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『 Legend of the wars  』   作者: 桐生清一
セリスタ騎士編
8/100

§第二章: バラ戦争 5§


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 5 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……本当に……これでいいんだな……」


薄明かりの部屋の中、男は答える。


「ああ、後は、私達がやるから安心してくださいな」


相手の言葉を聞いて男は喜びながらも尋ねる。


「あ、あの件に関しての……」


震える声で聞いてきた男に金貨の入った袋を渡し、にっこりと笑った。


「ええ、私達が保障しましょう。必ず、貴方を支持します」


その声を聞いて男は安心し、用件を終えるとそそくさと部屋を出た。彼がいなくなった部屋に一人、佇む者はクスリと笑うと独り言を言った。


「……本当に救えぬ馬鹿よ……」


 そしてフードを脱ぎ捨て、後ろから現れたフード姿の男に渡す。フードを脱いだ人物は気品のある貴公子のような男性だった。


「さて……今日は少し楽しかった。いつもはお前にやって貰っていたが、お前の話どおり本当に面白い奴だな」


見た目とは違いとても口が悪い。


「……そうですね」


フードを被った男は遠慮深げに答えた。そして、地下に通じる道を開くとここに入るように指示する。


「……私は相手に指示されるのは好きじゃないんだ」


フード姿の男はあせった。今この姿を他の人間にさらすわけにはいかない。


「……これ以上は、命の保障は致しかねる」

「…………」


その言葉を聞いて、ふて腐れながらも地下への抜け道に向かう、入り口に男が入った後、フード姿の男は慌てて伝言を伝えた。


「先日、一人の男をエスターナに向かわせました。その後は好きにしてください」


その言葉を聞くとニヤリと男は笑った。


「……ああ、楽しみにしてるよ」


笑いながら走り去っていった。しばらく男に危険がないか確認した後、フードの男は地下への扉を閉める。そして周りに誰もいないか確認した後、この部屋を出て行こうとした。


「ッッキャッ! 」


フードが邪魔で見えなかったらしい、小柄な女の子とぶつかった。余りに急な出来事だった為、男は声を荒げた。


「ここに来るなといっただろ!! 」


普段あまり話さないのに声を荒げた為、女の子は萎縮する。目に涙を溜め震えた。


「……すまん」


彼女の雰囲気から、”今さっきの事 ”は知らないらしい。それに気がつき興奮した自分を抑えた。


「……ご、ご免なさい……」


今にも泣き出しそうな姿の彼女の声に慌てた。


「……あまり、この部屋には来ないでくれ、大切な仕事があるんだ」

「……はい、ご免なさい……」


怖いところから逃げ出すように少女は走り出した。その姿を見送った後にフードの男はため息をついた。


「……もう、こんなことは沢山だ……」


薄暗い部屋の中、フードの男は頭を抱えたのだった。



 エリーシャがアリエルの借金返済について、各国を召集した。セリスタ公国を囲むように存在する小国家群は全部で6つ。思いのほか早く、返済の都合がついたということで各国は直ぐにセリスタに集まった。全ての国家元首が集まる中、エリーシャがアリエルの多額の借金を返済、連合国に対し陳謝をした。これにより、やっとセリスタは負の遺産を処理することができたのだ。

 だが、借金の件が片付いたのだが、今各国は更に大きな問題を抱えたのだった。なので、その問題の為、次の議題に入ることになったその時、扉がノックされ開かれる。


「会議中の中、申し訳ありません」


一人の男が扉から顔をだした。


「……申し訳ないが、今会議中なのでな、緊急の用事以外は……」

「緊急の用事になります」


会場がざわざわしてきた。こんな時に、何が起こったのか全く分からず少し、パニックになりそうな人もいた。


「用件をお願いします」


エリーシャは落ち着き払って尋ねる。彼女の透き通った声で、会場が静まる。


「はい、ただ今正式に、聖エルベリア教皇国の教皇様が、お亡くなりになりになったと報告が御座いました」

「なん……だと!! 」


各国の元首達は立ち上がった。教皇が倒れた後、どうすればいいのか全く目途がたっていない各国は慌てて緊急会議を行うことにした。しかし、まとまるはずがない。

 会議の内容は全て自分達の利益優先の話ばかりで、連合国が一丸となって、全てをまとめる為の案は全くでてこなかった。エリーシャはそんな中、黙秘を貫いた。一人の元首が試しに訪ねた。


「セリスタの姫君はどう考える? この状況」

「…………」


しばらくの沈黙が訪れる。元首は一様にエリーシャを見つめる。


「私の考えは……今はわかりません」


エリーシャから出た意外な言葉は会議に波紋を投げかけた。結局は、エリーシャが若い、と言うことに対しての批判が多かった。会議室の護衛役をしているエドガーは相手になされるがままのエリーシャに対して歯がゆい思いをしていた。


(何故……ひとつも反論しないのじゃ……)


自分がエリーシャならここにいる全員を八つ裂きにしてやると言うのに……と物騒なことを考えていたのは彼だけの秘密だ。

 終始、エリーシャは黙秘していた。とりあえず話は全くまとまらず、解散と言うことになった。そして次の会議はいつにするのかとなった時、エリーシャが意見を言った。


「次の……会議は、跡継ぎの投票が始まる一週間前に致しましょう」


その意見に対しては全員合意した。早い段階で決めると、不利になると共倒れ。逆に遅い段階だと、不条理な条件を付けられるかもしれない……各国の利害を汲んだ意見であった。

 一同は思い思いの算段を模索しつつ、帰途に着いた。エドガーは早速何故反論しなかったのか問い詰めた。するとエリーシャは悲しそうな顔をした。


「あの時、私が答えたところで、あの方達は納得なさる? 」

「…………」


エドガーは答えられなかった。自分達の利益ばかりしか見ていない連中に、各国の境遇など視野に入るはずがなかった。


「私が浅はかであった……」

「いえ、心配してくれてありがとう、エドガー。今信用できるのは貴方しかいないの……」


気丈に振舞っているが、やはり年端もいかない少女である、つらくないはずはなかった。せめて同年代の気の許せる相手がいたら……そう思いかけて頭を振る。


(私が、姫様をお守りせねば……)


エドガーは、エリーシャを守る決意を新たにした。

 その後、エリーシャが執務室に戻り、エドガーは訓練所に戻ることにした。忘れ物があった為である。その時、たまたま一人の男を発見した。


「……あいつは!! 」


不覚にも隙を突かれた記憶がよみがえる。しかも無意識のうちに認めてしまった!! エドガーとしても絶対に許せない人物だった。


「あ……あの時は、姫様がおった手前何もできんかったが……」


と、忘れものを忘れて、ハーヴィスに集中した。ハーヴィスは軽い足取りで、訓練所を後にする。そして、街に出て行く。その姿をエドガーは追いかける。

するとハーヴィスは、繁華街をでて、人通りが少ない路地を通り、町を抜け出した。


「……あやつ……何をたくらんどる……」


最近は、間者や密書の件など様々な陰謀が渦巻いている為、疑わしいあの輩の素行調査だと、自分に言い聞かせて追跡を開始する。すると、ハーヴィスは小高い丘にに着く。そして城に向かって敬礼を始めた。


「…………」


エドガーはしばらく覗き続けた。だが、不意に不思議な感覚がよみがえる。実は昔、エリーシャがエドガーの別荘に剣の訓練で来た時に彼女に教えたポーズであった。

そんなことはエドガーは覚えてはいないのだが、その姿は自分が知っている姿の中で一番理想に近かった。


「……何故……”アレ”を知っておる……」


実は剣を立てて敬礼するポーズは彼の知る、奥義の型でもある。心の目で感じ取り、立てた剣が縦横無尽に相手の軌道を切り替える技だった。そして、5分ほど敬礼を終えると、今度は二つの剣を持ち、シャドーを始めた。その姿は攻撃に特化した型であり、荒武者の如くそして、華麗であった。


「……久しぶりに燃えた……」


まるで、ハーヴィスの戦いは自分が思った通りの動きを表しているようだ。まるで……エドガーが剣の手ほどきをしているような……。


「あの男の能力は計り知れんな……」


エドガーは本気でハーヴィスを認めた瞬間だった。そして、何故か分からないが、ハーヴィスに対して憎しみではない、新しい感情が芽生えていくのを感じていた。

 後日、ハーヴィスは何故か一人だけ呼び出しをされた。


「ハーヴィス殿、よく参られた」

「は、はい……よ、よろしくお願いいたします」


緊張した面持ちで、ハーヴィスは答える。


「……すまんな、病床の手前、この姿、この場所に呼んだことを許してもらいたい」

「い、いえ……私のような者が……」


実はハーヴィスは今、セリスタの現元首、エルガ=セリスタの前にいる。つまりは、エリーシャの父だ。病気ながら、わざわざ、ハーヴィスを見るために、寝室に呼び出したということだ。


「よいよい、そなたの顔が見たくてな……」

「もったいないお言葉です……」


深々と挨拶をする。するとエルガは珍しく大笑いした。


「実はな、エドガーが昨日の夜からお前のことを話しておってな、余りにも褒めるものだから興味がでてな」

「は、はい……」


あのエドガー騎士団長が……とハーヴィスは思ったのだが、とても嬉しかった。


「後、少しでエドガーとアレがくるはずじゃ」


エドガーとアレ……誰だろう……と考えていると、扉がノックされる。そして部屋に入ってきたのは、エドガーとエリーシャだった。


「エ、エリーシャ様……」

「……お久しぶりです、ハーヴィス様」


エドガーとエルガは面白そうに見ていた。この二人がどんな反応をするのかそれが楽しみだったのだ。

しばらくして、ハーヴィスの緊張が収まりそうになった瞬間を狙ってエルガは話した。


「実はな、ハーヴィス殿、貴殿に頼みたいことがあってな」

「は、はい……何なりと……」


その言葉を待っていた。ともいわんばかりの顔をして、エルガは言った。


「貴殿を、今日から近衛騎士に任命する」

「え……? 」


目をぱちくりしているハーヴィスにエドガーは更に付け足した。


「そして、お前の任務は、エリーシャ姫の護衛だ」



「へぇ……!! ええええ~~~!! 」



正直驚いた。何も考えられなかった、


       


     そして、この瞬間、彼の夢はここに実現したのであった



以降 6


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