが、というかここの人はみんなそうなのかもしれないんだけど、スキンシップ多すぎ!
「ただいま。今日の夕飯は?」
はいはい、それで後ろから抱きつかなーい。
お腹のところで交差する腕が逞しくてちょっぴりドキドキする、かも。
「今日はセヴァンさんが持って来てくれたキノコを使ったシチューにしようと思って。」
「セヴァンが…?あいつが何を?」
心なしか声が低いですよ〜それに締め付けないでって!ぎゅって!そんなにされると料理ができん!
「キノコを届けてくれたんですっ、それだけです。」
勢いよく振り返ってアレンの厚い胸板をバンバン叩いてみるけれど、全く効果なし。
逆に抱きすくめられて、う、動けない…
「そうか。お前また痩せたんじゃねーの?」
よし来た!この話題まってました!
わたしの肩と腰に腕を巻きつけて体を密着されているアレンに、今日こそは!とお願いをしてみる。
「ねえ、わたし城下町にあるクレープ屋さん行ってみたいなぁ。」
まだ一度も城の外に出たことがないから、いつもあれやこれやと提案をしてるんだけど、今までは全て玉砕。でも、今回は譲らないんだから!
「ダメに決まってんだろーが。城下町なんか行ってどうすんだよ。」
「セヴァンさんがね、好きな人と行ってお祈りをすると永遠に結ばれるって噂の場所を教えてくれたの!アレンと一緒に行きたいなーって思って」
「おまっ、いま、なんて…」
アレンの顔がみるみるうちに赤くなっていく。さっきまでの余裕は何処へやら、いまは回していた腕も緩まっている。ようし、あと一押し…!
「ね、お願い…。」
あれっ、自称15歳、本当の年齢は25歳の必殺おねだりポーズはやっぱりきついか。今回は身体もアレンにくっつけぎみで、上目遣い、もちろん目はうるうる、そして極め付けは首をちょっと傾げる!
「なっ…もう、勝手にしろよ…」
耳まで真っ赤にさせたアレンが目をそらして言った。よし!やった!これで外に出れる!
「ありがとう!アレン大好きっ!」
そう言って勢いで抱きつくとアレンは倍以上の力で抱きついて来た。
「お前それは反則だろ。」
この二人がやがて夫婦になり、幸せな家庭を築くのはそんなに遠くない未来。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
ちゃちゃっと書いたこのお話、気に入ってくださる方がいらしたらとても嬉しいです。