§第一章: 騎士選抜トーナメント 4 §
サブタイトルが重複するので削除してみました。後は特にないです^^;
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いつもより早く起きてしまった。何故だろう、何だか胸騒ぎがする。そんな気持ちをかき消す為に気晴らしに散歩をしてみることにした。外は日が昇り出し、一筋の光が照らし出す。サラサラのブロンドヘアーが太陽の光を乱反射するように光り輝く。
「……やっぱり……気分が晴れない……」
昨日は騎士選抜トーナメントに行くことはせずに他の事をしていた。後で、エドガーに叱られると分かっていながら、やはり試合とはいえ戦いは好きになれない。こんな時に贅沢だと言われても、元々争いは得意ではないのだ。
彼女はエリーシャ=セリスタ、セリスタ公国の公女である。ただ今、体調不良の父親に代わり、本国の執政を執り行っている。今回の騎士選抜トーナメントも、父親に代わり、エリーシャが本来は出席しなければならなかったのだ。
「ん~……エドガーの様子がおかしかったし、今日は何があるのかしら」
彼女の気になることは、昨日エドガーが騎士選抜トーナメントから戻ってきたときだった。普段なら恐ろしい剣幕で怒鳴りたて、怒るはずだった。そして、エリーシャも、急きょ仕事が入った為に出席できなかったことを盾に反論しようとしていたのだが、完全に毒気を抜かれてしまった。エドガーは城に戻ると普段よりも上気した面持ちながら、エリーシャに軽く問いただしてきた。
「エリーシャ様、今日は何故騎士選抜トーナメントにご出席されなかったのですかな? 」
「……ええ……それは」
エリーシャが理由を話そうとしたとき、扉が叩かれる。
「誰だ? 今エリーシャ様とお話があるのだが……! 」
扉を開けたのは、ハーヴィスを逆指名挑戦をしたアクラムだった。大きな体を小さくしながら頭を下げる。
「おぅ……アクラムか……姫様、ちと用事ができましたので……ご欠席の件は今後はされぬよう……」
そそくさと立ち去るエドガー、いつに無く興奮してる様子も伺える。その姿がよりエリーシャには気にはなった。
「……何か、隠してるのかしら……」
その時から彼女の中に不思議な気分がくすぶった。それから気になり続け、今に至っているのである。
「……今日のイベント出席しようかな……」
姫様の好奇心が出席を後押しすることとなり、彼女はエドガーと共に、試合会場へ行くこととなった。丁度エリーシャ達が会場に到着したとき、3位決定戦が始まり、観客は思い思いに応援をしていた。そして、この戦いが終わると、後に伝説となるハーヴィスとアクラムの決戦が始まる。期待に胸を躍らせながら、エスラーの友人ハインツは、セコンド用の控え窓で覗いていた。
「おーい、まだかー? 」
エスラーの声が控え室に響く、空調のダクトからは歓声が聞こえる。今日もいい天気であり、この戦いを太陽も観戦したいのでは……と思うほど晴天だった。今日はエスラーがセコンドを買って出た。そして3位決定の模様をハインツに聞いているところだった。もしかしたらハーヴィスがこの戦いに参加していなければ今頃、この控え室にはエスラーが座っていたことであろう。それにもかかわらず、自分のセコンドをしてくれる彼に対して、とても感謝をしていた。
「うん……そうか分かった」
ハインツからの報告を聞いてエスラーは控え室に戻ってきた。
「そろそろ、試合終わるみたいだから、準備しとけってさ」
「ああ……わかった」
ハーヴィスは立ち上がった。そして服を着替える動作も無く軽い肩当と左胸を隠すぐらいの本当に軽装備で準備を終えた。
「お……おい、本当にこんな姿でいいのかよ……」
この常軌を逸したハーヴィスの姿にエスラーはとても不安になる。しかし、ハーヴィスは笑いながら答えた。
「下手に中途半端な装備をこしらえても、動けなくなるだけだからね」
「ま……まぁそうだけどさ……」
やはり不安になる。だが、ハーヴィスはやはり、変則の剣士なのだろう。動作一つ一つが独特だ。下手に型にはめる方が今は逆効果かもしれない。
「とにかく……相手が完全に防御主体の姿できたら……お手上げだ……」
ハーヴィスはエスラーの言葉に頷く。色々と対策を練ったとしても、やはりスピードで対抗するしかなかった。しかし、ハーヴィスもただ軽い格好をしているだけではなかった。重要な足元だけは気をつけていた。ブーツは軽いように見えてかなりしっかりした作りであり、肉弾戦でも使える代物だった。
「……じゃあ行って来るよ」
「ああ……俺は自分の席にいって来る、勝てよ! 」
ハーヴィスは振り返りざま握りこぶしを見せて言った。
「ああ……必ず勝ってみせる」
まるで自分に言い聞かせるようにも聞こえる語調で、彼は決戦場へと歩き出した。一方、試合会場では3位が決定し、会場もこれから起こる前代未聞の逆指名決戦を今か今かと待っていた。そんな中、普段よりもテンションが高いエドガーと落ち着かず、そわそわしている女性がいた。
その人物は病気の父の代わりに出席したエリーシャであった。気分が晴れずに会場にまで足を運んだものの、会場に行けば、更に胸騒ぎが激しくなった気がする。そんなエリーシャにはおかまいなく、エドガーも違う意味でそわそわしていた。
「フフフ、血肉沸き踊ると言うのはこのことだわ」
エドガーはアクラムが負けるとは露とも思っていない。むしろ、アクラムが負けてしまえば更に面白いと思っていた。大臣は前代未聞の大騒ぎに気が気ではなかった。更に、逆指名によるアクラムのやる気はハンパではなく、相手を潰してしまいかねないほどの勢いを見せていたのだった。
熱気が高まる中、実況者による名前の読み上げが始まり、会場は盛り上がる。
「大変お待たせいたしました。それでは選手が入場いたします。まずは……」
会場が静まりかえる。
「今大会、優勝し、我が国で前代未聞の挑戦を受けた勇者……」
「ハーヴィス=リューン選手の入場です!! 」
静まり返った会場が燃え上がる、普段は優勝者から挑戦をあげるものなのだが、今回は逆指名ということで、これから起こるかもしれない大激闘に期待していた。会場が燃える中、ハーヴィスは入場する。暗い廊下から光の差し込む世界に向かう……。そのとき、ハーヴィスの頭の中には、何故か過去の自分が思い出された。
(……まるで……あの暗い森から、あの家に来たときのようだ……)
これから戦いに向かう人間の印象とは思えないような不思議な感覚がした。それは思いがけない”邂逅”が待ち受けていたからであり、ハーヴィスは直ぐに理解した。
入り口から会場に入るすると今までとは比べ物にならないほどの観衆が会場に押し寄せていた。中には席に座れず、立ち見をしている者さえいた。
沢山いる観衆の中、ハーヴィスは一人の人物と目があった。その人物は一際光る金髪で、白いレースのドレスがよく似合う気品に溢れた女性だった。ハーヴィスはしばらく彼女の姿を見たことは無かったが、一目であの人物だと理解した。
「……姫……様」
ぽつりとハーヴィスは声を漏らした。周囲からの喝采の声が聞こえず、ただ、彼女を棒立ちで見つめている。その視線にエリーシャは気がついた。その時、彼女の目に映った人物は強がっている少年の姿に見えた。
「え……こ……子供……? 」
エリーシャの漏らした言葉を聞いた大臣は苦笑いした。
「ははっ、まぁ、小童ですが、子供ではありませんよ……」
エリーシャの耳には全く届いてはいなかった。確かにハーヴィスとエリーシャは直接会ってはいなかった。だが、少年に見えた彼には懐かしいモノが溢れているような、不思議な感じがした。そんな二人のやりとりはお構いなしに進行していく。実況者は挑戦状を叩き付けた本人を呼び上げた。
「……アクラム=ハイランダース騎士長の入場です!! 」
彼の名前が読み上げられるや否や会場のテンションはMAXとなった。実は彼もこのトーナメント出身者であり、5年前の覇者でもあった。
以前の彼の戦いを知る者たちは、また彼の勇士を見ることができることに興奮していた。そして、エスラーも優勝していれば彼に挑戦する予定ではあった。
「……俺も……挑戦したいとは思ってたが……すごいプレッシャーだな……」
今までの歴史から、優勝者が挑戦する騎士に勝つことができた選手は、指折りで数えるほどしかいない。それは優勝した選手が指名する相手は大抵自分が崇拝、もしくは尊敬する人物だったからである。それほど差があるのだ。
「……ハーヴィス、お前ならやってくれると俺は信じてる……」
まるで自分が会場にいるかのように気合を入れているエスラーだった。名前を呼ばれてしばらくした後、アクラムが入場してきた。全身をマントに包み、姿は分かりかねるが、とても重量感がある足並みだった。
「あっちゃぁ……まさかこれは……」
ハーヴィスの期待に反して相手は重装備の様相である。まさしく今回の戦いは” 柔vs剛 ”であった。
二人は開始の定位置に着いた。ハーヴィスの身長は高いほうだが、それを上回るほどの長身であった。
というより、二回りも大きかった。
「……やばいかな……」
ハーヴィスは冷や汗が流れるのを感じた。そんな中、会場は静まり返り、開始の合図を待つ。
「はじめぇ!! 」
開始の合図と同時にハーヴィスは身構えた。アクラムは動くことがない、だが、その姿は既に臨戦態勢である。 何とも言えない緊張感が会場を包む、自然と会場は静かになり、二人の動きを注視した。
しばしのこう着状態を打ち切ったのはハーヴィスだった。左右にステップを踏みながらアクラムに突っ込んだ。
そして自分の間合いになった時、剣を振り上げた。しかし、危険を感じ二の足を踏んだ。その瞬間……
「フンっ!! 」
アクラムの剣先が下から上へと薙ぎ払われた。軽く剣先がハーヴィスの前髪を切り裂く。
「ッッ……」
明らかに剣は長かった。自分の剣の倍はありそうだ。一瞬だが、彼のマントの中が見えた。
「……チッ……こちらの読みは全部淘汰されていたか……」
相手の装備はフルプレートアーマであった。唯一の救いは、彼の頭だけは完全装備ではなかったということだ。しかし、彼の頭に届くには跳躍するしかない。
ハーヴィスの動きは目に見えないぐらい早くても、届く前に仕留めれば勝てると踏んでいるようだ。
「俺は、行くしか道はない……」
再度左右ステップを踏みながらハーヴィスは突進した。それに合わせ、アクラムはカウンターを狙う。アクラムの間合いに入った途端、彼は天を貫かんばかりの薙ぎ払いを見せた。
砂埃が舞い上がり、視界が悪くなる。しかし、ハーヴィスはその砂埃から姿を消し、アクラムの左に着地し、そのまま彼に向かって跳躍した。
彼の頭に剣が当たれば……と思った瞬間、彼の左腕がマントごとせり上がる。そしてハーヴィスの突きはそのマントに激突した。
ガシャアアァァン!!!
ものすごい金属音が鳴り響く、それと同時にハーヴィスの剣は衝撃に耐え切れず真ん中から折れてしまったのだった。
「……なん……だと」
渾身の一撃はアクラムの持つ小型の腕盾により遭えなく玉砕したのだった。
両手に痺れが起きる。それほどの衝撃だったのだ。そしてアクラムはマントを脱ぎ捨てるとハーヴィスの剣を打ち落とした。
「クッ……」
ハーヴィスの背後に弾き飛ばされた剣が地面に突き刺さる、アクラムは勝利を確信し、喉元に剣が突きたてようとした。が、その瞬間ハーヴィスは剣のつば近くを鋭い蹴りで吹き飛ばした。
「なにっ!! 」
これで試合が終わったものだと思っていたアクラムは不意を突かれ吹き飛ばされた剣に合わせてよろめく、その姿を見逃すことなく、ハーヴィスは前蹴りでアクラムを突き飛ばした。物凄い爆音と共にアクラムは吹き飛ぶ。そして入り口を塞いでいた扉が粉々に粉砕されたのだった。
「グフッッ!! 」
予想外の衝撃と精神的ショックでアクラムは見た目以上にダメージが大きかった。しかし、そのダメージは彼に怒りというおつりとして、帰ってくることとなった。ハーヴィスは折れた剣を持ち直す。アクラムは直ぐに起き上がるとハーヴィスを睨み付け、鬼の形相を見せた。
「……潰してやる!! 」
完全にお祭りモードではない、これは死合いであるとしか思えない雰囲気になった。観衆達は息を呑み、この戦いを見ていた。声が出ないほどの殺気が満ち満ちていたのだ。そして、アクラムの鬼の形相を見て、これはただ事ではないと感じ出した。
「……もう……やめないと……」
エリーシャは震える声で言った。しかし、この雰囲気で大声が出せなかった。一人、エドガーだけは興奮していた。
「あの男、やるな……」
頭の中では、5年前、エドガーに挑戦してきたアクラムと対戦した頃を思い出していた。
その時は、アクラムの振り下ろす剣を受け流し、地面に突き刺さったところを剣のつば近くを蹴飛ばしアクラムから剣を奪い、更によろけた彼を蹴りでのし倒し、そのまま彼の喉元に剣を突きたてた。
奇しくも、ハーヴィスもアクラムの剣を蹴り飛ばし、アクラムを吹き飛ばした。剣が折れていなければ……ハーヴィスはエドガーのように勝てていたかもしれない。
絶対の勝機を逃したとエドガーは思った。そして、アクラムは完全に鬼と化している。勝てる要素は皆無に近かった。
アクラムはハーヴィスを捕らえようと剣を振り回す。そのことごとくをハーヴィスはかわしていた。しかし、かなりきわどい所もあり、ハーヴィスの体は所々軽い切り傷だらけになっていた。
「ハァハァ……」
とまらない斬撃にハーヴィスは消耗していった。明らかに劣勢だ。ステップも弱くなっている。確実に弱っているのを確認したアクラムは完全に止めを刺す状態に入っていた。ハーヴィスは鋭い斬撃に精神を摩りきらせた状態になり、もう後がない。
(これ以上このままいても俺が力尽きるだけだ……)
一か八かの賭けに出ることにした。ハーヴィスは剣を避けるのを止めるかのように立ち止まり、そしてアクラムの剣撃を迎え撃った。
「な……!! 」
会場の観客とアクラム全員が驚愕した。そして構えた剣をアクラムの剣に合わせて軌道を変えた。
「な……なんだと!!! 」
周りの者が驚くほどの声高でエドガーが叫ぶ。あの剣撃はエドガーが最も得意としていた技であり、しばしば姫に剣を教える際によく実践したものである。その姿をハーヴィスが見ている事など知る由もない。
一方久しぶりに受けた感覚にアクラムは面食らった。そして長剣は地面に刺さり埋まった。
「うぐっ!! 」
地面から受けた衝撃を両腕に感じた……と同時にハーヴィスがアクラムの両腕に飛び乗りそして跳躍する。そして、彼の眼前に平手打ちによる衝撃が走った。
「な……」
平手打ちの衝撃で目が眩む、そしてその一瞬の隙をハーヴィスは見逃さなかった。そのままアクラムの背中にしがみつく形になり、あごを持ち上げるように支えながら、右手は折れた剣を彼の喉元に突き立てたのだ。
「……!!」
アクラムが気がついたときには既に決着がついていた。
「……俺の……負けだ……」
その一言を聞いた途端、会場は大きな歓声に包まれる。ハーヴィスはアクラムに勝ったのだ。
第一章 END
第一章はこれで終わりになります。次は第二章でお会いしましょう(。。w




