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『 Legend of the wars  』   作者: 桐生清一
セリスタ騎士編
23/100

§第五章: 悲運と別れ 4 §


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 4 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「まもなく、各国の連合国の皆様がご登城されます。アリエル様」


アリエル支配下になってからの大臣が酒を渇食らっている彼に報告をする。


「うぃ~やっと来たか……」


一国の当主とは程遠いほどの荒れた生活をしている彼は、最近酔っていない日がないほど飲み続けていた。足取りがおぼつかないまま彼は服を着替え、そして対談の準備を始める。これが、連合国として最後の交渉となるとはこのとき、アリエルは全く思いもしなかったのだった。

準備を終えると、アリエルは顔を赤くしたまま、謁見室へと向かった。玉座について腰を下ろし、しばし部屋の下を見下ろす。とてもいい気分だ。今までの人生、兄と比較され続けてきたあの苦しみが今解放されたかと思うと、その思いは更にひとしおだ。


「ようやっと、この国がわしのものになったわい・・・・・・」


アリエルはとても気分がよかった。連合国の者たちが来るまでは・・・・・・


「ただいま、連合国の使節団の方がこられました」

「わかった、早速入ってもらってくれ」

「はい、かしこまりました」


大臣はアリエルの返事を聞くと、部屋を出ていく、そしてしばらくすると、扉が両開きになり、そこから連合国の使者が姿を現した。しかし、この城に来たのはアリエルの思っていた人物ではなかった。


「……どういうことだ、ここに来ているのは以前来たただの使者ではないか!! 連合国の元首どもはどこにいった!! 」


語気を荒げるアリエル、そんな姿を連合国の使者達は意も介さず謁見の間に入っていく、そして、彼らはアリエルに対して声明文を掲げた。


「我々、連合国一同は、そなた、アリエルが、犯した罪に対して断固抗議する姿勢を貫く。よって、そなたの起こした行動に対して、我々は国益を防備せんが為……」

「な、な……どういうことだ……」


アリエルは、使者たちが読み上げることに対して狼狽えていた。そして、次に言われる言葉に、さすがの彼もわかっていた。



「我々連合国は、貴国に宣戦布告を申し渡す」



「!!! 」



アリエルの予想した通り、連合国に宣戦布告を言い渡された。そして、今まで自分をのし上げていた欲望や、権力、全てが今まさに水泡に喫しようとしてた。


「な、なぁ……この決定は変わることはないのか? 」

「ございません」


アリエルの質問に対して、使者の一人は即答した。


「何故だ……何故……こんなことに」


アリエルは頭を抱えた。そして,頭を抱えた手の隙間から、使者達のあざけりの視線が注がれている。まるで、今自分が苦しんでいること楽しんでいるかのような表情にも見える。


(貴様ら……この俺を嘲笑して、どうなるかわかっているんだろうな? )


既に、生まれてから此の方、常に兄と比較され続けてきたアリエルは、皆が注ぐ視線は全て、自分をあざける視線にしか見えなくなっていた。重度の被害妄想を持っている。


「ええい!! 貴様ら!! 何がおかしい!! 」


顔をゆでだこのように真っ赤にするアリエル、急に指を差された使者達は困惑していた。実は、アリエルが感じていいた”あざけりの視線”はただ、アリエルが頭を抱えている姿を見ていただけであり、特に他意はなかったりする。


「え、ええ!! 」


使者達は慌てて謁見室から出ようとする。それをアリエルは兵士を使い取り押さえた。


「ええい!! この無礼者たちを全て処断し、晒してくれるわ!! 」

「ひっ ひいいぃぃ!! 」


国家元首達の意向を伝えただけの使者達は、アリエルの無慈悲な感情により、その人生を終えたのだった。そして、数時間後、セリスタの正門前に、彼らの首が吊るされた。その時のセリスタの領民たちのほとんどは、セリスタという国が終焉へと向かっていると感じていた。

翌日、連合国の軍隊はいつまでたっても帰ってこない使者達に業を煮やし、セリスタに向かった。そして、連合国の使者達の晒し者とされた姿を見て激高した。こうして、連合国によるセリスタ包囲網が開始されたのだった。


「……予定通り……連合国は激高し、セリスタを取り囲みましたね」


ハインツは簡易の望遠鏡を使い、ぼやける視界を懸命に覗きながらエドガーに報告した。


「……の、ようだな……正門に晒し首を吊るすとは……アリエル様はなんということをしてくれたのだ」


品行方正で通っていたお国柄だけに、その変貌ぶりは天国が一気に地獄へと変化したように思われた。しかし、それは領主が変わっただけであり、領民は一切悪くないのだ。

今、セリスタの城は包囲されているのだが、ハーヴィスが留守にする前に、莫大な費用をかけて防衛費をつぎ込んでいた為、持ちこたえている。多少の批判はあったのだが、今、この状態を見ていると、ハーヴィスに先見の明があったと思わざる負えない。連合国も必死で包囲しているのだが、かなり頑丈に作られていたため、包囲するだけで精一杯だった。

セリスタの城は準平原に残された残丘に作られた山城で、上るだけでも大変なつくりだった。そして、その城を囲むように軍事施設、そして、正門から一直線に大きな通りがあり、そこには商人たちが集まる広場が広がっている。しかし、今は戦争のため、まったくの無人となっている。

そして、広場と居住地を囲むのが、中城壁と内堀で、侵入されても防衛できるように作られている。中城壁を更に取り囲むように、巨大な城壁と、その城壁を更に囲むように外堀が作られ、平地の都市でありながら攻めるには難し、守るに易しという万全の状態になっていた。


「フム、ハーヴィスはかなり計算してこの城を改築していたようだな……」


エドガーは純粋に感心していた。全く改築していない状態では巨大な城壁のみだった為、そこを通り抜けられるとその時点でアウトだったのだ。そして、連合国側も以前のイメージのまま攻め込んだため、予想以上に堅固な作りになっているセリスタに驚きを隠せないでいた。

「雲梯を持ってきていたようだが……外堀で完全にシャットアウトされて戸惑っているようだな」

エドガーは正直うずうずしていた。こんなに連携の取れていない軍勢である。今のうちにありったけの弓や投石で一網打尽にして、更に締めで自分があの軍勢に突撃をかければ、それで戦争は終結するのにと、歯がゆく思っていたのだった。

そのエドガーの描いた戦局は訪れることがなかった。囲まれているというのに、セリスタ側はまったくの無反応で、本当に城壁に兵士がいるのかどうかも怪しい状況だった。


「これ、やばくないですか? 城壁に兵士らしいものがいませんよ……」


エスラーは真っ青な顔で望遠鏡で覗き込んでいる。他の騎士達も同様に青ざめている。一体どうしたというのだろうか。


「えっと……さすがに、セリスタの城を使った空城の計……じゃないですよね? 」


ハインツが冗談めいて、そのセリフを言った。しかし、状況が状況なだけに、騎士全員がそれを真に受けていたようだった。


「何もかも……終わった……」


アクラムは巨大な体をとてつもなく小さくして、落ち込んでいた。自分が命を懸けて守り抜こうとした国が、このような状況に、そしてそれを自分たちが守れない無力さに打ちひしがれていたのだった。


「ハーヴィスに全てを委ねるしかないのだろうな……」


エドガーは、昔の泣き虫の子供が、ここまで頼れる若者に育っていたことを嬉しく思っていた反面、何もできない自分に苛立ちを感じながらそう言った。。戦闘が始まるのが少し遅かったため、太陽が沈んでいる。そんな中、セリスタの城は妖しい光を放ち、今にもセリスタが闇に飲み込まれてしまわないかと思うほど、不気味に見えた。




「さて、このまま城の中枢に入り込みます」


エドガー達が城が見える丘で身をひそめながら監視する中、ハーヴィスとエリーシャ、数人の護衛兵達は、ハーヴィスがかねてから作っていた脱出用の通路を使い、セリスタの城へと向かっていた。大臣は、エリーシャからの直接の頼みを受け、今はセリスタを不在にしている。


「ええ、さすが、ハーヴィスね……事前に教えられていたけど、こんなことに使うことになるなんて……思いもよりませんでしたわ」

「はは……自分もですよ……」


護衛兵達もみんな苦笑いしている。国を守るために作ったものが、今、国を乗っ取るために使われているのだから。

カンテラを使い、暗い上水道の下の通路を進んでいく、名目上は、上水道の修理のために作った通路にしているのだが、用事があるとき以外は使用させず、かつシャッターを閉めていた。それを巧みに解除しつつ、ハーヴィス達は進んでいった。そして最後の扉を開けるとき、ハーヴィスはエリーシャに問いかけた。


「さて、ここを開けると、セリスタの城に着きます。話ができるのはここまでですが、エリーシャ様、アリエル様をどうしますか? それだけお聞かせください」


「…………」


エリーシャは押し黙った。今は時間がないのだが、押し黙っていた。正直処断できるものなら即刻やりたい気持ちはある。しかし、そうできない気持ちがエリーシャの中にはあった。それは……


「わかりません……その時にならないと……」


珍しく、答えを出せないエリーシャにハーヴィスは困惑した。この期に及んで、決断ができないエリーシャにハーヴィスは驚いていた。


「ですが、今決めておかないと、後々……」

「わかっていますわ!! そんなこと……ごめんなさい……」


エリーシャは感情をむき出しながら答えた。これほど感情が揺らいでいる彼女を見るのは初めてだ。しばらく深呼吸をした後、エリーシャはハーヴィスの顔を見つめながら答えた。


「全て……全て、私はあの方に話します。話した後に、害を及ぼすなら、ハーヴィス……お願い……」


エリーシャは、苦渋の決断を今ここに出した。彼の処断をハーヴィスに任せたというのだ。自分の父親であるエルガを亡き者にしようとし、セリスタを地に落とした張本人が、この城でのうのうとしているのにもかかわらず……自分が手を下す事を拒否したというのだ。


「……かしこまりました、全てはエリーシャ様のお心のままに……」


ハーヴィスは剣を構えてエリーシャに敬礼をした。護衛の騎士達も慌てて敬礼をする。これで、どうするかは決まった。後は、アリエルに会うだけだった。

 ハーヴィス達が、城に入り、アリエルに会う直前、連合国は動き出した。連合国は連携を取ることができなかったが数で押す方向に決めたらしい。国ごとに思い思いに突撃を始めた。そして、セリスタの城の包囲が徐々に狭められていく……セリスタ攻城戦が始まった。

そして、その戦いが始まり、兵士達が無抵抗のセリスタ城壁に上りだしたその時、思いがけない情報が錯綜し、連合国に激震が走ったのだった。


以降 5

GWのため、4月26日~お休みになります。5月12日日曜日8時から更新を開始いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんm(_ _)m

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