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『 Legend of the wars  』   作者: 桐生清一
セリスタ騎士編
15/100

§第三章: ノーブルブラッド 6 §

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 6 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 エドガーからバトンタッチをされて二日後の事である。エリーシャとエドガー、ハーヴィス三人がエルベリアに行く予定だったのだが、エドガー本人の辞退により、二人と数人の護衛がついていく事となった。

その数人にエスラーとハインツがついていく事になった。


「フフフッ久しぶりの都会だなっ! 」


エスラーは護衛の仕事を忘れたかのようにご機嫌だ。


「まったく……エスラーは」


ハインツは少し呆れ顔でエスラーの後ろを歩く。そしてその後ろは馬車でエリーシャが乗り、大臣が相乗り、後ろをハーヴィスと数人の騎士達。少し長めの隊列を保ちながらエルベリア首都エスターナへと向かった。

エスターナまでの道のりは広い街道を通っていくので、それほど深い森や林はなく、見通しもいい。平地続きなので、歩く早さも安定していて、旅をするには最適な道であった。

だが、言い換えると、攻め込まれるときには丸裸ということでもある。ハーヴィスは便利な裏の恐ろしい部分を認識しつつ歩みを続けた。

 このまま歩いていけば、一週間ぐらいでエスターナに着く距離である。そして人が多く往来する街道なので、宿場町もそこらにちらほら見える。

だが、さすがに、10人ぐらいの騎士と馬車がいると場違いな為か結構目立った。通り過ぎる人たちが何事かと馬車の中を覗こうとする。これが平和の使者としてなら馬車からエリーシャが顔を出してもいいのだが、今回は事情が事情なだけにお忍びでいかなければならないのだ。


「まぁ、さすがにお忍びでも目立つよね……」


ハインツは苦笑いしていた。さすがにフルプレートの鎧は走行の妨げになるため、軽装備の騎士鎧を着けている。移動用の鎧だ。それでも日光に当たるとそれなりに暑い。


「ふぅ、暑いね~」


エスラーは軽く頬に手を振っていた。今回はエドガー氏がいない為、少しぐらいの息抜きはできるので楽だ。


「団長いないから楽だな~」


エスラーが軽く言っていると。


「エスラー君、息抜きもほどほどにな。やりすぎたら私が後で報告するよ」

「!! 」


エスラーは慌ててえりを正した。そんな姿を見て、馬車の中の二人は微笑む。旅路は順調に進み、一週間かけて首都エスターナに着いた。

エリーシャ一行がエスターナに着き、城に向かった。エルベリア側には事前に話を通していた為、直ぐにもてなしてもらえた。

 その日は、旅の疲れがあるからと配慮してもらい、一日休養の日をもらった。だが、休養とは名ばかり、これを機にエスラー達は遊びに行くことになった。エリーシャは別で、エルベリア側からの護衛がつくのでハーヴィスも付いていくことにする。


「さてさて~お土産お土産~♪ 」


エスラーは護衛よりもこちらがメインのようにスキップしつつ歩いている。


「ねぇねぇおかあさぁん……」

「しぃ~……見ちゃいけません!! 」


ちょっと恥ずかしかったり……と思っていると物凄い速さで土産を物色している。


「早いんだよねぇ……行動は……」


ハインツはもう既に苦笑いモード、一方彼はあれこれ見ているのだが……見てるんだが……


「ん~これでもないな、あ、これ、でもなぁ」


見てるんだけど買わない。どういうことだ。


「彼は優柔不断なんだよ……」

「あ、そっか……」


エスラーの買い物でたっぷり2時間消費してしまった。そして夜も更け、三人は酒場に向かう。三人が向かった酒場はこの街道で一番大きな所で、ものすごく活気があった。三人が空いている席に着くと、胸の大きなウエイトレスさんが注文を聞いてくる。エスラーとハインツは注文を忘れてしばし見つめる。ハーヴィスは目のやり場に困っていた。


「え、えっと、ご注文は……?」


というウエイトレスさんの言葉で三人は我に返り、慌てて注文をする。ウエイトレスさんは何か変な人が来たな……とでも言うような顔をしながらその場を立ち去った。


「あ、あはは……街が大きいと皆大きいな……」

「エスラー、洒落になってないから……」


ハインツは突っ込みながらも顔は赤い。三人はしばらく顔を赤くしてボォーッとしていた。そしてしばらくするとエスラーが我に返った。


「キ、キリカには内緒だぞっ! 」

「ヘエィ、ヘエィ」


気のない返事でエスラーを煽る。エスラーは顔を真っ青にして言った。


「なぁ……気になって寝れなくなるから……はっきり言ってくれ」

「ヘエィ、ヘエィ……」

「ウワアァァ!! 」


酒を飲んでいないのに既に酒のテンションのエスラーは見ているだけでとても面白かった。しばらくすると大盛りのサラダと酒、肉などが運ばれる。今度は小さいけどとても可愛らしい子だった。


「ハァイ♪ おまちどぅさま~♪ 」


声を聞いているだけで癒される。三人はさっきとは違う思いで、顔を赤くしつつ料理を食べた。


「ふぅ、うまかった」


三人はとてもボリュームがあってしかも味が抜群のこの料理をひとつ残らず食べた。満足だ。


「さてと、部屋に戻るか」


ちなみに三人は、姫様とは別で、城の近くの宿になっている。護衛が別の建物というのは不満がないと言えば嘘にはなるが、自由行動をする分には申し分ない。ある意味いいことも悪い事も含めての思いがあった。

そして三人が酒場を出ようとしたとき、事件は起きた。



ガシャアアァァン!!



大きな皿が割れる音、それと共にけたたましい男の声が聞こえた。


「オラアアァ!! 酒つげっていってんだろ!! 」


酔っ払い5人が可愛いウエイトレスに無茶振りをしているところであった。


「こ、困ります……」


小さい女の子は目に涙を溜めている。


「ちょっと離しなさいよ!! 」


胸の大きな子は胸を揺らしながら腕を振りほどこうとしている。しばらくすると店長らしき男が対応をしだした。しかし男達は怒鳴るだけで一向に彼女達を解放することがない。

しまいには他のお客に対しても文句を言うようになった。


「オラアアァ!! なに見てんじゃ~!! 殴るぞ!! 」


周りにいた客達は一斉に散り散りになる。そして周りに人がいなくなるとウエイトレスを無理やり抱き寄せる。


「いやああ!! 」

「リンちゃん!! キャアア!! 」


リンと呼ばれた女の子は抱き寄せられ、胸の大きなウエイトレスは弄ばれた。さすがに度を過ぎたようだ。近くにいた兵士達が文句を言う。


「君達!! エルベリアの兵として、これ以上の狼藉は許せん!! 」

「何だ……お前!! 」

「私は、エルベリアの聖騎士だ」

「騎士……ねぇ」


ポリポリとアゴを掻くと面倒臭そうに胸の大きなウエイトレスを他の男に渡した。そして持っていた大剣を出して舌なめずりした。


「さぁ……来な!! ぼっちゃん」


「クッ!! 後悔するな!! 」


バカにされた聖騎士は愛用の剣を使い振りかぶった。しかし、その剣は一撃で跳ね返され、観客の目の前に突き刺さる。


「ヒッ! ヒイィィ!! 」


いつもの仕事の後の一杯を楽しみにしていたオジちゃんは腰を抜かしてガタガタ震えていた。十分酔いは醒めてしまったようだ。

それを見ていたエスラーがふらりと歩き出す。


「あ、おい、エスラー……」


ハインツの声と共に、エスラーはすっと歩くと小さな少女を軽く相手の男から取り上げる。


「え、あ、あれ? 」


急に女の子の感覚がなくなった男は慌てる。しかし、エスラーの手にいる少女を見て一気に猛り狂う。


「キサマアアァァ!! 」


突っ込む男をひらりとかわし、足を引っ掛けた。



「ヘブブブブゥゥー!! アゴッ!! 」



男は勢いよく床にぶつかりそのまま滑っていく。そして、壁に頭を打つと気を失った。


「何だてめぇは!! 」

「お前に名乗る名前はないさっ」


そういうと店長に少女を渡す。そして、人差し指を自分に折り曲げこっちへ来いと合図する。胸の大きなウエイトレスを持っている男はすかさずエスラーに突っ込むように指示をするのだが、いつまで経っても誰も来ない。


「おぃ!! お前ら!! なにやって……るん……だ……? 」


後ろを振り向くとハインツとハーヴィスが手を払っていた。その後ろには綺麗に伸びている3人。


「あ……あれ……ボクチンひとり……なの? 」


急に変な言葉遣いになる。エスラーはため息を付いた。


「一人だよ。3対1だけど、まだやるの? 」

「…………」


男はしばらく黙っていると急にウエイトレスをエスラーに投げた。


「キャアアアア!! 」


ウエイトレスを受け取るエスラーそしてその後ろには巨大な男の拳が見えた。


(チッこのままだと……)



ガッシャアアアン!!



一発殴られる事を覚悟でウエイトレスを抱きしめる。しかし、いつまで経っても殴られる気配がなかった。不思議に思って目を開けてみる。すると彼は伸びていた。


「え、あれ? 」


エスラーは不思議に思った。するとハーヴィスとハインツ、そして少女が伸びている男の後ろにいた。


「アレ……? どうしたの? 」


同じく目をつむっていた胸の大きなウエイトレスも異変に気がつく。


「あ~ん、リカちゃーん!! 」


すると彼女は泣きながらリカという少女に抱きつく。しばらく抱き合っていると、周りから不思議と拍手喝さいが起きた。よく見ると店長が鼻を赤くして泣いている。何だか分からないけど変な感動に酒場全体が包まれた。

 その後、エルベリアから来た軍隊の警察に男達を突き出して、事は過ぎた。しかし、エスラーは腑に落ちなかった。気になって仕方がないのでハーヴィス達に聞いた。


「なぁ、俺が殴られそうな時に何が起きた……? 」


すると、二人は顔を見合わせた。あまり言いたくなさそうだった。


「おい……気になるじゃねーか……」


しつこく聞くエスラーにため息を付いて、ハインツは答えた。


「うんとな……男がお前に、ウエイトレスさん投げたろ……」

「うんむ……」


エスラーは思い出すように答える。


「その時にな、少女がおやっさんが持ってた酒ビン取り出したのよ。んで振りかぶろうとしたら……」


ハインツはしばらく、前かがみにブルブル震えた。


「彼女足を滑らせて……」

「あ、ああ!! もういい!! わかった、わかったから!! 」


事の結末が分かったエスラーは青い顔をして話を止めた。そして気がついた。


(確か……酒ビンが、ガシャンって割れたよな……)


そう思うと血の気が引いてきた。


「ヤベ……もう想像したくねぇ」


三人は慌てて宿屋へと逃げ込んだ。




 その翌日、予定通り、エリーシャ達はオスカーと謁見をした。


「さて、今回は私が行った手紙の返答……と思っていいのかな? 」


オスカーは玉座に座りながらエリーシャに話した。


「ええ、そうですわ」


あくまで気品のある姿でエリーシャは答える。謁見室の中はとても広い、その中で、エリーシャは大声を出しているわけでもないのにとても透き通った声で場を響かせていた。


「で、返答は? 」


アゴに手を当てながらオスカーは話した。正直一挙一動がとてもムカつく態度である。しかし、エリーシャはそんな姿は見えていないような素振りで、話を続ける。


「まず、私の質問に答えてもらえますか? その後でお答えいたします」

「ム……!! 」


オスカーは不機嫌な顔をする。しかし、そこは抑えた。


「わかりました。どのような質問で? 」

「ええ、今回、ローヴァス帝国の討伐に対して、私達の助力が必要とありましたが、これは私達セリスタと聖エルベリア教皇国、この両国が協力しあって事を成し遂げる……そう受け取ってよろしいのでしょうか? 」


「…………」


オスカーは少し分かりかねる顔をした。


「つまり、なんだ? もっとハッキリ言ってもらおう! 」


するとエリーシャはキッとオスカーを見据えて話した。


「私達は独力で、ローヴァス帝国と戦える力はございません、そういうことです」

「……ハハハッそういうことか」


オスカーは笑った。


「よかろう。我が軍を好きに使うがいい。エリーシャ姫、私は貴女が気に入った。そこまで言うのなら、私に結果を見せてくれ」

「……はい、かしこまりました。それでは……」


「ちょっと待て」

「……? 」


オスカーはニヤリと笑った。


「昨日、セリスタの聖騎士が、うちの繁華街の酒場で、大暴れしたという報告があってな……」


後ろに控えていた三人は即座に反応する。


(そんなわけねぇだろ!!!! )


と怒鳴りたいところだが、必死に抑える。そんな事を知ってか知らずか、オスカーは答える。


「うちの聖騎士が一撃でやられたのを簡単に倒したというじゃないか……」

「……!? 」


エリーシャはとっさに身構える。この雰囲気は良くないと思ったのだろう。ハーヴィス達も不意に構える。するとオスカーは笑い出した。


「いやいや、褒めているのだよ、うちの騎士が不甲斐なくてな。恥をかかせたので罰房に入れている」


「!! 」


三人とエリーシャは驚いた。たったそれだけで牢獄に入れられるというのか。この男は教皇国を簒奪するだけの男、予想外の事でも彼にとっては普通なのかもしれない。

エリーシャとハーヴィス達はどうすればいいのか分からなくなっていた。果たして、オスカーが簒奪したエルベリアがいいのか、それとも外交下手で、脅迫文章を送り付けて来るローヴァス帝国なのか。

どちらを選んでもうまくいきそうにない、そう思ったのだった。ここは直ぐにでも退散するべきだ。


「わかりました。それではこちらも準備がございますので、セリスタに一度帰らせていただきますわ」


エリーシャは直ぐにでも帰ろうと手早く挨拶を済ませたのだが、オスカーは意外な言葉を言った。


「申し訳ないが、それは致しかねる」


「え……! 」


「君は今、ここで、人質となったのだよ……」

「ど……どういうこと? 」


エリーシャがうろたえる。そして周りに騎士達が取り囲む。ハーヴィスたちは剣を引き抜こうとしたその時。


「そこの騎士共動くな!! 」


三人とも動きが止まる。止まったのを確認してから、オスカーは改めて答えた。


「今からエルベリアの兵を使ってローヴァスを退治してこい!! 」

「退治できたら、姫様は返そう」

「なん……だと!! 」


三人は呆気にとられた。騎士になって間もない三人にいきなりの兵の指揮、しかもどうしても勝たないといけないこの状況。


「お、俺たちが……兵を指揮するだと……」


三人は途方に暮れた。しかし、今やらなければセリスタは潰れてしまう。絶対絶命の危機に陥ったのだった。


 これにより、三人は指揮官として、ローヴァス帝国との、直接対決を行う事となったのだ。


第三章END




これで、第三章は終了となります。4月からは不規則勤務ではなく、土日休みになるので、その時間帯を狙って随時UPしていきたいと思っております。

 尚、アメーバブログにて公開している原稿の分を超過した場合は、最新のお話がないので・・・その時はしばらくお待ちくださいませ。

 後、アメーバブログにて、最新原稿と原文をUPしておりますが、こちらの方で再UPしたときは、一度、作者が文章を一つ一つ見直し、若干の修正を施しております。

 そこはご了承くださいませ。今後共、Legend of the wars を宜しくお願い致します。m(_ _)m

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