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『 Legend of the wars  』   作者: 桐生清一
聖エルベリア教皇国軍所属編
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§第十三章 法騎士パラディン 2 §

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆2◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


アリアは待っていた。ハーヴィスの手紙が届いてから毎日。


” 戦いは終わったよ。俺たちはみんな無事だ。もう少し時間がかかるけど、ちゃんと戻ってくるから待ってて ”


アリアは嬉しくなった。それ以来、彼女はハーヴィスが帰ってくるのをずっと玄関が見える窓から眺め続けていた。


「まだかなぁ……まだかなぁ……」


アリアは自分の家から見える道の地平線を眺め続けていた。そんな姿をため息をつきながらエスタシアは見つめていた。


「全くもぅ……手紙に戻ってくるって言ってるのに、気が早いんだから……」


まるで、ご主人様の帰りを待つ忠犬ハチ公のような、そんな姿を想像させられる。だが、そんな妹を見ながらも、エスタシアも嬉しく思っていたのだった。


「やっとしばらくの間、平和になるのね……」


エスタシアも心なしか、妹と同じで、彼らの帰りを待っていたのだった。そんな時、アリアが何かに気がついたように顔を上げると、玄関に向かって走り出した。


「え? 」


エスタシアは彼女の迷いのない動きにあっけにとられたが、すぐに気がついた。そう、彼が帰ってきたのだ。慌てて、アリアを追いかける。すると、玄関の外に出たアリアは地平線から見えてくるハーヴィスを見つめていた。


「……やっと、やっと帰ってきた」


アリアは目に涙を溜めて彼の姿を見つめる。すると、彼も気がついてアリアに手を振る。それに合わせて、アリアもてを振り返した。――そして


「ハーヴィス!! ハーヴィス!! おかえり!! 」


アリアは叫んだ。それに合わせて、彼の歩みも早くなる。エスタシアはそんな彼らを微笑ましく笑顔で見つめていた。そしてアリアは走り出すと、慌てて何かを言う彼を尻目に飛びついた。そんな彼女を安全に抱きとめる。嬉しそうな顔をしながら抱きついたアリアはしばらくすると顔をしかめて離れた。


「……ハーヴィス……何か臭うよ……」


「だから、汚いよって言ったのに……」


二人の感動的なシーンは臭いの一言でぶち壊しとなった。そんな姿を少し呆れつつもエスタシアは見守っていた。微妙な再会の後、ハーヴィスは体を洗い、改めてアリアの前に現れた。そして、アリアは改めてハーヴィスに抱きついた。臭わない……それがアリアにとって安心感を大いに膨らませた。


「臭くない……幸せ……」

「何か、抱きつく理由が変わってないか? 」


ハーヴィスはアリアの感想にツッコミを入れた。相変わらずエスタシアは苦笑いをしながらも見つめている。そんな中、改めて玄関が開く。そして、姉妹の最愛の肉親が帰ってきた。


「やっと終わったわぃ。ただいま」

「あ、お爺さま。お疲れ様~!! 」


そう言うと、アリアはギルトに抱きついた。満面の笑みを浮かべて。その時、ハーヴィスとエスタシア二人は同時に同じことを考えた。それは……


「……お爺さま……何か臭うよ……」


「…………」


ギルトは孫の感動的な再会シーンによる感動を一気に失ったのだった。そして、ハーヴィスとエスタシアはお互い見合って苦笑いをしたのだった。久しぶりの再会と、夕食の後、アリアとハーヴィスは家の屋上へと向かい。ギルトとエスタシア、ミレディアは食後のお茶とともに、今回の戦いを聞いていた。


「そう、ですか。そんなことが……」


彼女達は驚いていた。想像もできないような戦いをして、彼らは戻ってきたことに、彼女たちは言葉を失っていた。


「このような戦いはもうやりたくないな。あまりにも一方的すぎる……だが、それをハーヴィスはやってのけた」


ギルトの言葉に、二人の孫はゴクリと生唾を飲んだ。しかし、ギルトは彼女たちの目を見ながらこう言った。


「……じゃが、これは全て、ハーヴィスの愛する者たちを守りたいと思うがゆえのことじゃ。つまりは、力が及ばん……わしらが無力ゆえのことなのじゃ」

「そう……ですよね」


エスタシアは視線をしたに向けて言った。愛する者たちを守る。その言葉は彼女たちの心に重くのしかかった。この世界では、当たり前のことですらとても難しい……という現実を突きつけられていた。


「私達は無力。だからこそ目の前の、せめて、アリアだけでも幸せにしたいですわ……」

「そう……だね」


エスタシアの言葉に、ミレディアも同意の声を上げる。ギルトは無言で頷いた。身近な幸せ。それはとても近く、そしてとても遠いものだった。

 ギルトたちが話をしているちょうどその時、ハーヴィス達は家の屋上にいた。二人は聖エルベリアの首都エスターナの夜景を見つめていた。所々に見える明かりがまるで宝石のようにきらめいている。アリアはかつて自分がハーヴィスに告白したその場所で、外を眺めていた。一方、ハーヴィスはソワソワしながらもアリアに付き合っていた。何故なら……


” この数ヶ月見ない間に、彼女が驚く程、エリーシャに似てきたからだ ”


まともに彼女を見ることができない。そんな中、彼女は知ってか知らずか、ハーヴィスの反応を横目で見て微笑んでいた。実は彼女は、ハーヴィスのいない間に、ミレディアから化粧を教えてもらっていたのだ。自分をできるだけ綺麗に、綺麗に見せたくて、彼女は悪戦苦闘していたのだ。その成果が今出ている。ハーヴィスの今の反応なら、自分はなんでもできそうな気がする。ふとアリアはハーヴィスに正対した。慌てて目をそらそうとするハーヴィスにアリアは話しかけた。


「ハーヴィス様、ちゃんと私を見てください。……どうですか? 」


軽く微笑みながら見つめるアリア、その姿は妖精の如く神秘的で、月夜の光がさらに彼女をより、幻想的に見せた。顔を真っ赤にしながらハーヴィスに告白していた彼女がここまで変わるとは……


「……綺麗だ……」


ハーヴィスはこの言葉しか出なかった。それ以外の言葉も何もかも吹き飛んだ。彼女は嬉しそうに微笑んだ。本当に、エリーシャと瓜二つだ……


「ハーヴィス……愛してる……」


アリアはそう言うと、羽が生えた天使のように空を飛んだ。そして、彼女の着地したところは、ハーヴィスの胸の中だった。そして、ハーヴィスは彼女のぬくもりとともに、彼女を離すまいと心に誓ったのだった。その時、アリアは左手にある指輪をハーヴィスに見せる。七色に光るその指輪は月の光でさらに輝きを増している。ハーヴィスはこの指輪を彼女にプレゼントして良かったと思う。それと同時に、その指輪も彼女の神秘性を更に強調させているかのようでもあった。


「ハーヴィス……この指輪ありがとう。これのおかげで、ハーヴィスがいなくても、私は頑張れたよ。必ず、彼方は帰ってきてくれるって信じられた」

「ああ、俺は必ず帰るよ。アリアの笑顔を守ってみせる」


ハーヴィスは不意に力を込めて彼女を抱きしめた。アリアは少し窮屈そうに声を上げそうになったが、耐えた。その時、アリアの口から驚きの声が聞こえた。


「本当に……本当に、私でいいの? 」

「……え? 」


ハーヴィスは狼狽えた。アリアを守るという言葉は本心だ。嘘偽りはない。しかし、アリアの言葉はハーヴィスの決意に綻びを生じさせる。ハーヴィスは驚きの声を上げたが、慌てて平静を装う。


「……何を言ってるんだ。……お前以外誰がいるんだ……」


平静を装っているのだが、言葉はあまりにも曖昧だった。しかし、アリアはそれで十分と言わんばかりの顔で満面の笑みを浮かべた。


「……嬉しい……」


アリアはそう言うと、ハーヴィスに対抗するように力強く抱きついた。そして、彼女は同時に思った。


(例え、今はエリーシャ様に勝てなくても、絶対に貴女の存在を超えてみせる……)


彼女の強い決意は、ハーヴィスに力いっぱい抱きつくことで示された。一方涼しい顔でアリアに抱きつかれていたハーヴィスは、予想外のアリアの力に軽く悶絶していたという。



ハーヴィスと、エルベリア、セリスタ連合軍は無事、エスターナに戻り、しばらくしてエルベリア教皇に親書が届く。それはハーヴィスが送った新書によるお返しのものであり、それは事前にハーヴィスから教皇に伝えていたものだった。教皇であるオスカーは、ハーヴィスからの要望通り、土民に対する不可侵をローヴァス帝国とともに締結した。それにより、両国はしばしの休息の時間を手に入れる。


いづれ、戦いはまた始まる。しかし、この一時の休息それは、どちらに対しても望んでいたものであった。そして、忘れた頃に戦いは始まる。



以降3


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