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『 Legend of the wars  』   作者: 桐生清一
セリスタ騎士編
9/100

§第二章: バラ戦争 6§

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 6 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おまっ!! すげぇじゃねぇか!! 」


予想通り、エスラーとハインツは喜んだ。エスラーは喜びながら背中をたたいたのだが……ちょっと強めに思うんですが、悪意ありませんか?


「さあ祝杯だぁ~~!! 」


というと一人で飲みだした。ハインツとハーヴィスは少し苦笑いをした。ハインツは喜びながらも少し気になったことを話した。


「なぁ……それにしても、何で急にエドガー騎士団長はお前を推薦したんだろう」


ハーヴィスはしばらく唸っていたが、全く思いつかなかった。


「わからん……」

「……ですよね……」


二人はなんでこうなったのか、頭を捻っていた。すると、エスラーは笑いながら言った。


「そんな分からんこと考えてもしゃーなしだ! 」


二人は何も考えずにハイテンションの彼に納得した。


「考えてもわからんよね、確かに」

「そうだな」


三人は改めて乾杯をした。その後、二時間ほど飲んでいたが、さすがに、明日に堪えるから帰ろうということで、元気なエスラーを連れて宿舎に戻ることになった。最近エスラーは宿舎ではなく、最寄の部屋を借りていた。理由はただひとつ


「起きたら遅刻しそうだから! 」


とのことです。エスラーの部屋は賃貸の部屋であり、以前からお世話になっていた大家さんに破格の値段で借りていた。そんなこともあって、この家は彼にとってとても重要だった。


「それじゃあまた明日な~」

「おぅ~」


二人は更に先の宿舎に向かう、その姿を見終えた後、エスラーは部屋に戻ろうとした。


「……ッッ」

(ん?何か動いたか……?)


暗がりで一瞬犬か何かと思った。すると、小さな声で


「……だ……だれ……」


正直あんたこそだれ・・?と聞きたい気分ではあった。声は女性らしい。


「俺はエスラーだ、セリスタの騎士をしてる」

「!! 本当? あなたエスラー? 」

「あ、ああ、そうだ」


肯定すると、何故か安堵のため息が聞こえる。そして、彼女は全体重を掛けてエスラーに抱きついた。


「やっと、やっと会えた!! 」

「お……お前は誰だ!! 」

「……ええぇぇぇ……」


声の主は、明らかに拍子抜けした声を出した。とりあえず、エスラーは自分の家に彼女を入れた。とりあえず彼女の名前はキリカというらしい。エスラーには全く身に覚えのない名前だった。


「……なんで覚えてないのよ、まったく、幼馴染が来たって言うのに……」

「……幼馴染……」


考えても思い出せない。常にエスラーはハインツや男達と紛れていた、なので、女など記憶にないっ!


「悪い、本当に知らないんだ、お前みたいに可愛い子だったら普通覚えてないはずないわっ」


変に力説するエスラーに彼女はくすくす笑う。


「本当に変わってないんだね……」


涙ながらに彼女は笑いかける、そんな可愛い姿に、エスラーは何故か顔が赤くなった。しばらくの沈黙の後、キリカは話を切り出した。


「エスラー、本当に申し訳ないんだけど、貴方のうちに泊めてくれない? 持ち合わせがないんだ……」

「え……えええ!! 」


エスラーは頭を抱えた。


「なぜ……こうなった……」


エスラーは酔いと疲れとこれからの生活に頭が痛くなったのだった。

 そして次の日、何とか今夜乗り切ったエスラー、しかし、今日の仕事があると思うと体が物凄くつらく感じた。


「いってらっしゃ~い」


出かける時、キリカの声が聞こえる。急に居ついた全く知らない彼女だが、彼女によると子供の頃に遊んだ幼馴染らしいとのこと。しかし、その彼女が何故、この部屋に来て、居つくことになったのか全く理由が分からなかった。今日の夜にでも聞いてみることにする。

そして、エスラーはハーヴィスとハインツを見つけると重い体にムチを打って走り出した。



その日の夜、疲れきったエスラーは家に帰った。するとキリカはもういない、安心して寝ていると、しばらくして扉が叩かれた。外は風が強く雨が降っているようだ。眠い体を起こしてエスラーは扉を開けると、そこにはびしょぬれのキリカがいた。


「エスラー……ごめん、私……」


彼女はナイフを持っていた。そして、そのナイフには雨で濡れていたものの、血の跡があった。

エスラーは慌てて、部屋を暖かくし、彼女に換えの服とタオルを渡した。そして、後ろを向くと、彼女が見えないように座り込む。


「……エスラー、ありがと……」


彼女の声でドキリとする。昨日見た彼女とは少し違う印象を受けた。しばらくすると彼女は着替え終え、服を乾かす為に部屋に吊るした。

そして話が出来る状態になると、キリカは話を始めた。


「急に、こんなことになってごめんなさい」


エスラーが暖めたホットミルクをチョビチョビ飲みながら彼女は話を続ける。


「お父さんが……お父さんが、死んだの……」

「え……」


急な展開でエスラーは全く理解できなかった。


「実はね、私のお父さん、彼方に会ってるのよ、商人の格好でね」


商人の格好……思い当たるのはあの人だけだ。


「ど、どういうことだよ……」

「私、私売られそうになったの、お父さんの親友に……信じられない……」


全く理解できない、どういうことだ、分からない情報がありすぎた。


「まて、もう少し整理しよう……順序だてて話してくれ」


彼女はホットミルクを飲んで気を落ち着けた後、改めて話してくれた。

 つまりは、彼女はどうしてもはずせない用事があり、近道として利用していた地下道を使って、家に帰っていたという。

その時、地下道の入り口から部屋に入ろうとしたとき、部屋の中から口論が聞こえたのだ。そして、その口論はキリカの身の処遇についてだった。フードを被った男はかつての商人の親友であり、彼女を大切に守ってくれた恩人であった。

 だが、彼は彼女を売ろうとしていたという、そして、もみ合いの末、彼らは地下入り口に転落。

そしてその勢いでフードを被った男は相手のナイフで絶命したという、そして、相手の男はキリカに気が付くと襲い掛かったのだが、薄暗がりに目がまだ慣れていなかったせいでよろけた。その隙に彼にナイフで肩口を切りつけて逃げたという。

 その事情をエスラーは聞いた。だが、彼女の話で気になる部分があった。


「父親の親友がお前を売ろうとしてたと言ってたが、ちょっと違うと思うぜ」

「ど、どうしてよ! 」


若干声を荒げるが、自分もその確証が持てていないため、少し怒気が薄れる。


「何で、揉み合った、倒れ込むまで暴れた? 金額が少ないからでそこまで暴れるか? 」

「…………」


しばらくの沈黙がある。エスラーはらちが空かないと思い、今日は寝ることを提案した、寝れないだろうが……

キリカも素直に従った。この部屋はとても暖かったが、何故か、芯まで温まることがなく、とても寒かった。

 次の日、ハーヴィスとハインツを部屋に招き、事の次第を話した。二人は信じられないという表情をした。だが、どうも事実らしい。


「でさ、お前、商人のおっさんから貰ったメモあるだろ? 」

「あ、ああ……」


ハーヴィスは荷物からそのメモを貰う。見てみるとそこには情報屋の名前と、住所がある。彼女から聞いた住所とも一致した。そして、更に連絡先の下にはメッセージがあった。



”私が死んだときは、お前も命が危ない、娘を守ってくれたのは嬉しいが、これ以上は無理だろう。他に信用できる者に、娘を渡してくれ、頼む”



とあった。


「!! ウゥ……」


キリカはこのメモを見ると泣き出した。何故このような悲惨な事件が起きたのだろうか。ただただ、呆然と見守るだけしか出来ない。

しばらく泣いた後、彼女はポツリと言った。


「これから……どうしよう……」


ハーヴィス、ハインツも顔を見合わせる。その時、エスラーは予想もしない言葉を言った。


「俺の家に住めばいいよ」


皆目が点になる。


「それは……ナイスかもしれないけど……同じ部屋に男女はまずいと思う」


ハインツは正論を言う、しかし、そんな事をお構いなしにキリカは喜び勇み、なし崩し的にこの部屋に住むことになった。 すると、彼女は真顔になり、自分が付けていたネックレスをエスラーに渡した。


「これ……信用できる人に渡せって……」


顔を真っ赤にしてエスラーに無理やり渡す。改めて見ると、とても綺麗な細工がしてあるのだが、ハーヴィスはどこかで見たことがある紋章に気が付いた。


「これ……まさか、教皇国と、ローヴァス帝国の家紋……?」


これはまさかの国宝級の宝物だった。


 後日、ハーヴィスはこのネックレスをエリーシャに見せた。見てもらったところ、やはり、教皇国とローヴァスの家紋であるらしい、しかし、この家紋は少し違うようだ。

二つに分かれているのだが、少しパズルのようになっており。この二つを合わせるともうひとつの家紋が出来たのだ。


「これは……昔の教皇国の家紋……」


エリーシャはそう答えた。つまり、このネックレスは、後を継いだ教皇がつけるものであり、正統な跡継ぎであることを証明する大変なアイテムだということだ。


「こんな……時にこの首飾りが来るなんて……」


エリーシャに今回あった全てを話した。するとエリーシャは答えた。


「これは、首飾りの売値のことね。どこで手にいれたか知らないけど。嗅ぎ付けた連中にやられたと思うわ……」


これで、キリカが売られるという線は消えた。では、商人は何故……これもエリーシャが難なく答えた。


「切り札があるから、高をくくって両方で取引しようとしたんでしょう……でも相手が悪くて共倒れってことね……」


言葉がなかった。あのいつも面白い話をしてくれる商人がこんな危ない橋を渡っていたとは……しかし、初めて出会ったときのことを思うと分かる気もした。


「でも……まずいわね……」


エリーシャは頭を抱えた。ハーヴィスには訳が分からない。どうしたのだろう……


「このアイテムがないってことは……もう始まってるかもしれない……」

「え……?どういうことですか? 」


ハーヴィスの問いに、エリーシャは答えた。


「正統な跡継ぎがいないから……直ぐにでも跡継ぎをめぐる戦争が起こるわ……」

「え……!? 」


びっくりするハーヴィス、エリーシャはこれから起こるであろう最悪のシナリオを考えた。それは抜け出ることのない混沌の世界であった。

 そして、エリーシャの予測通り、”赤きバラ”と”白きバラ”の血で血を洗う戦いが始まろうとしていた。


  第二章 END



今週末は実家に帰るため、UPを先にしておきます(>_<)ゞ

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